少女の決心
結局このあとトレーニングするという気分にはなれなくて、ケヴィンが用意した一室に戻った。
リョーとクロは思うところがあったのか、トレーニング用の部屋にまだいると思う。
「ふぅ……」
ベッドに寝転がると、自然とため息が出た。
部屋は小さな照明が床で光っているだけで、全体的には暗い。
薄く照らされた天井を見る。
桐峰が語った気持ち。
ケヴィンが語った過去。
たった少しの時間でこんなにも色んなことを知ることになるなんて思わなかった。
どちらも私が知りたいと心のどこかで思いながらも、決して口には出来ていない事柄。
知れたことが嬉しいと思う反面、彼にとっては聞かれたくなかったものを聞いてしまったような罪悪感。
どうしたら良いのだろうか。
桐峰とはまた、顔を合わせる。そのときに、どうすればいいのだろうか。
私を見たときの彼はどんな表情をしてくれるのだろうか。いつもと変わらない笑顔を向けてくれるのだろうか。それとも、辛そうで悲しそうな表情をしてしまうのだろうか。
「それは、嫌だな……」
大切な人の苦しげな表情を想像して、声が出た。
私にとって桐峰がいない世界は想像できない。再会したは色々あって彼と落ち着いて話したこともほとんどなくて、桐峰はよく笑顔を見せてくれるけれど、思い返してみればいつも何かに追われているような、焦っているような態度をとることもあった。
私の存在が、彼にとっての重荷になっているのだろうか。
きっと桐峰は重荷になっているなんて言わないのだろうけど。
答えは出なかった。
だけど、一つだけ決めた。
正直であろう。
一度はちゃんと伝えられた。なら、もう一度だって伝えられるはず、だから。
きっと――