研究所へ
車が止まる。
「着いたぜ」
『ここから先は車での移動は難しい。といっても歩いてすぐの位置だから荷物は最低限でいいだろう』
どうやら目的地である研究所近くまでやってきたらしい。
車を降りてあたりを見回すけれど、辺りは廃墟が多い。どうやらシェルターが出来る前から存在したという街だろうか。
「当然というべきか、研究所らしきものの姿は見えないわね」
『基本的に人目につく場所には建てないからね。いくら現在の人類がシェルターに引きこもっているとはいえ、見つからないに越したことは無いわけだし』
「ふぅー、なんか夜以外はずっと運転してたから変な感じだぜ」
「クロもお疲れ様」
『そうだ、その車が研究所の人間に見つからないように隠す必要がある。といっても物理的ではなく電子的にだ。このタブレットをはめるところが車に存在しているはずだから、そこにはめればいい。ただ、そうするとこのタブレットは使用できなくなるからこの先を手伝うことはできるなくなる』
「大丈夫、ここまでケヴィンには助けてもらったし」
「まぁ1日以上も空いてんだし、今頃キリミネが一人で研究所潰し終わってる可能性があるけどな」
「そうかもしれないけど、絶対なんて無いんだから心配でしょ」
実際、単独での戦闘能力が一番高いのは桐峰だ。下手をすれば私たちがいない方が彼は強いかもしれない。しかしだからといって楽観視するというのは違う。何が起こるかわからないのもあるけれど、最後に去っていく桐峰を見たときのままなら嫌な予感がするのだ。その予感は南の研究所が近づいて尚更強まっていいる。
「よし、とりあえず必要なもんは装備できたな」
「一応さっきまで座っていたし、ボクはちょっと準備運動しよ~」
「ならオレもしとくか。初めて使う道具っつーのはどうしても信頼を置きにくいし、慣らしとかねぇと」
装備を装着し終えたクロとリョーは、車から少しはなれて屈伸などを数回して体を解すと、示し合わせてもいないのに準備運動を始めた。といってもどちらも手加減していることから確かに準備運動なのだろう。
『さてハク、キミも準備は完了できたかい?』
「ええ。とりあえずは。そしたらこれをハメに行けばいいのね?」
『ああ』
タブレットを片手にそれらしき場所を探してみると、運転する席の隣にくぼみを発見した。形はほとんど一緒のように見えたので、それをはめてみる。
『うん、うん、よし、オッケーだ。これでこの車は直接目で見られなければ大丈夫だ』
「あ、はまったままでも話すことは出来るんだ」
『そりゃね。ただここからタブレットを持ち出すことは出来ないから、この先を付いて行く事はできない』
「うん、それに関しては大丈夫」
『そうか。なら頑張ってくれ。通信はこれで切ることにしよう。朗報を期待してる』
タブレットに映っていたケヴィンの姿が消える。
それを見届けた後に、荷台のほうへ行けば準備運動を終えた二人が待っていた。
「それじゃ、行きましょうか」
「おう」
「お~」
研究所の場所はちゃんとケヴィンから教えてもらっている。ここら辺を拡大した専用の地図も渡されているため、現在地点からどれぐらいの場所に研究所があるのかというのもわかっている。
そうなれば進むだけだった。