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Factor  作者: へるぷみ~
青い少女は陽気に生きる
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出会いは突然、友情?も突然


 「あ゛ー」


 朝、寝る前の記憶がちょっとあやふやだけど特に問題なく起きた。

 部屋を出て食堂に向かうと、既に座って待っている桐峰と、テーブルに突っ伏しているクロがいた。

 明らかにクロの様子は悪そうだ。


 「大丈夫?」

 「大丈夫かと言われたら大丈夫だが大丈夫じゃないといえば大丈夫じゃない」

 「つまり?」

 「普通に過ごす分には平気だが荒事勘弁」


 血の気の失せた顔色で、クロは顔の側面をテーブルに接地させたまま低い声にもならない音を出している。

 その目の前に、透明の液体が入れられた杯が置かれる。


 「ほらクロ、水」

 「おぅさんきゅ、キリミネ。……つーか、アンタあんだけ昨日飲んで素面ってどういうことだよ……」

 「まぁクロに比べたらそこまでたくさん飲んでないからね」

 「嘘つけ、絶対オレより飲んでたぞ。ほんのちょっびっとの量で喉が焼けそうに熱くなるヤツ平然と飲んでたじゃねぇか」

 「その分自分のペースで飲んでたしね」


 確かに、水を舐めるように飲むクロに対して、桐峰の顔色は普段と変わらないような、普段よりも良さそうに見える。


 「桐峰、お酒強いんだ」

 「人よりちょっとだけね」


 私は桐峰がお酒を飲んでいるところを見た記憶はないから、彼がお酒を得意としているのは知らなくて普通に驚いた。桐峰は私の言葉に肩を竦めて苦笑いをこぼす。

 その様子を水を飲みきったクロが、半眼で見ていた。


 「ちょっと……ねぇ。

  まぁその辺は置いておくか。とりあえず、今日はどうすんだ?」 

 「それに関してなんだけど……昨日漁師の人から聞いたリョーカ・ブルーノに会おうと思ってる」

 「リョーカ・ブルーノって、シェルターの人たちが漁をできるようにしてくれてる人だっけ?」

 「そう。こういうのもなんだけど、その子は高確率で【因子保持者ファクター】だろう」

 「ま、オレらの視点で考えれば普通にそこに行き着くわな」

 「うん。そして普通【因子保持者ファクター】は僕等のような特殊なのを除いて研究所に管理されているはずなんだ。そしてここに【因子保持者ファクター】がいるということは――」

 「――近くに研究所もある」

 「その通り。だから今日は、リョーカ・ブルーノに会うことにしよう」

 「探すとして、どう探すかだな。手分けで探すか?」

 「一応接触しようと思っている相手が相手だから散り散りになっての捜索はあまりよくないんだけど……シェルターの中とはいえそれなりに広いしね。

  そうしたら……よし、柏とクロは港から市場を中心に探して欲しい。僕はそれ以外を探すことにしよう」

 「それは構わないけど……」

 「キリミネは大丈夫……だな。というかこんなかで一番強いやつが負けた相手にオレらが勝てるはずもないか。としたら、集合はどの時間にする?」

 「お昼にこの宿に戻ってこよう。もし時間までに見つかったら接触はしてくれると助かるけれど、あまり無理のない範囲でね」

 「ん、了解」


 そうして朝食を戴いて、宿屋を出たのだった。





 市場は昨日と変わらず人通りが激しかった。というより、昨日よりも人が多いかもしれない。


 「ぬぐぅ」

 「大丈夫?」

 「喧騒が頭に響く」


 大丈夫そうじゃなかった。


 「吐き気は?」

 「それは無い」

 「とりあえず、ゆっくり行きましょう。リョーカ・ブルーノの特徴は、青くて肩ぐらいの長さの髪だったわよね」

 「ん~、そういう青い髪って結構このシェルターだと珍しいし、肩ぐらいの長さっていうとボクぐらいの長さかな?」

 「そうなの? ――って、貴女誰!?」

 「うん? いやいやいや、ちょっと何か探してそうでこの辺だと見たこと無い人だったから声を掛けた一般人だよ?」

 「この辺だと珍しい青い髪で?」

 「この辺だと珍しい青い髪で」

 「肩ぐらいの長さで?」

 「肩ぐらいの長さで」

 「リョーカ・ブルーノ?」

 「リョーとかブルーの方がよく呼ばれるかな~」

 「つまり貴女がリョーカ・ブルーノってことでしょ!」

 「ん~、まぁそうだね~」

 「…………………」


 気づけば目の前には件の探し人、リョーカ・ブルーノがいた。

 確かに聞いた特徴である青くて肩ぐらいの髪、そして本人がリョーカ・ブルーノと名乗った以上は悪質な悪戯でない限り真実と捉えていいだろう。

 正直、あまりの急の出来事に思考が追いつかない。

 助けを求めて視線を彷徨わせてクロを探すと、いつの間にかクロの姿はなくなっていた。

 孤立無援。

 目の前にいる私と身長がほとんど変わらない青い少女はこちらの様子など気にした風も無く朗らかな笑顔のままだ。


 「どうしたの? 口を大きく開けて。あ、でもキミ可愛い~。ねぇねぇ、名前はなんていうの? ボクの名前知ってるみたいだし、キミっていうのも良くないから教えて欲しいな~」

 「……はく

 「ハク! ハクちゃん! 白くて長くてさらさらな髪に合った名前だ~!」

 「わっ、む、むぐ」


 目を輝かせて飛び跳ねたかと思うと跳びついてきて踏鞴を踏んだ。どうにかバランスは崩さなかったけど、私が驚いている間にリョーカ・ブルーノは私に抱きついて離れない。


 「す~は~、いい匂い~。ハクちゃん一目見て気になってたんだけど、ますます気になっちゃった!」

 「ちょ、ちょっと離れてリョーカ・ブルーノ」

 「も~、そんな堅苦しい呼び方しないでよ~」

 「……じゃあ、リョー?」

 「うん! よろしくハクちゃん!」


 突然の出会いに突然のスキンシップと未だに状況に追いつけていないような気がするけれど、目的の人物であるリョーカ・ブルーノ……リョーと私は出会った。



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