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目覚め
そこは白い世界だった。
最初こそこれまでの生活が夢だったのかと思ったが、やはりそれは違うと思い直す。
では、ここはどこなのか。
――ここは私の中だよ
「だれ?」
突然響く女性の声。しかし、その声がどこから発生したのかは皆目検討もつかない。ただ声と共に白い世界の中で変化があった。
人のような、いやそれとも違うような、輪郭は常にぼやけ変動し、白い世界の中でより白いというよくわからない影。だけどそれから目を離すことがどうしてもできない。
――見つめなおして
「なにを?」
――貴女という一つの命を
「どうやって?」
――知りたいと
「私を……知る」
――そして、委ねるの
「委……ねる……」
――お目覚めの時間よ、ビャッコ
「………………」
――さぁ、力の限りを振るいなさい。
――それが、【化け物】の宿命なのだから。
白い世界の中で、意識は漂白されていく。
何か私は選択肢を間違えてしまったのではないかと思うよりも先に、真っ白な視界と真っ白な意識の中で、私はぼやけた輪郭の先にあるナニカを目にしたような、そんな気がした。