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Factor  作者: へるぷみ~
廻る少女は朱に染まれない
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赤の回廊


 「ん?」

 「どうしたの、ハクちゃん?」


 廃れた町並みを歩いていく中で、違和感を感じて足を止める。


 「なんか、焦げ臭い臭いがしない?」

 「ん~、そういえばそんな感じだね」

 「ちょっと行ってみましょう」

 「は~い」

 「どうしたんだ、ハク?」

 「ちょっと焦げ臭い臭いがするから、そこに行こうと思って」

 「こんな場所で? そりゃおかしいな。行ってみる価値はあるか」


 臭いのする方へと向かうほどに臭いは強くなっていき、場所も段々とわかっていった。

 やがてたどり着いた建物の一角は、他の建物に比べれば少し大きい。

 そして、焦げた臭いの意味が一目でわかった。


 「入り口、真っ黒ね。逆に建物の全部が燃えてないのが不思議なくらい」

 「う~ん、この感じだと最近燃えた感じだね」

 「最近ってなると、キリミネがここに来たってことか?」

 「少し探索してみましょう」


 焼け焦げた建物入り口を潜れば、一面が焦げていた。特に酷いのは入り口正面の壁で、恐らくはこの状況を生み出した原因であろう壊れたバイクがあった。桐峰が乗って行ったのがバイクだから、可能性は大きい。

 壁沿いに周囲を探っていく。

 天井の隅のほうは焦げていない部分も見えけど、どうやら火事となったのはこの入り口だけみたいだった。二階繋がる階段付近までは少し焦げている程度で、それ以上先が燃えた様子は無い。


 「おい二人とも、こっちに来てくれ」

 「どうしたの?」

 「なにか見つかった~?」

 「こいつを見てみろ。焦げて周りと色が似てたが、明らかに人工的な穴がある」


 そういってクロが指差す先には、穴があった。丁度近くの床張りされたタイルと大きさは同じぐらいの面積をした入り口で、中を覗いてみれば機械的な通り穴。鉄梯子も用意されており、明らかに地下にいくための道だった。


 「この先に、研究所があるってことね」

 「恐らくな」

 「穴は狭いから順番に降りるしかないけど、どうする?」

 「オレが行く。とりあえずはオレが降りきって周囲が安全だってわかったら呼ぶから、その後に来てくれ」

 「じゃあボクが殿ね~。もしかしたらこの穴自体が罠の可能性もあるし、下の安全が確認できたら上を気にしないと」

 「わかった。それじゃあ順番はクロ、私、リョーね」

 「降りる前にまず石でも落としてみるか。傍に敵がいたら厄介なことになっけど、落ちてきた時点で相手が攻撃するような奴らなら先んじてわかる」

 「それはクロに任せる。最初に降りてもらうんだし」


 私がそう言うなりクロは近くに落ちていたバイクの金属片を拾い上げ、穴の中へと落とした。少しの間を空けて、からんと音が鳴り響く。……特に何かが起こるわけではなかった。


 「よし、んじゃ行ってくる」

 「気をつけてね」


 下の様子は簡単に調べたところで、クロは梯子を降っていった。

 私はその様子を眺め続ける。少しずつクロの頭頂部が小さくなっていき、やがて梯子の終着点へと来たのか飛び降りる。クロの姿が穴から見えなくなって、少し。


 「とりあえずは大丈夫だー!」

 「わかったー! 今から降りるー!」


 どうやら周囲に危険はないらしい。

 梯子に足を掛け、降る。

 かんかんかん、鉄の棒と靴がぶつかり合った金属音が周囲に木霊する。

 少し長いかな、って思ったところで下を向くと、梯子はあと少しで終着点だった。

 最後の足を掛けるところギリギリまで降りたところで、両手を離し引っ掛けていた足を外す。


 「よっと」


 無事に着地できた。

 もういいわよ、とリョーを呼ぼうと上を向く。

 そこには凄い勢いで迫る靴底があった。


 「とぉ~! っととと」

 「ちょ、あぶないでしょリョー!?」

 「あはは~ごめんごめん」


 結構高いところから落ちてきたというのに、リョーは身軽に着地。足を痛めた様子も無いけれど、さすがに危ないし怖い。


 「それより、クロ君は?」

 「そういえば私が降りた直後にもいなかったわね……。って、あ、あそこに」

 「ほんとだ。お~い、クロく~ん!」

 「………………」


 先の様子を見てくれていたであろうクロは、曲がり角の先を見つめたまま私たちの方に目を向けない。まるで、そこから目を話すことが出来ないように。

 心配になってクロの近くへと行く。


 「どうしたの、ク……ロ?」

 「うわぁ……」


 そしてどうして彼がこちらに見向きもしなかったのか、すぐにわかった。


 どうして気づかなかったのか。

 その臭いはとても特徴的だ。

 その色はとても見覚えがあった。

 その光景を、私は知っていた。


 「真っ赤……」


 そう、廊下一面を覆いつくす赤。

 私が白い部屋から出たとき最初に目にした光景。

 あの時はわからなかった赤色。

 今はわかる。

 私たちの体に流れる生命の証。

 血が、口を開けて私たちを歓迎した。



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