【 双子の悪魔 】
「人間だ姉ちゃん」
「...人間ね」
「本当に人間か?姉ちゃん」
「...人間よ、基本構造は」
「えっ、て事はそゆこと?」
「...そうね...亡りたての化たての為り者だけど間違いないわ」
「へぇ、珍しい」
「...うん、珍しい」
しばらく進んだ所で双子の少女たちと遭遇し囲まれると、グルグルと物珍しそうに僕を眺めては周る。
双子といっても似ているのは顔と服装のみで、活発な印象のある彼女はショートカットで髪、瞳ともに紅い。
そして、大人しい印象のある彼女は髪、瞳ともに金色で、腰まで伸びた髪がふわりと揺れる。
「君たちは、誰?」
「私たちか?私たちは下級の悪魔の中でも下の下の悪魔だ!な、姉ちゃん」
「...そうね、多分最弱悪魔ね」
「そんな自慢気に言われても...」
胸を張る少女たちは槍のような尻尾をピンとさせ、無邪気に笑う。
本当に悪魔なのか疑ってしまう。
「名前は無いの?」
そう僕は問いかける。
「名前なんて私たちには、」
「...下級の悪魔には過ぎたものですわ」
「無い、のか...」
「お前は無いのか?人間」
「僕は____」
そういえば今は自分の名前すら思い出せない状態だった。
その旨を僕はそのまま伝える。
「きおくそーしつってやつか?」
「うん、気付いたらここに居て...」
「そっか、なんか難しいんだな!」
「うん、そうだね」
悪魔と名乗る彼女たちは、ちっとも悪い事なんかせず、見知らぬ僕と語る。
案外、良い子たちなのかもしれない。
「イタズラしてもいいかー?」
「駄目」
いやしかし、悪魔という存在をすんなりと受け入れている自分がいた。
まるで、悪魔が存在しているとすでに認識していたかのようだ。
もしかしたら、記憶を失う前は悪魔とかと交流があったのかもしれない。
「ここから出たいんだけど、君たちは道を知ってたりしないかな?」
「こっから出たいのか?いいよ!ん?いいのか?姉ちゃん」
「...地下内ならご案内出来ますわ」
「あ、そっかー!私たち地下外に行けるほど力がないんだった」
「いや、ここじゃなければいいんだ」
異臭が不快感を煽る。
暗闇が不安を湧き立たせる。
とにかくこの異質な場所以外の場所ならどこでも良いと伝える。
彼女たちは快く承諾すると、
「多分こっちだ!」
先導して歩き出した。
「なんか、不安になってきた」