【中央】攻略一階 2
「っっっら!!」
爆音。
クロは彼らが銃を撃つよりも早く背負っていた鉄棍棒を地面に向けて叩き付けた。
爆ぜた床は破片を撒き散らし、大きな破片は互いに射線上に入らないよう広がっていた影響で【対因子部隊】の数名が胴体や手足に当たる。中にはぶつかった影響で力んだのか銃を誰もいない方向へと撃って体を泳がせてしまったものもいる。
「もう、こっちまで跳んできてる!」
「そっちはリョーの水のおかげで被害はないし、大きくても拳ぐらいの大きさだろ?」
「まぁそうだけど……。とりあえず隊列が崩れたから一気に潰すわよ」
「んじゃボクは右ね~」
「じゃあ私は左やるから、中央の隊長っぽいのよろしく」
「っしゃ行くか!」
既に私たちは【因子保持者】としての能力を開放している。クロは見た目の変化が乏しいけれどテンションが目に見えて高くなっているし、リョーはその水色の髪に青みが増している。私も恐らく自分の瞳は琥珀の色から碧くなっているだろうし、髪も黒い縞模様が走っているだろう。
「やはり【因子保持者】か! おい、至急上に連絡をとって部隊を回せ!!」
「了解!」
「相手は人間だと思うなよ、人の形をした化け物だ! いいな、女子供だからといって躊躇えばお前たちがやられるぞッ」
「化けモンとは、心外だ、なぁ!」
「ちぃ、貴様は【ゲンブ】だな。北の研究所が壊滅した際に行方不明になったと連絡を受けたが生きていたか!?」
「お生憎サマだ、なッ」
「私がここを引き付ける。お前は連絡を――むんッ……しろ!」
「は、了解です!」
「させっかぁ!」
「させるッ!!」
「くそ、なんだこの水は!? 銃弾を止めやがった……」
「あ~んま水のなかに不純物が混じっちゃうと動かしにくくなるから銃ってすきじゃないんだよね」
「くそ、とりえあえず撃つしかないだろぉ!?」
「くそ、くそ、くそぉ」
「来るな、近づくな――うわぁああああああ!!!」
「ん~、部隊って柏ちゃんは言ってたけどこの感じだと皆新兵なのかな?」
「は、速い。無闇に撃ってもあたらねぇ!」
「でも撃つしかないだろ!?」
「………………」
「な、がッ……」
「くそ、離れろ!!」
「それじゃ遅いわ」
「あががががががが」
「こいつ、盾にしやがった……!」
「仲間ごと一緒に撃ったのはあなたでしょうが。ほら、返すわよ」
「うわ――」
「銃の利点は遠距離からの逃れようが無い弾幕を浴びせることよ。こんな近間で数の有利を自ら殺してしまったら私や二人には勝てない」
「ち、くしょ、ばけ……もん、が」
私が二人を気絶、一人を銃弾の盾にして生死は不明にする頃には、リョーは早々に三人全員を昏倒させており、クロは四人のうち二人が倒れており一人膝を屈し、今目の前で地面へと叩き伏せられて、残るのは最後の一人。それも銃を構えてはいたが引き絞られた引き金によって放たれた銃弾は全てクロの胴体に当たるも弾かれて、そのまま近寄られてしまい頭をつかまれて床に埋められた。
「終わった?」
「わりぃ、もしかしたら連絡された」
「それぐらいは早いか遅いかの問題だから気にしなくてもいいわ。よく見れば随所にこの建物を監視するためのカメラもあるみたいだし」
壁の角などに取り付けられているのは、ケヴィンのところでも見たカメラだ。あれでどうせ現状を見られているだろうし、【対因子部隊】の男たちが連絡しなくても気づかれていることには変わりないだろう。
それなら戻るという選択肢も留まるという選択肢も無い。ひたすらに突き進むだけだ。
「一気に駆け上がるわよ。今回はやけに弱かったけれど相手が銃を使えるってことに変わりは無いわ」
「ボクたちにびっくりしてた感じだと指示してた人はともかく他の人は戦いに慣れてない感じだったしね~」
「そこは彼らの運がなかったことで。今回は人間しかいなかったけど、このまま行けば絶対に【因子保持者】には出会うでしょうね」
「さすがに無視は難しそうだし、都度都度倒していくしかねぇか」
「えぇ、そうなると思う」