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Factor  作者: へるぷみ~
青年はその因縁を睨みつける
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【中央】攻略三階 2


 【中央セントラル】という場所に訪れてまだ短くてもわかったことがある。まず一つにこの建物内は酷く簡素であるということ。今歩いているこの廊下もただの道としてしか機能しておらず、その道中にはほかの部屋へと向かうための扉はあってもそれ以外は何も無かった。とはいえこれはケヴィンの隠れ家にもいえることだし、もしかしたらこういった建物というのは簡素であるというのが普通なのかもしれない。

 そうして歩いていく最中、油断していたわけではないけれど人と出くわした。

 丁度通り過ぎようとしたした扉が突然開き、そこには【対因子部隊】と思われる黒づくめが二人と、彼らに守られるように後ろにいる白衣の男性の姿。

 当然、白衣の男は驚きの表情を浮かべており黒づくめの二人も表情こそフルフェイスによって見ることは叶わないが白衣の男とさして変わらない表情を浮かべているだろう。なにせ、私たちもいきなり開いたことで少しだけ時が止まっていたのだから。

 私たちが動き出すのと二人が動き出すのはほとんど一緒だった。


 「まず、クロリョー!」

 「マジかよ!?」

 「完全な防音設備も考え物だよね~」


 「て、敵襲ー!」

 「下がっていろ!」

 「は、はいぃぃぃいいい!!!」


 一人が叫び、一人は白衣の男を庇うように後ろへおいやり、白衣の男は悲鳴を上げながら部屋の奥へと戻っていく。叫んだ一人は声を上げながらも腕を止めず、背負っていたアサルトライフルを瞬時に構えこちらへ銃口を突きつける。後ろへと追いやった一人は片手で白衣の男を追いやりつつももう片方の手で銃を構えていた。もちろん二人とも視線を一瞬たりともこちらから外していない。


 私もクロとリョーに声を掛けながら二人を戦闘不能にするために前にでる。釣られてクロもリョーも前には出たけれどやはり偶然の遭遇に対処が一歩遅れてしまい、男の襲撃の報を止めることは出来なかった。

 加えて銃を構えている男の銃口は一階であったような者たちとは違って迷いは無く、こちらの動きに合わせて銃口も角度を変えている。私の場合は肉体面の防御力はクロやリョーに及ばないこともあって銃弾を受けることは出来ない。その分銃撃を当たらないように動くことは出来るけれど、私と彼らを隔てる扉という狭い空間が邪魔をしており銃撃を避けながら回りこむというのが難しかった。真正面からよけるという方法もあるけれど、それは私が銃弾と銃弾の合間にある空間へと身を滑らせることで避けているわけで、避けるための空間が無ければ避けることなどできない。つまり、二人分の弾幕を張られてしまえばまともに近づくことも出来ないというのが現状である。


 故に、前に出るのは二人に任せて私は前に出ていた脚を後ろに一歩引く。

 そして取り出すのは彼らの意識をこちらへと向けさせるためのもの。


 「それっ」


 下手で放ることでゆっくりと放物線を描き彼らの頭上を通り越そうとするそれは弾丸状の容器。それを当然見逃さなかった二人は私の投げた容器が何か危険物の入っているものだと断定した。


 「まずい、毒物の可能性があるぞ!?」

 「くそぉ!!」

 「待て、銃で撃とうとするな! 容器を破壊すればあちらの思う壺になる――」


 後ろにいた一人が咄嗟に銃口をそちらへと向け、兆弾を恐れていないのかそれとも考えるまでの意識が回らなかったのか、発砲した。

 ぱきん、という音を立てて容器が砕け散り中の液体が中を舞い、床へと落ちる。


 「このバカが! 早く扉を――」

 「ざ~んねん。ちょっとだけ眠っててね」

 「しま」

 「ありゃ毒物なんかじゃねぇから安心してぶっ倒れてろ」

 「いつの間に!?」


 ものの見事に注意が割かれたことと銃撃をしたことで生まれた隙を突いてクロとリョーがそれぞれ男たちを気絶させた。

 一時はどうなるかと思ったけれど、なんとかなったようだ。


 「それより二人とも、さっきので私たちがこの建物内部に侵入したことが明確にバレた可能性があるわ!」

 「まぁそうだろうな」

 「それじゃさ、あそこの人はどうするの~?」


 そういってリョーが指さしたのは銃撃を聞きなれていなかったからなのか自分を守っていた護衛二人が一瞬にしてやられてしまったからなのか、尻餅をついて涙目になった白衣の男の姿。


 「ひ、ひぃいいい!!?」


 私たちの意識が自分へと向いたのに気づいたためか、さっきまではあげそうであげてなかった悲鳴を叫び尻餅のまま後ろへと後退していく。


 「そうね……貴方」

 「こ、殺さないでくれぇえ!! 命を助けてくれるなら、何だってする!」

 「……別に殺すつもりは無いんだけど。でもいま、何でもするって言ったわよね?」


 ああ、と言って首を激しく上下させる白衣の男。それなら丁度いい。交渉する手間をなくなった。


 「なら、今からいく場所まで一緒に来て。そして、私たちが聞いたことに正直に答えなさい」

 「わ、わかったぁ!」


 再度男は、首が取れてしまうんじゃないかという位の勢いで首を縦に振った。



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