彼女からの報告
「クレハから連絡だ、『どうにか無事に保護できた』ってさ」
「本当!?」
お風呂から上がって部屋に戻る道中、ケヴィンがそう言った。
「ああ、連絡が来たのはついさっきだけどね。保護したのはハクちゃんたちが研究所を去ってからすぐのようだけど、融通の利かない我が友を止めるのに無茶をしたらしくて連絡が遅れたと言っていたよ」
「でも無事なら良かった」
「ただ負傷は避けれなかったからしばらくこちらで療養させるって」
その言葉を聞いて少し安心した。
もしかしたら桐峰を止められなかったとか、死んでしまったなんて最悪のことは考えられたから。兎にも角にも無事であるということは希望になる。
「彼が完治したらまた連絡をするといっていたから、それまでの間は準備期間ということになるね」
「桐峰の治療って、時間が掛かるってこと?」
「いや、負傷自体はそこまでじゃないようだけど、彼が【リュウ】という特殊な【因子保持者】であるということと、肉体面だけじゃなく精神面のケアが必要になるかもしれないそうだ」
「そう……」
どれぐらいの時間になるかはわからない。けれど、その少しの時間をありがたいとも感じた。
クレハとの一戦でわかったことは、私たちは普通のヒトよりも強く、【因子保持者】の
中ではきっと弱いということ。あの一戦においてクロもリョーも一撃で倒されて、私は自分の力とはいえ制御も出来ない力に振り回されたというだけ。そんな不確定な要素を考えることなんてできない。
強くなる必要がある。
「ねぇケヴィン、」
「言いたいことはわかる。君たちが【中央】に行くには、まだまだ弱い。このまま桐峰が完治したところで、キミたちがついていくのは足を引っ張ることにしかならない。もしくは、囮としてぐらいしか価値がないだろうね」
「うん。……そういえば、ケヴィンはクレハと知り合いだったの?」
「あーそれはまぁ、色々あるからね。とはいえ、あの姿になった彼女に会ったのは初めてだよ。なにせ、長く会っていなかったし」
「あの姿ってことは、前があるの?」
「それは秘密だ。知り合いとはいえ、あまり女性の秘密を喋るのはよくないからね。とりあえずいえるのは、ボクは彼女を知っていたけれど、彼女が南の研究所に所属しているということは知らなかった。ということぐらいだな。答えるのはこれぐらいでいいかい?」
「そういうなら、わかった」
「それじゃあひとまず今日は、しっかり食べて体を休ませるべきだ。無理して寝る必要は無いし適度な運動は悪くないけどね。お腹は空いているかい?」
「うん」
「よし、なら用意しよう。クロにも声をかけておいてくれ」
そういってケヴィンは部屋を出て行った。
私とリョーはひとまず洗って既に乾いている服を部屋に持って行って、クロを探すことにした。