人間の定義は
「うーん……」
「ん~」
「「よくわからない」」
私とリョーの感想は同じものだった。
というよりも、まるで文章が支離滅裂のぐちゃぐちゃで暗号のようなものになっていた。
最初の文章が『c;t@fz:yされたNOHA』というようなもので、ところどころ見知った言葉があってもほとんどが意味を成していないような文字の羅列だったからだった。
加えて途中で途切れているようにも感じた。ところどころで『』に挟まれた部分があったため、それらは重要な単語なのかもしれない。
「考えても仕方ないわ。読めないことに変わりはないし、他のものを見ましょう」
「ごめんね~いきなり変なの選んじゃって」
「中身を知ってるわけじゃないし、そもそも他の項目に比べて明らかに別物だったから大丈夫よ。それに、ほとんど流し読みしたからそこまで時間は使ってないし」
「ありがとうハクちゃん~」
「とりあえず、順繰りに見ていきましょうか」
「は~い」
パネルを操作して、項目を見ていくことにした。
とはいえ専門的な知識はわからない。いや、もしかしたらそういった知識を与えられているのかもしれないけれど、今の私はまったくわからない。
目を通していくと、専門的な用語が多く理解し切れなかったがそれでもわかっていくことがある。
「人類の、進化ねぇ」
結局のところはそこに行き着くらしい。詳しくは書かれていなかったけれど、『因子保持者』とは人間が新たなるステップへと繰り出すためのアプローチの一つのようで、人間の遺伝子だけで行き着くところが決まってしまうのならば、別の生き物の遺伝子における有用な部分を抽出し、組み込んでいくというわけだ。ヒトと類が同じである生き物たちから始まり、鳥や魚、果ては植物も。あらゆる遺伝子を試し、その結果として生まれたのが私たちというわけだった。
「やっぱり、よくわからない」
「そうだね~」
結局のところ私は私で、リョーはリョー。生きていることに変わりなく、触れ合えることに変わりなく、言葉を交わせることに変わりは無い。
ただ、こんなことをしている人間はそれこそ、ヒトではない私たち以上にヒトでなしなのではないかと、そう感じた。