目覚めた場所はどこなのか
三日がたった。
私が目を覚ましてからのことである。
食事を摂るのははっきりいって無理というクレハの判断で、点滴をし続けていた。
トイレに関してはどうやら私が眠っている間に処理してくれていたらしく、不便さを感じたのは体が思うように動かせないぐらいだった。
そしてようやく、倦怠感は残るものの体を起こせるようになっていた。
「っとと」
「あら、起きてたのね?」
「クレハ」
私が起き上がるのと同時に扉の開く音が聞こえ、そちらを見てみればクレハがいた。
「歩けそう? 一応診た感じだと筋肉が少しだけ衰えてるのを除けばほとんど治ってるはずだけど」
ベッドから降りて、自分の足で立つ。
一瞬だけ力が抜ける感覚に襲われて膝が崩れたけれど、力を込めればなんとか持ち直すことができた。
「なんとか」
「そう。それなら少しだけ歩いて体の感覚を取り戻すといいわ。ただ、あまり激しい運動はしないように。食事は……まぁ消化のいいものを用意するわ」
「ん、ありがと」
クレハが部屋を出て行く。
どうやら私の様子を見に来ただけらしい。軽く一瞥する程度だったけれど。
――――――
「ごちそうさまでした」
しばらく歩いたり屈伸したり、体を伸ばしたりしていると、クレハが食事を持ってきてくれた。
内容は水気が多く、ほとんど形も残っていないスープのような物だったけれど、見た目が少し酷いというのを気にしなければ味もしっかりとしており美味しかった。
ちなみに食事を持ってきた本人であるクレハは、食べ終わったらそこら辺にでも置いといて、と言い残して部屋を出て行った。
「なんだか凄く久しぶりに、お腹が満たされた気がする」
実際は、三日ぶりだ。点滴のおかげかその間は特に空腹を感じることは無かったけれど、やはり口を経由して体の中に何かを取り込むほうがいいのだという発見ができたのは良いことなのかもしれない。
「ん……、んぅ」
少し体を動かして、食欲も久しぶりに満たされたこともあってなのか、うつらうつらとしてきた。
とはいえ食べてすぐに横になるというのは体にあまりよくない。けれど、眠い。
「よし、ちょっと歩こう」
食事の後の軽い運動だ。
丁度いい、クレハは食器をそこら辺に置いといてと言っていたが、別にこちらから持っていけば彼女の手間も省けていいだろう。
よし、思い立ったら行動だ。
軽く膝を伸ばして……、よし。
「そういえばこの部屋の外って、何なのか教えてもらってなかった」
知らないところを歩くというのは不安はあるけれど、なんだかわくわくした気持ちで、部屋を出た。