下水道は意外と綺麗
下水道は周囲にある壁とは違い鉄のフェンスで覆われていた。一応は定期的に人が点検するためか扉があり、そこには注意書きが書かれている。
「扉は外付けの簡単な仕掛けね。クロ」
「あいよ」
強引な手だけど、簡単に済ませるには彼の力が頼りになる。
クロは扉についている錠前を握ると、べき、という音を立てた。離してしまえば砕けた錠が地面に落ちる。
壊れた錠前は蹴り転がして水の中へと落とした。簡単に証拠を隠滅できるものがあるというのはこちらの利点になる。
扉を開けて中へと入る。
「意外と臭くはないのね」
「それに温かいね~」
「排水されているは汚水って感じじゃないし、多分ろ過装置に通してから捨ててるんだろうな」
なるほど。下水道とはケヴィンが言っていたけれどそのまま排出されているわけじゃないらしい。
下水道の通路は人が二人分並んで歩ける広さだ。もし敵に出くわしたとしてもあまり派手な戦いはできないだろう。
とはいえ、先ほどの下水道入り口の様子を見たところあまりここは重要視されているようではないようで、錠が単純なのがその証拠なのかもしれない。
とりあえずは内部に入ることには成功したし、運が相当悪くない限り出くわすということは無いだろう。
「ひとまずは奥に進みましょう。見取り図通りなら行き止まりのひとつ前を曲がっていけばいいはず。それとクロ、ホタルイシ」
「ん、確かに見えなくはねぇけど万が一があるか。ちょっと待ってろ」
光源を手に入れたら歩くだけ。
生暖かく広くは無く、狭くも無い空間を私たちは歩き出した。