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第8話 血抜き→解体→EXクエスト?

横から狼にゴブが持ってかれた!


それが狼のやり方かぁ! ←今ここ

 手早くゴブリン2体の死体を血抜きし、狼の横に同じように吊るしておく。


 これでまたモンスターが寄って来れば一石二鳥でアイテムが稼げる機会が増える。


 できれば先ほどゴブリンを咥えていった狼が来てくれれば意趣返しできるんだが。


 まさか他のモンスターに獲物を奪われるとは思わなかったので、あの時は鑑定をかけるのも忘れて呆けてしまった。


 茂みの揺れをゴブリンだと思い警戒していたが、まさか増援ではなく他勢力だったとは。


 限りなく現実に近いという事はモンスター同士でも生存競争があるということか。


 考え方が従来のゲームよりのままだと近いうちに痛い目に遭うだろうな。


 その後も血の匂いに釣られてやって来たモンスターを武器の感触を確かめながら倒していき、血抜きの終了したモンスターを専用のアイテムボックスに入れるなどの行程を続けることになった。


『これ以上解体用ボックスへは入りません。※重量もしくはサイズオーバーです』


 おっとどうやら解体用のボックスはサイズオーバーのようだ。


 通常のインベントリへは入れられない事は試したので、これ以上の狩りの続行は諦めるしかないか。


 残念な事にあの白銀の狼はあれから姿を見せる事は無かった。


 後半は焦れてきて半ば八つ当たりのように襲ってきたモンスターにこの憤りをぶつけてしまったので、ゴブリンにせよ狼にせよ損傷が激しくなってしまった。


 とりあえず損傷の激しいモンスターはその場で昔見た祖父の解体作業を思いだしながら、狼を猪だと思って解体作業を行い、ある程度の部位に切り分けて見る。


 その間も警戒するのは忘れず、予め周囲を切り開いて作業スペースを確保しておいた。これなら上からの奇襲でもない限りは襲われる前に気づけるはずだ。


 そして解体した部位に鑑定をかけて見れば


――――――――――

草原狼のもも肉

草原に生息する草原狼。

その鍛え込まれたもも肉。肉食獣な為匂いが強く香草に浸けて匂い取りをしてから調理される事が多い。

――――――――――


――――――――――

草原狼の胸肉

草原に生息する草原狼。

その鍛え込まれた胸肉。肉食獣な為匂いが強く、香草に浸けて匂い取りをしてから調理される事が多い。

――――――――――


――――――――――

草原狼の毛皮

草原に生息する草原狼。

その狼から剥ぎ取った毛皮。なめしていない為品質は低く、更に切り傷が多いため商品としての価値は低い。駆け出しの冒険者の衣類や防具の裏地として利用される事が多い。

――――――――――


 とりあえず大雑把なれど鑑定の結果この3つのアイテムが出来上がった。


 そして試しにインベントリへと収納してみると上手い事収納できる事が解った。

 

 とはいえこれ以上はさすがに俺の集中力が持たない。


 ゴブリンの解体も試してみたいが、人型の解体などやった事がないし若干の忌避感はある。


 町で解体できる場所があるのだからゴブリンはそこで解体してもらった方が良いだろう。


 残ったモンスターの死骸はどうしようもないので、インベントリから穴掘り用の剣先スコップを取り出し(これもタクから貰ったアイテムに入っていた)、地面を掘っていく。


 血抜きは同じ場所で行っていたので、穴を深く掘った後は血抜きで汚れた土をその穴へ、モンスターの死骸と共に入れていく。少しでも匂いを消してモンスターに掘り返されないためだ。


 ゲーム世界だからアンデッド化するかもしれないしな。


 全てのモンスターを入れ終わると、カンテラ用の油を撒いてマッチで火を付ける。(これもタクから貰った初心者用冒険セットと言うアイテムに入っていた)


 そうして火柱が上がるのを見つつ周囲に火の手が伸びないように見張る事にする。


 このゲームは現実世界と時間の流れが違うため、少しではあるが日照時間に差が出る。


 俺がログインしたのは正午に入ってからで、リアルだと3時間ほどが経過しているのだが、このゲームだとすでに8時間が経過していた。


 ログイン直後は朝9時のゲーム内時間だったため現在は午後5時を回り、徐々に日が暮れてきているのだ。


 キャンプファイヤーみたいに火が燃えているので今はまだ明るいが、このままだと次第に暗くなる。


 現実でもゲームでも、夜になれば生態系は激変する。


 少なくともこれ以上アイテムを持てない以上は長居するべきではないな。


 ありがたい事にそこまでモンスターの死骸も量がないので、次第に炎は弱くなり、焼けていた死骸は炭になった。


 血抜きも終わらせていたので燃焼も早かったのだろう。


 上から土をかぶせて完全に蓋をする。


 これでアンデッド化するなら徳の高いシスターでも連れてくるしかないだろう。出たとしてもスケルトンの類であろうが。


 とりあえず穴を掘っている間も燃やしている間もモンスターの接近は全くなかった。


 近場のモンスターを狩り尽くしたのかと思ったが、とりあえず町に戻ってから情報を整理する方がよさそうだ。


 周囲も暗くなり始め、町へと戻ろうと動き始めた俺の動きに追従する光がある事に気付いた。


 それは丸い二つの光で、草むらの中から静かにこちらを見つめていた。


 とっさに敵モンスターかと身構えるが、モンスターならすでにこちらへ飛びかかってきてもおかしくない。


 装備している太刀魚のレイピアを構えて注意深く鑑定スキルを発動させる。


―――――――――

銀狼シルバリーウルフ

レベル:16

状態:衰弱

草原に生息する草原狼。その中でも希少種と呼ばれるモンスター。

知能が高く、その性格は気高く誇り強い。群れを作らず単身で暮らしている。

モンスターは成長するにつれ進化していくのでこのモンスターもいずれは……

――――――――― 


 恐らく同一個体だと思われる(希少種って書いてあるし)が、最初のゴブリン襲撃の際、横から一匹のゴブリンを咥えて逃げたあの狼であろう。


 最初に見た時は鑑定をかける余裕はなかったが、今回は相手が動かなかったため鑑定に成功した。


 あれから狼とゴブリンを仕留めて3レベル上げる事ができたが、それでも目の前にいる狼は俺よりも5レベル高い格上のモンスターだ。


 しかも希少種と言う事はユニークモンスターと言う事だろう。

 ステータスは今まで戦闘した狼やゴブリンとは明らかに違うはずだ。


 状態に衰弱と書いてあるのでどうやら弱っているようだが、それが原因で狼はこちらを見ても動かないのだろうか?


 鑑定で表示されている衰弱を意識すると衰弱についての説明が表示された。


『衰弱』

 鉱物、レイス系を除くほとんどの生物に該当する状態異常。身体のいずこかに深い傷をもらう、もしくは著しく体力を消耗するなどした場合発症しやすい。衰弱中は全てのステータスが半分になり、他の状態異常にかかりやすくなる。傷口の手当てをするか万能薬の類で解除可能。解除後は一定時間ステータス低下が続く。


 つまりはモンスター、もしくはプレイヤーとの戦闘で傷を負った狼が傷を癒す為に隠れていたというわけか?


 さきほどゴブリンを襲ったのはきっと狩りで食事を調達できなかったためだろうか?


 気高いと書いてあるにも関わらず獲物の横取りをするのは、きっとこの狼にとっても屈辱的な事だったのであろうに。


 こちらとしては隠れていた銀狼に気付けていなかった時点で駄目だろうと思ったが、過ぎた事だし気にしない事にする。


「それにしても衰弱のバッドステータスは怖いな。俺の設定だと傷口が残るから余計にその効果が響いてくるな。逆に言えば毒とかの状態異常とは違って装備で似た事ができる可能性もあるわけだ」


 一人思考にふけるが、それよりも目の前の狼をどうしようか?


 おそらくステータスが下がっていたとしても俺じゃ負けるか?


 ギリで良い勝負になりそうな気もするが、ステータスの度合いがいかほどかわからないのに迂闊に行動できない。


 まぁ人助けならぬ狼助けでもして目の前の狼の好感度でも上げてみるか?


 先ほど解体した狼の肉とタクから貰ったアイテムの中にあったプレイヤー産の劣化万能薬を取り出して狼の傍まで近づいていく。


 こちらが近づくのに対して牙を鳴らして警戒する様子が見えるが、予想よりも消耗が激しいのか立ちあがる事ができないようだ。


 見れば側に落ちているのはあの時横から奪われたゴブリンの躯のようだ。


 戦って気付いたがゴブリンは肉と言う肉がほぼなく骨と皮にかろうじて肉が張り付いているような見た目だ。


 食べた所で栄養など微々たるものだろう。


 それでもそうしなければならないほど弱っていたのだとしたら状態は深刻なのかもしれない。


 警戒されているのは承知の上、ダメージ覚悟で目の前の銀狼の横に座って目の前に草原狼の肉を置く。


 共食いだが仕方がない。手元に食べ物は無いのだから我慢してもらうしかないのだ。


 そして銀狼へ万能薬を振りかける。


 飲ませても振りかけても回復系のアイテムは効果が変わらないのはゲームならではだろう。


 そこらへんはリアル指向の運営だとしても、ゲーム的な要素を残してくれていると考えている。


 目の前に置かれた肉に視線が移った隙をついて振りかけられた劣化万能薬は、例え『劣化』と書かれていても銀狼の衰弱の状態異常を打ち消して確かに効果を表した。


 不意にかけられた劣化万能薬の刺激に驚いたのか、一足飛びに後方へ飛び退いた銀狼だが、先ほどまで動けなかった身体が動くのに気づいたのか、自分の体を確かめるかのようにクルクルと回り始める。


 身体にかかった万能薬を舐めとるように毛並みを整えるとこちらへ向き直り一啼きする。


 先ほど喰いそびれた草原狼の肉をもう一度放って銀狼に渡すと、今度は回復用のポーションを取り出して栓を空ける。


 手頃な皿がないため、インベントリから小型のバックラーを取り出して裏返すとそこにポーションを注いでみる。


 底が浅いためすぐに満たされるが、それを持って再度銀狼の近くまで歩み寄っていく。


 この時点ですでに銀狼は草原狼の肉を食べ始めているのだが、こちらを時折見ては若干の警戒を見せているようなので先ほどとは違い少し距離をとる。


「ほら、人間と言っても俺は魂人種ソウルだからあれだが、回復用のポーションだ。お前達モンスターに効果があるかわからないがとりあえず飲んでみろ」


 鑑定で銀狼を見れば、状態異常の衰弱は消えて入るが恐らく失った体力は全快ではないだろう。


 どのゲームでもこういったユニークモンスターが出る時は大抵テイムできる条件があるはずだ。


 テイム関連の装備やアイテムがあるわけではないが、なんとなくモンスターとはいえ怪我した動物を無視する気は無い。


 別にレアだからとか言うわけでもない。他のモンスターは襲ってきたから倒したが、この銀狼には獲物は取られたが別段害があったわけではないのだ。


 銀狼はしばらくこちらを見ていたが、肉を食べ終えるとバックラーに入ったポーションを舐め始めた。


 なんとなく餌付けに成功した気分で銀狼を眺めていたが、ふと見れば周りはすでに暗く、ずいぶんとここで時間を取られていた事になる。


 敵と出逢わなかったのは運が良いだろう。


「さすがに町に戻らないといけないか。しかしこの銀狼を放ってはいけないしなぁ」


 銀狼はポーションを舐め終えたのかこちらをじっと見上げると、バックラーを咥えて近寄って来た。


「なんだ?おかわりか?」


 再度ポーションを取り出すと、銀狼は違うと首を振る。


 そして俺の足元にバックラーを置くと一啼きして歩きだした。


 それは先ほど俺が解体した木の方向。


 銀狼はその木の根元まで歩くと小さく吠える。


 すると、木の根元付近にある洞から3匹の子狼が飛び出してきた。

 

 3匹ともまだ生まれて間もない様でおぼつかない足取りで母親の声のする方へ歩いてゆく。


 銀狼は子狼の近くまで歩み寄ると静かに横たわり子狼たちへ授乳を始めた。


「子持ちの銀狼に衰弱。なるほど、御産の為に体力を使い果たしてたのか」


 きっと俺が解体場所としてこの木を選んだために御産で体力のない状態のまま子供たちを隠して機会を窺っていたのだろう。


 恐らく俺が子狼に気づけば不意打ちで、気づかなければそのまま見過ごしていたのだろう。


 すると俺の前にクエスト完了のアナウンスが流れた。


『EXクエスト:銀狼の御産クリア』

 草原の覇者である銀狼が産気づいている。子供達をモンスターの魔の手から救い、銀狼と子供達を守り抜け。

※クエスト完了時の銀狼のステータスにより報酬に変化あり。

 クリア報酬:銀狼の契約指輪


『銀狼の契約指輪』(譲渡不可)

銀狼の召喚:2時間 (再使用時間12時間 (再使用まであと0時間))

 EXクエスト報酬 銀狼と深き絆で結ばれた者に与えられる指輪。草原の覇者である銀狼を呼び出し共に闘う事ができる。

※装備者との絆の進行度により召喚時間及び再使用時間に変化有り。


 

 なんと、どうやら隠しクエストだったようだ。


 報酬は指輪だったが、クリア後の銀狼の状態によって差があるようだ。もしも衰弱で弱っている状態だったらどうなってたのだろう?


 なんとなくだが想像できるのでやめておいた。


 とりあえず中睦まじく子狼を舐めて綺麗にしている銀狼を見て満足することにした。


「まぁ達者にな。指輪はありがたく使わせてもらうよ」


 一声かけて銀狼の場所を去る。


 背後から聞こえてきた銀狼の遠吠えをバックに俺は町へと帰り宿屋へ直行。


 そのままベッドへ入りログアウトを選択。


 そうして第2の人生一日目は終了したのであった。









新年明けましておめでとうございます!


少し過ぎましたが今年初めての更新です。


今年も不定期運航ですが安心してください!続きますよ!



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