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Factor  作者: へるぷみ~
白い少女の物語
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跳んで跳ねてじゃんぷ


 「っ」


 銃声が鳴り響く寸前、傍にあった椅子を私と桐峰の間に蹴り上げその勢いのまま床へと転がる。銃声と共に宙に蹴り上げられていた椅子が大きく弾け、回転しながら床へと落ちる。

 床への落下は受身で衝撃を緩和させて、すぐにしゃがみ姿勢になって動けるようにする。今私と桐峰は鉄製のテーブルを挟んでおり桐峰の姿は見ることが出来ない。このままここにいたとしても千日手のようなことになるわけは無く、確実に私がやられてしまう構図だ。彼が現在装備しているのは拳銃とスタンバトン。拳銃の銃口を見た限りは9mmを使用していて、一発撃ったから残りは多くても6ほど。室内での銃の使用は兆弾の危険性があるから使いどころが限られるけど、こと桐峰なら兆弾も視野に入れて撃つはず。


 ――柏の強みはその瞬発力だね


 頭の中で桐峰の言葉を思い出す。意識したことは無いけれど、彼曰く私の運動能力で最も優れているのは脚力らしい。だからそれを活かしていくしかない。

 周囲の状況を見渡して把握。動けないなら動けるようにする。しゃがみの姿勢から足に力を込めて、傍にあったまだ無事な椅子の足を掴む。


 テーブルの横へと椅子を投げるのに合わせて、一気に足に込めていた力を爆発させた。投げた椅子を追い抜く速度で、しかし椅子の影を通り抜ける。ぱぁんと2回目の銃声が響く。弾かれきりもみする椅子の足がつま先に触れるが気に留めず壁に両の足で接地。ぎゅっと足の裏に力をいれて膝をバネにし桐峰がいる場所を視界に入れたうえで部屋の構造を確認。すぐに3発目を撃つ為に桐峰の銃口はこちら捉えたのでここからは無駄にかんがえるひまはない。


 とぶ。おとがなる。ちりとほおをなにかがかすめる。つたうものをなめてめをあっちこっちにうごかして、あらゆるものをあしばにする。きりみねのうしろにとぶ。かれはこちらをみる。みられてはいけない。はねてゆかけってかれにぱんち。あたらないいきおいをころしてテーブルころがってかべとんでてんじょーけってもいちどこんどはけってぱぁんてうであつくなるいすくだけてはへんとぶちゃくちのいきおいではねてじゅーけったきりみねもってないてがあしつかもうとするたいじゅうのせてつかまれたあしちゅーしんしてかかとおとすあしはなされてよけられたつぎ――


 「あぁああ!」


 少し弱った勢いをもう一度速く背後にいる桐峰がこちらが再び動こうとするのを止めるために足払いを仕掛けるそれを小さく跳んで足先が触れるぐらいで蹴られるけれど体を丸めて勢いをつけて一回転。払った足の勢いを殺さずに立ち上がった桐峰と床に着地するのがほぼ同時。桐峰はテーブルを背にして私は壁を背にして両隣は本棚にベッドで床のある場所は少ない。桐峰が中段蹴りを放つしゃがんで回避。勢いがあったはずの桐峰の蹴りは私の真上でピタリと動きを止める。そしてそれが振り下ろされる。横によける暇は無く両腕を頭上に掲げ受け止める。ずしりと重いけれどしゃがむ姿勢になっていたからか体勢を崩さずにすんだ。体重が全て乗せられるよりも先に足に力をこめて押し返す。あっさりと腕に乗っていた足はどけられ勢いが削がれると完全に隙を晒し――


 「足を止めるまではおしかったね」

 「あう」


 気づけば桐峰の顔が目の前にあった。投げられたと実感したのは自分の背中と足に伝わってくるひんやりとした冷たさ。テーブルの上に仰向けになった私は逆さになった桐峰の表情を呆然と眺めるしかなかった。

 ありていにいって負けたということだった。


 「お疲れ様、柏」

 「うん」

 「怪我のほうは大丈夫かい? 頬と腕を掠めていたようだし、顔に傷がついてしまうのは僕も本意じゃない」

 「すこしひりひりしてるけど、泣かないよ?」

 「そうか。柏は強いね。でも一応治療はしようか」

 「ん」


 いつもと変わらない笑顔で、桐峰は私を抱えてくれる。桐峰と運動するのは楽しいけれど、やっぱり桐峰とこうして触れ合ってるほうが楽しいし嬉しい。


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