その髪は黄金、その双眸は紅
「あぁ、そこのお嬢さん」
「……誰?」
合流地点に向かう途中で、声が掛けられた。
高い声だけど、それが男の人のものだと思う。前にもいないし後ろを振り返ってもいない。
「こっちですこっち。上ですよ」
言われた声に導かれるようにして上を見ると、そこには少年がいた。
目に入ったのは金色の髪。
「すみません、今そちらに行きますので」
「ちょっと、どうやってその高さか――」
まさか飛び降りるとは思わなかった。
岩場を伝って降りてくるのかどこかしこから遠回りでやってくるのかと思ったけれど、なんと少年は岩場からそのまま跳んだ。高さで考えてまともに受身もできなかったら骨折は免れないだろう。
「よっと」
「ちょ、ちょっと大丈夫なの!?」
「ん、大丈夫ですよ。人間とは違ってコレぐらいで飛び降りても支障はありませんので」
「人間と違って……? あなたもしかして、【因子保持者】?」
「【因子保持者】? いえ、ぼくは人工的に作られた者たちとは違います。若干150歳の若輩竜というだけですよ」
「リュ、リュウ?」
「ああ、そこは気にしないでください。そうですね……ぼくのことはラグナス、と呼んでいただければ」
「え、あ、うん。私は……龍堂柏。柏って呼んで」
「ほう、リュウドウハクですか。いいですね。竜という部分が実にいいですね」
「あぁそう」
先ほどから目の間の少年は何を言っているのか頓珍漢なことを言っているが、言葉は通じているというのと、多分敵ではないというのはわかった。
降りてきてわかったけれど、彼の紅い双眸は自然と吸い込まれそうになる。
「おっと、あまり目を見つめないほうがいいですよ。竜の瞳には人を魅了する魔力が込められていますので」
というとラグナスはどこからか取り出した扇子で口元を覆い隠し、目を閉じた。
「えぇと、それで私に声を掛けたのは?」
「そうでしたそうでした。実は道に迷ってしまいまして、そこかしこを彷徨っていたんですがどうにもね、そんな折に柏さんを見つけましてね。どうにも迷いのない歩みでしたので道がわかっているのかと思ったんですよ」
「え……ラグナス君は、道がわからないの?」
「えぇ、お恥ずかしながら。なので道中をお供してもよろしいでしょうか?」
「それは、まぁ、いいけど」
「ありがとうございます」
これが、一見すれば怪しい少年ラグナスとの出会いだった。