【中央】攻略三階
「大丈夫~、ハクちゃん?」
「ええ、さっき終わったところ。そっちはどうなったの……というか、その大量の水なに?」
「えへへ~、ちょっとだけあの女の人に使うことになっちゃって。もったいないから使える分は持ってこうかなって」
「まぁそっちも無事にみたいだし良かった。となると残ってるのはクロだけど……」
「あ~クロ君ならほら、あそこで座ってるよ」
そう言われて指差された方向を見てみると、こちらに背を向けたまま座り込んでいるクロの姿があった。こちらの声は聞こえてないのか、振り向く気配は無い。
彼が相手取っていたトカゲな人は離れた場所で気絶しており、勝っているのは確かなようなだった。
近づいて声をかける。
「クロ、大丈夫なの?」
「………………」
「クロ?」
「クロく~ん?」
すぐ後ろで声を掛けてみるも無言。振り向きさえもしない。
ちょっとおかしいと彼の前面まで歩いてみればクロは座ったままに目を閉じていた。
「これはもしかして……」
「寝てる、よね~?」
「………………」
微動だにしないその姿に一瞬驚くけれど、理解した。
寝ているならば、そりゃ返事もしない。
「クロ、起きなさい」
「……ん。ぉ、寝ちまってたか?」
「ぐっすりだったよ~」
「よく敵地のど真ん中で寝れるわね……」
「いや、久々に思いっきり殴り合いなんてしたもんだからな。少し疲れて座って休んだら行こうと思ってたんだけどよ」
「正直、私かリョーが負けてたらあなたそのまま捕まるか殺されるかしてたわよ?」
「でも、ここにいるってことは二人とも勝ったんだろ。なら、それでいいじゃねぇか」
「はぁ。まぁいいわ。とりあえずはあの三人を倒したことでこの部屋を通過できるし、さっさと三階に向かいましょう。追っ手が来たりあっちの防衛網が完成するよりも早く上を目指さないと」
「おぅ、そうだな。行くとしようか」
二階は結局のところあの三人にとの戦闘以外に誰かと出くわすということも無く、階段を利用し無事にたどり着いた。
三階層は確か第一研究室だっけ……。
【中央】はその裏側こそ色々とやっているけれど、どうやら表向きは様々な薬品や品種改良した作物、機械製品を開発してシェルターへと送っているらしい。どうやらこれで新開発したものの実験を行っているというのがケヴィンやクレハの言葉だった。
「この階層の探索は少しだけやりましょう。クロの体に関して何かできることがあるかもしれないし」
「つってもよ、ここって道具とかの開発をしてる階層なんだろ? 症状を抑えるとかその程度じゃ根本的な解決にはならねぇけど」
「それでもよ。可能性を潰すわけにはいかないもの。上の階層の方がクロの目的を達するのに適したものがあるかもしれないけど、それでも可能性がある以上は賭けたいわ」
「……あー」
「おや~、クロ君照れてるの?」
「うっせ。わかった、オレとしても現状のこの体がどうにかなるならそれでいい」
「それじゃ、とりあえずはこの通路の先にある部屋に行きましょう。確かそこがこの部屋にとっての重要なところみたいだし」
「その分、敵さんの防衛もありそうだよね~」
それだけは避けれなさそうね、という言葉を私は零して通路を歩き出した。