何となくでわかること
私とリョー、シャルさんは分かれてクロを探すこととなった。といってもこの研究所について詳しくない私が探せる場所は精々が湖内を眺められる部屋とそこまでの道なり、ぐらいなものだった。
リョーとシャルさんはそれぞれ思い付いた場所をさがすとのことだった。
「やっぱりいないか」
私が知っている場所の最有力候補は桐峰とシャルさんが話したあの一室。しかし案の定、入った部屋には人っこ一人いない。
そうして少しの間探してもいないまま――
「柏さん、クロくんは見つかった?」
「いえ、見つからなかったです」
「そうなると、あとはリョーだけね。あの子不思議と勘は良いから見つけてくれるわよ」
「お~い、二人とも~」
「って、噂をすればね。リョー、そっちは――」
「おいこら、引き摺んな! こんぐらい自分で歩ける!」
「ん~でもだからってクロ君が逃げない保証がないわけだし。ならいっそ、ね?
あ、ハクちゃ~ん、シャル~!」
「どうだったなんて、聞くだけ野暮ね」
「そうですね……」
私とシャルさんが合流して少し、リョーが合流した。左手に何かを掴んで。
左手に握られた――正確には引き摺られた――のはクロだった。
引き摺られている当人のクロは抵抗しているが姿勢が悪いこともあるのか、無意味に終わっている。
「クロくんはなんかいたので連れてきました~」
「手間が省けるのは良いことよ、リョー」
「えへへ~ハクちゃんに誉められた~」
「それにしても、よく見つけられたわねリョーカ」
「ボクとしてもなんとな~く探したらいたの」
「それならそれでいいことだわ。
さてクロ君、今から検査を行うわよ」
「いやいやいや、なんで。オレとしちゃぁどこも悪いところなんて無い健康優良児だぜ」
「爆弾」
「……あー、なるほどね。そういうことね。はぁ、わかったわかりましたよとゃんと受けさせてもらいますよ。早く寝てぇし」
シャルさんのお陰と言うべきか、クロはおとなしく応じてくれた。このあと無事に事が済むといいけれど、とりあえず私たちはシャルさんについていった。