迎えに行くもの
「おい【ゲンブ】、仕事だ」
「はぁ、本気ですか?」
「口答えをするな。うちの警戒網に2人引っかかった。そいつらを捕らえてこい。できれば無傷が望ましい」
「無傷って……いやいやさすがに無理。というか自分がでるってことはアレでしょ、相手?」
「当然だ。だから貴様を使わざるおえんのだ。何も一人で行けとは言っていない。こちらの部隊を一つ連れて行かせる。それを使え」
「(連れるねぇ……どちらかといえば自分の監視も兼ねてるでしょ)
まぁ、はいはい。了解しました。はぁ~、めんどくさ」
「本当に外に出して構わないのですか?」
「構わん。あいつはここの傑作だが、いかんせん使用したモノが影響しているのか面倒くさがりだからな。必要な仕事はしてもらうが、それ以外は放っておくのが一番いいんだ」
「とはいえ、最悪の場合は……」
「無論それも考慮してある。あいつは気づいた上で無視しているんだ。いちいち気にしてたら『面倒だから』とな」
「は、はぁ」
「まぁ特殊部隊には逐一連絡をするようには伝えてある。もし【ゲンブ】を失ったとしてもまた新しいのを作ればいい。今のものより良いものをな。そのための研究も進んでいるんだろう?」
「はい。現在は――」
それにしても本当に面倒なことになった、と【ゲンブ】はため息を吐いた。
今日も気楽に昼寝をし、飯を食い、また寝るという一日だったはずなのだ。それが突然お外へゴー。保護者付きで多少サボるというのも難しそうだ。あぁ早く帰って眠りたい。とはいえ本当にサボれば自分の命は絶対無い。それもそれで面倒だ、別に楽がしたいのであって楽になりたいわけじゃない。
めんどうだ、めんどうだ。まぁ外に出るとはいえしばらくの間は天気は晴れのようだし、ここは気分を入れ替えて日光浴と考えよう。そうすれば少しは気分も軽くなる。それとどうやらこれから迎えに行くのは【お仲間】らしいし、どんなヤツらなのかを目にするというのも悪くないかもしれない。運がよければ……いやまぁ、そんなことを考えても詮無いことだな。
【ゲンブ】はぶつぶつ考えながら用意された装備に腕を通していく。とはいえ自分のことは自分が良く理解しており、装備を身に着けなくてもいいんじゃないかと思ってしまうが、身に着けろと言われたからには身に着けなくてはならない。なにせ自分はしがないモルモットなのだから。
「あぁ~めんど」
「準備はできたか?」
「見れば判るとおもうん――あぁ~はいはい準備完了いたしましたよ」
「そうか。ではこれより我らの部隊は【ゲンブ】の指揮下に入る。作戦に必要な指示があればこちらに連絡をしてくれ」
「りょーかい」
「現在ターゲットは警戒網に入って2日目といったところだ。監視を始めてからのルートを辿ってみると最終目的地はここにあるシェルターのようだ。我々が現在いる位置から計算をすれば早くても3日目、遅くとも5日目までには発見及び強襲を掛けることができる」
「なるほど」
「そして3~5日目の間にターゲットを強襲するにあたって優位がとりやすいのはおそらくここ。多少のズレはあるかもしれないが、この場所は確実に通らなければならない道になっているため、4日目のまでに網を張ればかかるのは時間の問題だろう」
「つまり?」
「我々の部隊がターゲットの逃げ場を包囲するため、【ゲンブ】には包囲されたターゲットの捕縛を支援してもらうことになる」
「ふむふむ、まぁわかりましたよ。とりあえず移動の手段は?」
「6人乗りの四輪駆動車を2台用意してある。これでポイントの近くまで移動する」
「楽でいいねぇ」
「では、出発しましょう」
「はいよ~」
全身黒に身を包んだ男に促されて【ゲンブ】は歩く。
めんどい、という気持ちは決して隠すことなく。