合流した先に
「クロ、リョー!」
「「キリミネ」さん!?」
桐峰が【鳳凰】との戦いを終え、道を進んでいるときのこと。
道の奥から微細な揺れと何かが壊れるような音を聞き、彼はその場所へと向かった。
そしてたどり着いた場所には現在進行形で部屋の扉を強引に開け放ったままに、そこにあった機材を破壊しているクロとリョーの姿を見つけることができた。
彼の呼びかけに二人はほぼ同時に彼の名前を呼び、振り向く。
「柏がいないようだけど、二人だけなのかい?」
「それは……」
「すまねぇキリミネ、ハクと分断されちまった……」
「それは?」
桐峰の質問に対して気まずそうな雰囲気になった二人に対し、出来るだけ感情を表に出さない口調で彼は問い返す。そして桐峰が必死に感情を殺しているということを察した二人は彼と別れてからどのようなことがあったのかを説明していった。
あの無限に続くかのような廊下で【因子保持者】と遭遇し、戦闘となったこと。それによって柏が一時的な危険な状態になったということ。
無限の廊下を抜けたにあった部屋を出て行こうと扉を潜ったとたん、わずかばかりに先に行っていた柏だけが別の場所へと消えてしまい、彼女を追おうとした二人がそこで【霊亀】の妨害にあったこと。
そしてどちらの【因子保持者】とも危うくも勝利は出来たというのは朗報だった。『四瑞』というのは文字にある四の単語の通り、四体しかいない。無限に続く廊下で出くわした【因子保持者】が何ものだったのかは把握できていないが、この五階層で出くわした相手は【四瑞】のもの立ち以外にはいない。
桐峰は自分の手で【麒麟】と【鳳凰】は倒してきたので、実質的に『四瑞計画』によって生まれた者たちの4分の3を倒すことができたということだ。
それでも、柏だけが分断されたことに彼は疑問を感じた。
なぜ、彼女だけが分断されたのか。実際のところ柏はこの中ではパッとしないほうだ。【因子保持者】としての能力を使用しているときは髪や瞳の変色が起きたり、【超振動】という諸刃の剣を持っているぐらいだ。それなら、【龍鱗】に【水を操る】という能力を有し、薄くはあっても【リュウ】の因子が混じっているリョーを分断するほうが遥かにいいはずなのだ。
「いや、ここで考えていてもしょうがない。二人は、この場所に来るまでに何か目ぼしいものとかあったかい?」
「いや、なかったな。一応部屋に入った際に目に入った機械なんかはある程度見た後は全部ぶっ壊しちまってる」
「そうか。僕のほうも粗方入った部屋を調べていたけれど、今二人が壊しているような機材があるぐらいなものだった。……そして恐らくあの男の先には繋がっていない」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないよ。ともかく、僕も二人もまだ開けていない廊下があったね。そこを行ってみよう」
クロとリョーに拒否の意志はなく、柏のこともあったためか出来る限り同時に彼らは開けた扉を潜り抜けた。
「やぁ、待っていたよ。【龍】クン」
世界がわずかに白く染まり、開けた視界の先には一人の男が桐峰に向けてそう呼びかけていた。