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Factor  作者: へるぷみ~
青年はその因縁を睨みつける
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【中央】攻略四階 6


 ダクトを這うこと少しして、さすがに私たちがこの階層にいるはずなのに見つからないことに焦ってきたのか【対因子部隊】の動きが慌しいものになってきていた。

 そんなこともあってか部屋の真上を通る際なんかに彼らが下におり気まぐれに上を見上げようものなら見つかってしまうという場面が多々ありながらもどうにか見つかることは無かった。


 そうして見つかるのではないかと心配しつつも彷徨っているいると、部屋を格子越しに覗いていたリョーの動きが止まり、手で格子の奥を指差した。

 何かを見つけたのかと思い、リョーが奥へと退いてから私は格子を覗いた。


 「おい、この階層に侵入してきたっていう【因子保持者ファクター】はどうなったんだ?」

 「さぁな。おれ達が気にしてたって意味無いだろ。そういったのは全部【対因子部隊あいつら】がやってくれるんだから。とりあえずおれ達はいつも通りに仕事だ」

 「かー、ずっと座っての作業とか疲れるんだよ。それに――」


 そこにいたのは白衣を着た男たちだった。私たちが侵入してきているということは知っているらしいけれど、互いに仲が良くないからなのかあまり情報を持っている様子は無いようで、【因子保持者ファクター】ということしか知らないようだ。


 とはいえ、先ほどまではずっと黒づくめを見下ろしていたのがこの部屋には白衣を着た男たち。そして僅かに見える部屋の様子からして全体のつくりは同じであるものの機械やら何やらが所狭しと置かれており今まで覗いてきた部屋とはまったく違う様子。そしてそれは、私たちが目指していた場所であることはすぐにわかった。

 後ろにいるクロに注意するよう手振りで伝えて一旦離れることにした。できれば話し合っておきたいから。


 そうこうしてダクトを這っては格子を覗き、人のいない部屋を探す。

 が、覗く部屋のどれもに人がおり、最悪一人ぐらいだけならリョーの力で気絶させてしまうかと思っていたけれど彼らは常に最低でも二人以上で行動を共にしていた。


 どうしたものかと思案していたところで、リョーがまた動きを止めた。小さく指でダクトの壁面を小突く音。それはつまるところ、行き止まりということだった。こうなったら一旦下がるしかない。いっそのこと相手が二人いてもただの人間くらいならあっさりと制圧することぐらいはできるだろう。私の手はちょっと使いづらいけれど足はまだまだ平気なので蹴り倒せばいいだろう。

 と、小さくため息をつきながら覚悟を決めたところで、行き止まりの近くにあった格子を覗き込む。


 「(あれ?)」


 はたと、そこで私は気づいた。

 その部屋はとても暗かった。格子を通るたびに隠していたホタルイシを出して格子の奥を覗く。これは正直使い方としてはもし部屋に誰かいたら見つかる恐れがあるためにあまりほめられたものではないけれど、このときの私は行動に間違いがあると思ってはいなかった。


 その部屋には多くの箱が置かれていた。乱暴に置かれているものもあれば、綺麗に積まれているものなど様々だけれど、一つだけわかることはある。


 「リョー、この部屋は多分倉庫だわ。格子を外して中を確認してくれる?」

 「は~い」


 緩く返事をした彼女は水を格子から通すと、パキパキと音を格子が鳴らししばらくすると。格子を手に掴んだリョーは小さく意気込むと少し大きくパカンという音をたてて格子は取り外された。

 外すなり穴へと身を滑らせて部屋へとリョーが入れば、少し周りを見渡してから指で小さく丸を作った。

 それに続くように部屋へと着地。続いてクロも無事部屋に降り立った。


 「どうやら、無事に研究設備のある場所にくることができたみたいね」

 「それはまぁいいけどよ、現在地がわかんなくなっちまった以上この状況はあまりよくないんじゃないのか?」


 確かに。未だにこれが不測の事体であるということに変わりは無い。それでもさきほどまでの追われるような状況に比べればはるかに好転はしている。


 「ひとまずはここから5階へと行きたいんだけど……」

 「オレらの記憶にある構造をこの建物はしてねぇみたいだし、ひとまず地図を探したほうがいいんじゃないか?」

 「でもそれだと結構大変じゃない? 特に誰がこの階層の地図を持っているかなんてわからないんだし」

 「とりあえずは追っ手の手から逃れることが出来たし、隠れながら行動はするべきだろうな。もし研究者に見つかっときは……協力を仰ぎつつ寝ててもらおうぜ」

 「……わかった、そうしましょうか」


 

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