時は満ちて
「コハルことクレハからの連絡がきたよ」
「なんて?」
二日後、その日の特訓も終わっての夕食のことだった。
「『明後日に【リュウ】を解き放つ』ってさ」
「私たちはどうしたらいいの?」
「それについては特には……あぁ、そういえば一つあったね。『もしハクが力を制御できていない場合、何があっても【中央】に向かうことは許さない』だってさ」
「それじゃあ」
「うん、キミたちは資格を得たということさ。というわけで、明日までに出来る限りの準備をしないとね」
「いよいよ、か」
「なんだかわくわくするね~」
ようやくというべきなのか、もうというべきなのか。クロもリョーもそれぞれやる気に満ちており、私自身も同じだった。
「とりあえず、クレハから一緒に【中央】の見取り図と【対因子部隊】の配備状況なんかも貰ってある。最新の情報ではないそうだからあまり頼りすぎるのもよくないけれど、一通り頭に入っていればもしもの時の行動の判断材料になるからね」
ケヴィンはそういうと前回クレハと連絡するときに使用した映像をだせる球体をおく。
「ひとまず明日は座学といこうか。今日は夜だから簡単に見取り図だけを確認するということで」
「ん、わかった」
「それってボクも覚えなきゃダメかな?」
「駄目に決まってるでしょ。もし不慮の事故とかで離れ離れになったときどうするのよ?」
「そこはほら、勘とか……」
「駄目。ちゃんと覚えなさい」
「は~い」
「見取り図覚えるのは構わんのだが、侵入経路とかはどうするんだ?」
「それらは明日まとめて話すけど、とりあえず候補に挙がっている箇所は何点かある。あちらがどう行動するのかで侵入場所は変わるだろうね」
映し出されたのは7枚の見取り図だ。それぞれの右下には階層が示されており、一階に当たる見取り図の数箇所には赤い点があった。つまり、赤い点が侵入箇所ということなのだろう。
「なるほど」
それを見てクロは納得したらしく、頷いた。
「階層は全部で8階層らしい。地下1~3、1~5階層という感じだね」
「あれ、でもこの見取り図だと4階までしかないわよ?」
「それについてはわからないんだそうだ。さすがに5階はセキュリティも厳しいらしく、クレハが見取り図の情報はこれが限界のようだ」
「まぁ何も知らないよりは全然マシだろ」
「そうね」
「それじゃあ簡単に説明して行こう」
そうして私たちは、ケヴィン主導の下【中央】についてを学んでいった。