自分の意思で
「襲撃者だ!」
「対象の護衛は最優先だ、総員警戒しつつ進むぞ!」
「了解!」
物陰に隠れて通路を走り抜けていく男たちを見送る。【対因子部隊】と呼ばれる男たちは銃器を構えながらその中心に白衣姿の男や女を護衛していた。
「さて、そろそと行くぞ」
「ん」
様子を一緒に伺っていたクロは男たちが通路の奥に消えると物陰からでて男たちが去っていった方向とは逆に走り出す。私もそれに続いてクロを追いかけた。前を走る彼は特に迷う素振りは無い。
「正直この研究所の警備体制については完全に把握してるわけじゃないが、基本的には一区画に一部隊だったはずだ。この奥は遺伝子調節室と【因子保持者】部屋だった。一部隊が奥から出ていったってそこに研究者がいたってことは遺伝子調節室の部隊なんだろう。つまり残ってるのは奥の一部隊だな」
「戦闘は避けられないってことね」
「オレは手を出さないからな」
「わかってる」
「一応部隊員は8人だったはずだ。完全武装、入り口を守ってんのが2人、監視室で3人、待機要員が3人だったかな。まぁ頑張ってくれ」
「……聞きたいんだけど」
「ん?」
「【因子保持者】部屋の中にいる子達って、どういう子なの?」
「あぁ、一応言葉は通じるし文字なんかもわかる。最低限の戦闘経験もあるし、オレの【甲鱗】みたいなのは持ってないが、因子の特徴を活かした戦い方は学んでるはずだ」
「なら一つ頼まれて。簡単だから」
「あ?」
「まず私が入り口の2人の気を引くから、その間に部屋に入って中の子達に協力を取り付けて。それなら研究所の人間には手を出していないし、即席の戦力が手に入る」
「……なかなかえげつない事を言うな」
「戦えない子がいるなら強要はしない。でも、この研究所から脱出したいという気持ちを抱いているなら利用できるに越したことはない。どちらにしろこれからの状況を無事に抜けるにはその子達の協力は必須だわ」
「面倒だが……まぁそれならいいぜ。受け持った。何とかなるだろう」
「あと最後に一つ」
「この際だ、聞きたいことは聞きな」
「因子の力を使ってる時っていうのは、どういう感覚なの」
「それは――」




