非現実的なものには非現実的なものを
8/5に投稿できなかった分を投稿したために連続した更新となっていますので、ご注意ください。
結局、最初に懸念していた事態になった。
私たちと桐峰は分断され、恐らく桐峰は繰り返す空間に入らずそのままこの通路の先へと行ってしまったのか。それとも、別の場所につなげる空間へとはいってしまったのか。それを確かめる術は無い。
「ひとまず、私たちも歩いてみましょう」
「そうするしかないか……」
「そうだね~」
ひとまずは進むしかない。もしかしたら繰り返される通路は既に終わっているのか、それとも本当に長く長い道がどうしてか続いていただけなのか。それはわからないけれど、ここで立ち止まっているから何かが解決するわけではない。
「ねぇねぇハクちゃん」
「どうしたの?」
「ちょっとだけ試してみたいことがあるんだけどさ。ここに何か目立つものを置いてみない?」
「それはいいけど、もし相手が空間を自由にできるなら目印になるものが見えない空間に繋げてまた同じ空間を歩き続けることになるかもしれないわよ?」
「うん、だからある程度歩いても置いたはずのものが見つからなかったらまた置こうよ」
「それでまた見つからなかったら?」
「また置こう」
「延々と?」
「延々と」
「いいんじゃねぇか?」
「クロ?」
「実際、オレらにゃどうしようもないことなんだ。だったら、試せることはなんだって試すのが一番だろ? それに、もしかしたらオレらが道に物置過ぎて繋げるための空間が無くなっちまうなんてこともあるかもしれないぜ?」
そういったクロの言葉に、ストンと落ちるものがあった。
「……なるほど」
確かに、もし空間同士を繋げることで延々と続く通路を演出しているのだとしたら、それを演出するためには道のどこかにある異物は排除しなければならない。もし荷物を置いても歩いた先に同じものがあってはいけない。そのためにはその空間に繋がないようにしなければならない。
あまりに単純なことで、非現実的なことだけど、こんな非現実的な現象が起きているのだから多少非現実的な方法を試してみるというのも悪くは無いだろう。
「わかったわ、やってみましょうか」
「やった~!」
「それで、何を置く?」
「ひとまずは一番必要なさそうなものから置いてくか?」
「だったら、この銃に装填されてる銃弾を置いていきましょう。食料を置いていこうかと思ったけれど、どれぐらい時間がかかるかわからないし」
「置いてくタイミングはどうする?」
「気になったら、ぐらいにしましょう」
そうして私は抱えていた銃の弾倉を引き抜いて弾丸を手のひらに乗せる。
手のひらに転がった一発の弾丸を床へと置いて、この長い通路を歩き出した。