【中央】攻略四階
【中央】において、四階層から上は完全な極秘階層だ。それだけに警戒のレベルはこれまで以上で、三階までの【対因子部隊】のほとんどが桐峰の対応に追われているのに対してこの階層を警備している者たちは誰一人として欠けていない。
というのも四階層で扱われているのは遺伝子操作を行った生命に関することだからだ。表向きは荒廃したこの世界でも育てられる家畜や野菜といった食料の品種改良のようだが、当然その裏では私たち【因子保持者】を生み出したように人体を用いた様々な研究が行われているというのが真実だ。
三階層から四階層へと上がる為の階段は壁沿いの場所。上りきった先には中央へとまっすぐに進む通路と左右にある通路の合計三つの道がある。ここから5階層へと行くためには先ほどの白衣の男ぐらいの役職では行けない様になっている。それだけにこの階層内にいるであろう責任者からそれに近い人間を見つけ出す必要がある。
「おいおい、一体どこから出てきてんだあいつ等!?」
「いいから走るかどこかの部屋に逃げ込まないと!」
「うひゃ~!!」
そんなことをしている暇があればの話なわけだけど。
「こちらシー、侵入者の【因子保持者】を発見! 銃撃を行います!」
『今そこに一番近いのはイーだ、上手く追い立てろ! くれぐれも不用意な行動をとるなよ!?』
「了解!」
四階層に上がってすぐのことだった。
なんと真正面の通路と右にいく通路には【対因子部隊】が既におり、私たちの姿を認めるや否や十字砲火が行われた。
そうなれば階段を戻るか左の通路に逃げ込み射線を一つに絞るかという話になり、反射的に後退を選ばず左の通路へと逃げ込んだ。それが結局のところ彼らの狙いだったということなのだろう。階層の特徴として点在する部屋は通路と通路を繋げるための扉が設置されている。それによって通路を封鎖するには十分である十人一組で現れては近づくには距離があるという場所から銃撃を行うという方法をとっていた。もちろん強引に突破するという方法もあるのだけれど、少しでも時間があれば彼らは別の組が回り込んでの銃撃を行ってくるという非常に厄介な戦い方をしてきた。
その度に近くにある部屋へと飛び込んでは別の場所に出て通路を駆け、彼らに見つかり銃撃に追い立てながら四階層を駆けずり回っていた。
「これ、このままだと嫌な予感がするんだけどッ」
「つっても通路一杯の銃弾を回避なんてできねぇし、オレが前にでるっつてもアイツ等近づけば離れるしでどうしようもないぞ!」
「ボクとしても水である程度までは守れるけどあの量を全部止めるのは難しいかな~」
「ともかく状況が悪化してるだけで好転させるきっかけがないと……」
「今、どこらへんにいるのかはわかるか?」
「えーっと……最初は左でしょ、それでここ行って、曲がって、入って、それで……うわ」
「なんだ今の、うわは」
「ある意味クロのおかげで気づいた。これ誘い込まれてる。さっきからところどころでどうにか逃げ込めてるのはわざとそこだけを手透きにしてるからってわけね」
「どうするの~、ハクちゃん?」
「相手の手のひらで踊るのは嫌だけど、とりあえずは凌ぎきるしか道はないし存分に踊ってやりましょう」
通路の先に現れた黒づくめの奴らが銃撃をしかけてくる。すぐに傍にあった部屋へと飛び込みまた駆けた。誘導されるままに。