どの記録を閲覧するか
「これは……」
「すごいねぇ~」
部屋の奥、そこにはモニタがあった。
椅子が一つなのに対してモニタの量が多く、見上げるような位置にまであった。
「ここに差し込めがいいみたいね」
椅子のある場所まで近づけば、メモリの差込口があった。差し込むのと同時に、真っ暗だったモニタが一斉に光る。
眩しくて一瞬目が眩んだけれど、少しして段々と慣れてきた。
モニタの画面内には複雑な文字や数字が映っては消えてを繰り返していたかと思えば、すぐ目の前のモニタに一つだけ枠が残された。ウィンドウだ。
さっきまでは良くわからなかったけれど、これと似たものを桐峰と過ごしていた家で操作したことがある。アレに比べればはるかに規模は大きいけれど、モニタを操作するためのパネルはほとんど変わっていないから、操作する方法はわかっていた。
――情報を閲覧する? Yes / No
端的な文字欄。意味する言葉の意味はすぐにわかった。
No を押したらどうなるのかは気になったけれど、それで得られるものがなくなってしまったらどうしようもない。素直にYesの文字を選ぶ。
【情報の開示を確認――】
周囲にあったモニタが暗転。
未だに映っているのは最初に情報の閲覧の選択を促してきたウィンドウがあったモニタだけだ。
現在、モニタの中には確認中という文字のまま。何かが起きているようすは見受けられない。
【情報の一部が破損しています。情報の開示は行われますが、正常に行われない危険性があります OK】
OKを選択する。
ウィンドウが消え、新たな枠が出てきた。
【閲覧項目――】
新たなウィンドウには多くの閲覧項目が出てくる。
基礎研究データやら被検体情報、因子情報、研究結果、などなど。
これらを全て確認するには時間がかかりそうだ。
そういえば、クレハは桐峰について知りたければ奥の部屋に行ってからと言っていた。どういう意味だろうか。
「ハクちゃん、どうする?」
「とりあえず、気になった項目から調べてみる?」
「ん~、じゃあこれは?」
リョーが指差したのは【D/H】という項目。あったのは画面の隅、目立たないようにわざわざ文字の色は背景に似せているようだった。
私としても項目のほうに気をとられていたせいか、気づかなかった。
「わざわざ隠してる様子だし、見てみる価値はありそうね」
項目選択。
新たに生まれた枠に書かれた文字を読む。
それは、誰かの研究記録のようなものだった。