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Factor  作者: へるぷみ~
青い少女は陽気に生きる
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東、そこは大きな水溜りのある場所


 地図の東側には、大きな穴がある。正確には、湖があるらしい。

 というのも地図は基本的に地形を描いているだけで、そこにある水まで書く理由がないからだそうだ。

 その湖は私たちが歩いてきた山から下りてくる水が集まってできた水だそうで、荒廃した大地の中では最も自然を残した場所だとされている。


 「東の大きなシェルターでは、魚の養殖をやっているんだよ」

 「魚って、あの魚?」


 道行く中で、桐峰が言った。

 私は食べたことがないけれど、桐峰は食べたことがあるらしい。魚は水の中に生息する生き物で、ずっと昔は肉と並ぶ主食の一つだったそうだけど、それは自然から漁をしていたときのことでまともに外に出ることが出来なくなってからは水が豊富な場所でしか魚は食べれなくなったとのこと。

 また、家畜のように人為的に魚を育て食べるのことを養殖といって、湖の水を汲みそれで育てているそうだ。つまりそれだけ、魚を育てるには水が必要だともいえる。


 「オレは魚食べたことがあるけど、肉と違ってパサついてるっつうか、肉とはまた違った肉っていうか」

 「多分、それは燻製とかしているからだろうね。基本的に魚もなま物だから長期的に保存する場合は燻製にする必要がある。だけど、本当のお肉と違って魚は獲れたてなら生で食べることもできるんだよ」

 「生で……魚ってお肉みたいに赤いの?」

 「そうだなぁ、魚には種類が結構あるみたいで、赤い身や白い身、中には青魚なんて呼ばれるものもあるぐらいだから青い身の魚もいるかもよ?」

 「青い……お肉」

 「うぇ、なんか美味しくなさそうだな」


 そうして東の地域について話しているうちに、山を降りた。

 山を降りてすぐには森が広がっていて、長い年月をかけて人が通っていたことで剥げた地面が続いて道になっていた。

 つまり、そこを進めば自然とシェルターへとたどり着くことができるということだ。


 「今日の夜営はもう少し進んだらにしようか」

 「うん」

 「りょーかい」


 森に入った折に、丁度いいということでお昼を食べた。

 そこで今日の予定を再度話し合い、辺りが暗くなり始めたら夜営をするということに。

 北のシェルターで食料の調達やさすがに少なくなっていた水の確保、汚れてしまったり使い物にならなくなってきた服や靴などは洗ったり買い換えたりした。

 ちなみに、私が着ていた服の一つはラグナスとの一件でボロボロになってしまったこともあって、廃棄することになってしまった。着続けていた服だけに少し寂しい気持ちがあったけれど、そのまま持っていてもしょうがないことはわかっていた。





 夜になって、夜営の準備をする。

 火を起こすのは私か桐峰の仕事で、今日は私がすることになった。クロは周辺の警戒、桐峰は広い範囲での探索とその際に食べられるものを見つけたり焚き火の燃料となる枯れ木などを集めることになった。

 桐峰は完全に辺りが暗くなってしまう頃に戻ってきて、クロは私が火を起こして食事の準備を始めたころには近くの木に登って居眠りしていた。


 「睡眠はオレの生きがいなんだ」


 というのがクロ談。

 彼の言葉は嘘偽りがなく、周りに合わせたりお願いしたことはちゃんとやってくれるけれど、特に何もないときは基本的に彼は眠っている。そこが地面だろうと関係なく、寝るに適していると感じたら眠っている。


 「今日はチーズとスープと、桐峰が採ってきた木の実です」

 「おぉー、うめ」

 「あ、スープと木の実を一緒に食べると香ばしさが出るね」


 鍋に水と干し肉、乾燥させた野菜を入れて煮詰める。味付けはしなくても干し肉や野菜から滲み出てくるので私がするのは鍋の底が焦げないようにするということと、ひっくり返さないように気をつけるというものぐらいだった。

 桐峰が探索に戻ってきたとき、その腕には数本の細い枯れ枝と、逆の腕には脇に抱えられた小さな木の実を6個ほど持って帰ってきた。木の実は硬い殻に覆われていたけれど、【因子保持者ファクター】としての身体能力がある以上は殻を砕くのは難しいことではなかった。といっても、クロは力加減を間違えて殻と中の実ごと粉々にしちゃったけれど。

 晩御飯が終わったら見張りをする。基本は1人が眠って2人が見張りと火の番。それを順繰りにしていくだけ。最初は桐峰が全てやってくれていたけれど、さすがにそれは彼に対する負担が大きいこともあって、私もすることにした。朱里がいたときはそういったことをほとんど考えていなかったから、寝ている最中に襲われたことがなかったのは運が良かったとしか言いようがない。

 そんな一日は、大きな問題を起こすことなく終わるのだった。



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