ノアのダンジョン
ノアの箱舟
ある日、世界中にモンスターが現れた。
モンスターは、鶏・豚・牛・猫・犬等を攫って行った。
そして、ライオン・虎・狼・鳥等、野生動物も攫って行った。
海に潜って、魚や鯨、貝等も攫って行った。
最後に、様々な職業の人間を攫って行った。
「皆、お疲れ~!」
色々と攫って来たモンスター達を労うのは、一人の少女。
「お、おい! あんた、一体、何なんだ?!」
そんな彼女に、攫われて来た男の一人が尋ねる。
「え? 何って、ダンジョンマスター」
「ダンジョンメートル?」
「え? 地下牢?」
ダンジョンメートルというものを知らない人々は、困惑するばかり。
「ノーノー。ダンジョンは、最後の砦だよ」
「最後の砦?」
「そんなのどうでも良いから、帰して頂戴!」
「俺達をどうするつもりなんだ!?」
「帰す訳にはいかないな~。貴方達には、時が来るまでこのダンジョンで過ごして貰うんだから」
「勝手な事を言わないでよ!」
ダンジョンから出ようと踵を返した女性は、窓の外の光景に硬直した。
「な、何? CG?」
窓の外には、恐らく爆発で破壊され尽くした街が見えた。
生きた人間は見当たらない。
「嘘だろう……?」
「一体、何が……?」
「もしかして、核戦争?」
「ノン! 隕石の衝突よ!」
ダンジョンメートルを名乗る少女が、正解を答える。
「隕石?!」
「嘘よ! じゃあ、何で此処は無事なの!?」
「このダンジョンが、種の保管の為の神の御加護だからよ」
少女の答えに、人々は唖然とする。
「加護? モンスターが?」
「イエス。モンスター含むダンジョン全般ね」
「何が加護よ! どうして、私の家族を助けてくれなかったの!」
まだ現実を受け入れきれない人々の中で、一人の女性が叫んだ。
「どうしてって言われても、別に貴女も助ける必要は無かったし……」
偶然としか言い様が無い。
そもそも、死体を吸収して、DPと交換出来る生き物のリストに載せるだけで良かったのだから。
「天国に会いに行くなら止めないよ~」
「そんな態度は無いだろう!」
少女の態度に苛立ちを覚えた男が怒鳴る。
「ん~? どうして怒っているのか解らないけど、別に生体の人は、どうしても必要って訳じゃ無いから、死にたい人は死なせてあげて良いんだよ?」
「それが人間の言う事か!」
「どうして、私をユマンだと思っているの? ダンジョンメートルだって言ったよね?」
その言葉に、男を含む数人がハッとした。
彼等は、少女の見た目が人間と変わらない為に人間だと思っていた。
モンスターを従える謎の存在だと言うのに。
「なんてね! 嘘でした~! 私もユマンだよ! まあ、違う世界のだけど」
「違う世界?」
「ウイ。デューに命じられて来たの。この世界が再びユマンの住める地になっても、元の世界に帰れないけれど」
「そんな事言って、同情して貰いたい訳!?」
先程、家族を助けて貰えなかった事を責めた女性が、そう叫ぶ。
「ノン! 文化が違えば、価値観も違うでしょう? 此処は、貴方達の世界であって、貴方達の世界では無い場所。メートルは、私」
「貴方に従えと言うの?」
「そうよ。当然でしょう? 貴方達が生きている必要は、私にもデューにも無いんだから。他の動物と同じように、死体にして吸収すればそれで良いんだもの」
自分達の立場を思い知った人々は、絶望に立ち竦んだ。
「そう言えば、名前を教えていなかったわね」
少女の声だけが、場違いに明るく響く。
「私は、ノア。これから、宜しくね!」