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Factor  作者: へるぷみ~
青年はその因縁を睨みつける
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考えること


 ひとまずとはいえ、桐峰の治療が終わったことで進展があった。

 ベッドに横になって考える。

 彼が起きたという事は、【中央セントラル】に向かう日もそう遠くは無いということだ。


 実際にいえば、恐らく私とリョーに【中央セントラル】へと向かう明確な理由は無い。現状に流されて此処まできたというのは否定できない部分があるし、結局のところ私たちを作った人たちが放っておくという保証が無いから可能性の芽を潰すためというのが一番大きい。

 けれどそこに、二つだけ加えることがある。私個人の問題よりもよっぽど重要なこと。一つはもちろん桐峰のことだ。彼が私たちを作った存在に対して憎悪を抱いているであろうことはなんとなくわかる。それぐらいの強い感情が彼を不安定にさせてしまう要因を生み出したからだ。だからきっと、【中央セントラル】へと向かうことをとめることなんてできない。私に出来ることは見送ることか、付いて行くことだけで、もうあの人に置いていかれたくない私は、選択するまでもなかった。次に二つ目は、クロのことだ。彼に仕掛けられた死の刻限は着々と進んでいる。ケヴィンの隠れ家にある設備でも根本的な治療を施すのは不可能だそうで、出来たとしても進行を遅らせるのが手一杯だそうだ。それだけに、【中央セントラル】の設備と資料があればクロの治療が可能だろうというのがケヴィンの意見だった。大義名分という意味でなら、クロの方が重要だろう。顔も、人柄も知っている仲なのだ。はいそうですか、といって見捨てられるほど私は達観しているつもりはない。可能性があるなら模索する。そのために行動するのみである。


 「でもそのためには……」


 ふとそこで、クレハの言葉を思い出した。

 強くなれ、二度に渡って伝えられたその一言は記憶に新しい。

 確かに、少し前に比べれば私もクロもリョーも強くはなったと思う。けれど、私は一つだけ問題を抱えたままで、それを解決できていない。

 【因子保持者ファクター】としての力の制御。それだけは未だにうまくいっていなかった。

 理由は色々考えた。肉体的な面での制御ではないであろうことは金髪紅眼の少年との特訓のときになんとなく掴んではいる。であれば精神面であり、端的にいえば私が未熟だから能力を十全に扱うことが出来ずに振り回されてしまっているんだろう。

 私が暴走しているときは、最初の一回目であるクロとの戦い以外は強い感情に塗り潰されているところがある。特に起因となっているのは興奮状態を生み出す怒りとかの感情だ。能力を控えめに使用しているときは体が熱くなる。あれが頭まで浸かってしまった時に暴走をするのだろう。ラグナスとの特訓のときがいい例だ。あの時はほんの一瞬だけだけど、あの力を制御することが出来た。そのときの感覚は朧気ながらも覚えている。その感覚を、より深く強く掴むことができれば制御ができるのだろうか。

 ある意味では私は爆弾を抱えているようなものだ。感情という起爆剤で爆発したとき、それが敵対している相手に対して影響を及ぼすのなら良いけれど、最悪を考えれば桐峰やクロ、リョーにまで害を及ぼしてしまうかもしれないという懸念を拭い去ることはできなかった。


 「ん」


 暗い部屋での思考は、だんだんと私の中の眠気を大きくしていく。

 気づけば思考は手放して。

 暗い海へと沈んでいった。


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