【中央】攻略四階 4
「いたぞ、侵入者だー!」
「見つかった!」
「一点突破で突っ込むぞ!」
「ボクも手伝うよ~」
どうにか危機的状況から逃げ出したはいいけれど、当然無事であるということがわかってしまっていては見つかるのもまた早かった。
見つかった方向へと視線を向ければ三人一組で私たちを探していたであろう黒づくめ。さっきまでは無数の弾幕を展開されたことで近づきづらかったそれも三人ぐらいであればどうにかなると判断して二人が前に出た。
「なにか、えん――っ!?」
すかさず私も二人の援護のために道具を出そうとしたときだった。指に鋭い痛みが奔り、痛みのあった場所を見た。
真っ赤だった。さっきまでは逃げることに必死なこともあって気づけなかったのだろうか、私の指先は血に染まり今も流れる血液が滴って床へと落ちていた。片方の腕を強く振って血を払い落とし、よく観察してみれば爪もぐちゃぐちゃで指に喰いこんでいる。
意識すれば痛みは強くなった。
緊急措置とはいえ、【超振動】を長時間使用したのが原因なんだろう。幸運なのは指先が完全になくなっているわけではないし、痛みがあるということは壊死しているということでもない。【因子保持者】だからこの程度で済んだのか否かはあとで考えることにして、今は二人に気取られないようにあとへと続いた。
「と、止まらない!? 銃で撃たれてるのに!!」
「に、逃げろ逃げろぉ!」
「近づかせるなぁ!!」
「さっきからイライラしてたんだ。少しばかり付き合ってくれよ!」
「ボクとしてもずっと動き続けるのは疲れるから、ちょ~と眠っててね」
まぁ相手は銃だけ使っている様子だし、クロとリョーであれば私が手伝う間もなくあっさりと相手へ肉迫して昏倒させた。ついでに彼らが持っていた銃はクロが弾を抜き取った後にへし折った。
「このままこの階層を駆けていても追われているという状況から抜け出せない。……確かどこかにダクトがあったわよね?」
「空気を通すための道だったか? それっぽいのなら部屋の色んなところにあるはずだが」
「一旦そこに入って移動しましょう。もちろん、見つからないように」
「その前に~、ハクちゃんの手の治療しないと」
「それよりも先に安全の確保よ。今立ち止まって囲まれるのだけは避けたいもの」
「……そうだな、オレもハクの意見は賛成だ。けど止血だけはするぞ。そんな血を床に溢しながら移動してたんじゃ此処にいますよ、って言ってるようなもんだ」
「そう、ね。ごめんなさい、そこはあまり意識が回ってなかった」
「じゃあほら、ハクちゃん手~出して。水で血を洗ったらちゃっちゃと包帯巻いちゃうから」
リョーに手を差し出せば彼女が操った水が指先を包み込む。
刺すような痛みに体中の温度が下がる錯覚を覚え、痛みに声を出さないように歯を食いしばる。
ごめんね、とリョーはいいながらも中断することは無く血で汚れた手は今も傷口から血が溢れているのを除いて綺麗になる。すかさず取り出した治療用の布を傷口に当てるとその上から丁寧に指の一本一本を包帯で巻いていった。
「……よし、かんりょ~」
「ありがとう、リョー」
「いいんだよ~ハクちゃん」
「よし、まだ囲まれてない。一番手薄のなところに突っ込んで移動するぞ」
「ええ」
「は~い」