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Factor  作者: へるぷみ~
青い少女は陽気に生きる
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リュウとセイリュウ


 「あはは~。さすがにアナタを誤魔化すのは難しかったか~」

 「じゃ、じゃあ本当に?」


 リョーは未だに私の腕にしがみついている。腕に込められている力も重さも変わりはないし、笑みはそのままだ。だけど、笑みの奥にある瞳は笑っていなかった。

 それが桐峰の言葉に対する答えであることは私にも伝わってきた。


 「柏に接触したのは?」

 「それは本当に偶然ですよ~。一応漁師の皆からはボクのことを聞いてる人がいたっていうのは聞いてましたけど。市場でハクちゃんを見かけたときにこ~、ビビビときたから声掛けて、一目惚れ!」

 「うん、それは今の君からも伝わってくる。だけどだからといってここまでついて来る必要はなかっただろう?」

 「ん~、それはまぁ、どうせ此処じゃなくてもいずれはアナタと話す機会は訪れたでしょうし、それに決定的に後戻りが利かなくなった時よりは今の方が遥かにマシかな~って。あとはやっぱりハクちゃんと別れるのは寂しいし、もっと仲良くなりたい!」

 「つってもよ、なんで【因子保持者ファクター】がシェルターで人助けなんてしてんだ? しかもキリミネが【セイリュウ】なんて言ってたって事はなんかしらの根拠があんのか?」

 「ん~、まぁボクはある意味でキリミネさんのイモウト的なものだからかな?」

 「はぁん」

 「桐峰の妹って、どういう……」


 クロは訳知り顔で呟いたが、私にはその意味がよくわからなかった。

 話の腰を折ってしまったという不安に囚われたけど、口から出てしまったものは取り消せない。


 「柏、僕たちが人工的に生まれた新たな人類というのは前に言ったよね?」

 「うん、人の遺伝子に他の動物の優れた遺伝子を組み込むことで、今のような環境下でも生きていけるように造られたっていうのは」

 「そう。そしてそれは他種の動物だけじゃない。人間の遺伝子もそうで、僕たち【因子保持者ファクター】の遺伝子も同様だ」

 「つまり……」


 私は多分、今気づいたという風に喋っているけれど、きっとわかっていた。気づかないふりをしていたという言い方が正しいかもしれない。それでも、今この場では気づかざる終えず、知らなければならないというのは確かだ。


 「ボクは四神が一柱であり、東方を守護せし神獣【青龍】を目指して生み出された【因子保持者ファクター】。無論、空想上の生物である以上その性能も空想的なものだけれど、絶対に欠かしてはならない因子がある。それが、【龍】。【セイリュウ】として生まれからにその因子を必ず宿していなきゃいけないんだ」

 「しかし、【龍】もまた空想」

 「ってはずだったんだけどね~。それがたまたまというのか、無いはずの【龍】という因子は実在したわけで。ね、【リュウ】さん?」

 「そうだね。僕としても、隠すようなことではないし、深い関係者なら誰だって知っていることだ。だけど君から感じる【リュウ】の因子は、あるけれど薄い・・

 「そこはまぁ、真実伝説の生き物の因子を取り込めてる桐峰さんが規格外なだけで、ボクの【セイリュウ】は実質【リュウ】という因子が入っているというためだけにあるようなものですから。それに【リュウ】の因子は現在キリミネさんしか所持していませんから、自ずと【リュウ】の因子を組み込むということはキリミネさんの遺伝子を組み込むということに同義になりますので」

 「だろうね。ちなみに、僕についてはどれぐらい?」

 「え~っと、【リュウ】の【因子保持者ファクター】であるということぐらいは。名前は知りませんでしたし、あの人はボクが【リュウ】と接触したら本能的にわかる、って」

 「ふむ。兄妹みたいなものだからなのか、お互いの中にある因子が共鳴のようなものを起こしているのかもね。どちらにしてもここまで話すと言うことは、リョーカ君も何か伝えたいことがあるんだろう?」


 どうやら二人にしかわからない会話が終わったところで、リョーがようやく私の腕から離れた。

 そして大きく腕を動かして万歳のポーズになる。


 「はい~。なので今日は本当に良い日なんですよ~。ハクちゃんとも会えたしお兄さん的なキリミネさんとも会えましたし!」

 「オレは?」


 会話の中でも一番ののけ者扱いはクロだったからなのか、彼が呟く。


 「そういえばクロ君も……う~ん」

 「悩むんなら答えんでくれ……」


 それに対してのリョーの反応はなんとも微妙というか曖昧で、苦笑いをしながら頬を掻くと、見つめてるとも睨んでるとも捉えられるクロの視線から逃れるように視線を逸らすとクロはたっぷりと息を吐いた。

 リョーはそれに慌てるようにして腕を振って、また苦笑いをする。


 「あはは~。別に悪い意味じゃないんだよ!? ただちょっとどう接したらいいかがわからないんだ。ごめんね」

 「謝られても困るから、さっさと用件を言え」

 「あ、うんそうだったね~。ごほんごほん。では率直に」


 わざとらしく咳をして、私たちの視線はリョーに一層集まる。

 そして浮かべたのは満面の笑み。大きく両手を広げ、


 「ハクちゃん、キリミネさん、あとクロ君には、ボクが生まれた場所である研究所に招待したいと思いま~す!」

 「「「………………」」」


 ちょっと何を言ってるのか、わからなかった。



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