表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Factor  作者: へるぷみ~
白黒少女が求めた先は
167/187

全てが終わったあと

9/6に投稿できなかった分の補填として、連続した投稿となっています。ご注意ください。


 「はぁ。ったく、どうしてこうなるんだか……」


 ?


 「結局アイツには逃げられて、一応心配になって来てみればこの有様。……最悪ね」


 声が聞こえる。


 「加えて手駒は暴走して、どっか行っちゃうし。踏んだり蹴ったりね」


 悪態を吐く、どこかで聞いたことのある声。


 「まぁ約束は約束だし、治してはあげたけど……ん?」


 この声は、そう――


 「クレハ?」

 「あら、起きたようね柏?」


 開けた視界。

 無機質な天井。

 声のした方向を見れば、そこには金髪と尖った耳をした一人の少女がこちらを見ていた。


 「クレハって名前はもう捨てたんだけど。木春こはるよ、コハル」

 「でも、クレハでしょう?」

 「あぁ、もう面倒くさいわねぇ。まぁ別に何でもいいわよ呼び易い方で」


 諦めた様子でクレハはため息を吐いた。

 どうやら私は眠っていたのか気絶していたのか。

 体を起こそうとする。


 「……あれ?」

 「あー、起きれないわよアンタ。さっきまで上半身の骨が砕けてたんだから。おまけに内臓もいくつか破れてたわね。意識が目覚めたのは一先ず命の危機を脱したからでしょう。しばらくは安静にしていなさいな」

 「え?」


 骨が砕けて、内臓が破れていた?


 「わけがわからない、って顔してるわね。直前の記憶は?」

 「えと……」


 確か……そうだ、桐峰とあの男が戦っていて、それを止めるために私はリョーやクロに協力してもらって、それで、桐峰を止めるためにあの人を抱きしめて。それで――


 「――それで、気を失った」

 「あたしが最初に見つけたときの症状は、誰かに鯖折されて死に掛けてたってところね。状況から察するに、【龍】にやられたんでしょ。殺しきってないのはまぁまだ多少の理性が残っていたからか……」

 「どういうこと?」

 「本とかで読まなかった? 【龍】の逆鱗に一度触れれば、怒り狂った龍はあらゆるものを犠牲にする。そして、アイツにとっての逆鱗はあの男よ。まず言えるのは、【龍】とアレは遭遇させるべきではなかったわね。ま、そうならなかったからこうなったわけで」


 クレハはそう言ったけれど、私が目覚めたとき、あの二人は既に出会っていて、それでどうすればいいのかなんてわからない。

 起こってしまったことをやり直すことなんてできない。


 「そういえば、リョーとクロは?」

 「ああ、【青龍】に【玄武】ね。はっきり言ってアンタより重症よ」

 「え?」

 「まぁ酷いもんね。回復力に関しては【玄武】に並ぶ【因子保持者ファクター】っていうのはほとんどいないわよ。それが、物理的に心臓は潰されてるは腕に脚も欠損してるわと、即死してなかったのが不思議なぐらいなもんね。その点【青龍】はまだマシね。腹に一発ド派手な穴を開けてる程度で済んでるだけ。それも無意識的に水を操ってたのか傷口の被害はほとんど無いから治療は楽だったわ」


 知らないうちにそんなことになってるなんて。

 クレハは生きているって言っていたけれど、心配でしかない。


 「っ、ぅう」

 「無理しないの」

 「で、も」

 「どうせ今は二人とも治療に集中させてるから会うことはできないわよ。無理に動けば治るのも遅くなんだから、大人しく寝てなさい」

 「……わかっ、た」


 実際のところ、痛みは感じないが全身を襲う倦怠感は感じていた。起き上がろうにも首から下は動かそうにも動かせず、もどかしい。

 彼女の言うとおり、大人しくしているしかできることは無い。


 「桐峰は、どうなったの?」


 体が動かせない以上、すぐそばにいるクレハと話すか寝るしかないけれど、どうにも寝たい気分じゃなかった。

 だから、一番気になっていたけれど聞くのが怖かったことを聞く。今なら、例え聞きたくないことでも逃げることはできないから。


 「どっか行ったわ」

 「行った?」


 だけど、帰ってきた言葉は酷く端的なもの。


 「あたしがアンタ達を見つけたときには既にいなくなってたわ。【龍】も、アイツも。だからあたしが知ってることは、どっかに行ったってことぐらいね。まぁ、【青龍】と【玄武】なら知ってるかもしれないわね」

 「そう……」


 つまり私は、あの人を止めることが出来なかったということだ。


 「とりあえず、寝なさい。体も動かないのに考えたところで、何も起きないわ」

 「そう……」


 視界が、滲む。


 「そ、う……」


 体も動かせない私はただ、目から溢れる涙を拭うことも出来ずに泣くことしかできなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ