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【 プロローグ 】




「人を殺めるのは、貴方が初めて」




■■■


【サークル/社労勤SHA−LOT】


吸血鬼(ヴァンパイア)消失(ロスト)


■■■




「人のうちに死になさい。それが貴方の運命なのだから」



意識が断片的に途切れては戻る。

記憶は曖昧に、ぼやけ、霞む。

何も思い出せない。

と言うより、思い出そうと思えない。

僕は、僕を殺そうとしている彼女を視界に、ただ呆然と立ち尽くしていた。



「人間にスペルとは贅沢ね」



彼女は、月明かりに照らされた白銀の髪を揺らし、口元から溢れた血を舐める。

あれは一体、誰の血だろうか。

艶やかに妖しげな瞳で、美味そうにそれを舐めきると、右手を振るう。

それと同時に現れたのは、

禍々しく、鋭く紅く、

そして美しく、

僕を殺すには有り余るほどの、

万物をも穿つであろう閃光の紅い槍。



「 スピア・ザ・グングニル 」



グシャ。と、それは胸を貫いた。

痛い。苦しい。怖い。

しかし、飛び出すであろう絶叫は未だ登っては来ず、息を小さく吸い込んでは吐くだけを繰り返す。

返り血で真っ赤に染まった彼女は、その冷酷な瞳を僕に向けると、別れを告げる。



「さようなら」



激しい破裂音と共に失せる視界。

破損箇所が溶岩(マグマ)のように熱いのに、急激に低下していく体温。

寒気と同時に襲い来る眠気。

消えゆく意識の中、微かに映ったのは、走馬灯のような記憶の残像。

これは一体、誰の記憶だろうか?



___貴方は、誰?



孤独を抱えた少女が、退屈そうに頬杖をついて穏やかに笑う。



___物好きもいたものね。



そう、そうだった。

最初から、生かすも殺すも彼女次第で、死ぬ事に対して疑問を抱かないのは、それがきっと僕の役目だったからなのだ。

だから、これでいい。

煙のように消えていくその記憶と共に、闇の彼方へと落ちていった。


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