第4話 職業選択
続きです。
今回もチュートリアルの続きです。
通話が終わり軽く舌打ちする。
咲兎がこのゲームに興味があるのは知っていたし、おそらくいつかは始めるだろうと思っていたが予想よりも開始が早かった。ゲームに籠りっぱなしで現実の情報収集を疎かにしていたからな。
「ちょっと!通話終わったんなら早く手伝ってよ!タンクいないとこの辺りはきついんだって!」
最近パーティを組み始めたパートナーのアイが未だに騒いでいる。
他にも二人の男女が各々後衛でバフとエンチャントで凌いでいるが、そう長くは持たないであろう。
「悪い、またせたな。ソウルビート!キャッスル・オブ・ガード!」
大盾を構えた状態での二つの戦闘スキルを発動させて敵モンスターをこちら一点に集中させる。
ソウルビートは戦士職のプレイヤーがまず覚える敵のヘイトを上げるスキル。
キャッスル・オブ・ガードは自身の防御力を数分の間だけ3倍に上げる騎士職の高レベルプレイヤーが使えるスキル。
どちらもタンクである俺にうってつけなスキルで、すでにスキルレベルはMAXだ。
「ほら、ヘイトは稼いでるからとっとと凹れ!」
敵のヘイトが俺に集中し、集団で攻撃が加えられるが、キャッスル・オブ・ガードに加えてLRのレアリティをもつ課金大盾を超えられる攻撃力を持つモンスターはこの近辺にはボスクラスでないと居ないだろう。
こちらがガードをしている間にアイと他の後衛組二人も魔法攻撃に切り替えて援護を始める。
戦闘が終わったのはそれからわずか5分後であった。
「まったく。急に電話で戦闘抜けんだもん!ほんとに焦ったわ!」
戦闘後、セーフティエリアで回復を兼ねた小休止を取っていると、先ほどの戦闘中の通話の事でアイがグチグチ言ってきた。
「そう言ってやるなよ。タクだって好きで戦線離脱したわけじゃないんだから。お前だってこないだ戦闘中にコールで抜けたじゃないか?おあいこだよ」
一緒に戦闘をしていた後衛職の付与術師の男性、ヒナタがフォローをしてくれる。
「でも珍しい。タクのリアルでの知り合いなんて? 画面が恋人、コントローラーが友達とか言ってなかったかしら?」
さらりと俺に友達がいないんだろ?発言をしてきたもう一人の攻撃術師の女性、カナタがからかってくる。
双子の兄妹だけあって息が合っている所がむかつく。
「友達というかリアルでの同僚だよ。こないだこのゲーム始めるって話をしててな。チュート内容に装備を揃えろってのがあったろ? それで初期装備を流してくれってお願いってか脅迫だな」
タクの言葉にアイが納得いかないとばかりにつっかかる。
「なにそれ?せこ過ぎでしょそのプレイヤー。努力もせずに知り合いだからってアイテムせびるなんてプレイヤーとしてどうかと思うわ!」
言わんとしている事はわかるが、あった事もないプレイヤーにそこまで悪しざまな悪口を言うとは、ネチケットが守れていないな仕事しろ運営。
「言い過ぎだ。俺がこのゲームに入り浸ってるせいであいつに苦労がかかってるなら必要経費だ。それに初期装備の中の使い古しで良いと言っていたからな。ある程度の性能の装備は渡すが、それでも初級プレイヤーであることには変わりないし、それこそ初期のステ値で装備できるものなんてたかが知れてる。どうせ使わないならリサイクルみたいなもんさ」
タクの諌める言葉にアイは更にモノ言わんとするが、ヒナタに杖で頭をはたかれる。
「他人のプレイスタイルに口出しするな。それにタク自身も納得してるし俺らレベルのプレイヤーに初期装備なんて倉庫の肥しにしかならん。リサイクルできるならそれでいいじゃないか。それともなにか?このゲームの主旨を忘れたわけじゃないよな?」
一重に第2の人生を歩むのをコンセプトのゲームに、自分の主義主張を押し付ける気か?というヒナタの言葉にアイは口をつぐんでしまう。
「それで?そのプレイヤーさんとはいつアイテムを渡すのかしら?」
カナタの言葉に「3時間後って話をしたから今だとあと2時間ぐらいだな。一回ホームでアイテム取りに行くから大体1時間半後には一旦パーティ抜けるわ」
タクの言葉に皆が頷く。正確には二人とそれに押さえつけられる形で一人が頷かされていたが。
「そうだ。それなら俺の持っている初級装備も渡していいぞ。誰かを誘うでもないし、持っていても正直邪魔だしな。売っても大した価値があるわけじゃないし」
ヒナタの言葉に、カナタも頷いて
「なら私のも差し上げますね。工作系スキルのレベル上げに作ったものなので大した効果もないですし、鋳潰して素材に変えるでもよいでしょうから」
そして二人はアイを正確には『お前はどうする?』という眼差しで見つめる。
「私はレベル上がるごとに装備は下取りして買い換えてたからお古とかないし。ていうか私個人としてはそういうのなんか嫌だし!」
アイの言葉に温かい視線を向けながら他の三人は笑いあう。
「別に気にしちゃいねぇよ? それがお前のスタイルならだれも文句は言わねぇし言わせねぇから。ただ自分の価値観を他人に押し付けるのだけはやめるんだな。それで見もしねえ他人の悪口なら特にだ。あくまでゲームで、それでもこの世界は第2の人生なんだ。変な事でケチ付ける必要もないだろ?」
タクの言葉に真っ赤になりながらも小さくうなずくアイにそれを見て笑う双子。
そうして時間は過ぎてタクはヒナタとカナタから必要ないと貰った装備を、アイからは同じゲームの先輩としていらない素材アイテムを引き取って、始まりの町にある噴水広場へと足を運んだ。
「広場が騒がしいな?なにかイベントでもやってるのか?」
人ごみでごった返している噴水広場は珍しい。
野次馬根性で最前列までねじ込んできたタクだが、そこでタクの見たものは複数のプレイヤー相手に大立ち回りを演じている白髪に赤目のプレイヤーの姿だった。
時はタクとの通話終了まで遡る。
露店の冷やかし兼、新規に出現したクエストを達成すべく行動を開始する。
最初のログイン場所だった噴水広場までは地図を表示させていれば迷わず行ける。約束の時間まで結構あるので始まりの町で商売をしている他のプレイヤーの露店を見て回るとするか。
始めて噴水広場にログインした時、そのグラフィックの繊細さとあまりの作り込みに言葉を失ってしまったが、その時に広場のあちこちに露店が立っていたのを覚えている。
ちなみに新規に出現したクエストにはこんなモノがあった
『職業を決めよう』
『一回戦闘を行ってみよう※戦闘の形式、勝敗は関係ありません』
『採取をやってみよう※種類は問いません(採取数:00)』
『何か作ってみよう』
『戦闘スキルを覚えよう』
『フレンド登録をしてみよう』
他にもいくつか出ているが、簡単そうなのはこれくらいのものだろう。
戦闘や採取は町の外へ出れば体験できるし、戦闘スキルとフレンド登録も谷がいれば簡単にクリアできるはずだ。
俺よりもこのゲーム長いんだからこの辺りのチュートリアルは全て済ませているはずだし。
とりあえず待っている間に露店のアイテム全てを鑑定にかけていこう。
「おっさん。この食い物もアイテムなのか?」
手始めにどう見ても焼き鳥としか思えない串焼きを売りさばいているおっさんに声をかけてみる。
「んぅ?お前さん初期装備ってことは新顔か。だとすればRPGの王道である町での聞き込みといったところか?」
目の前のおっさんもゲーム好きのようで色々と情報がもらえた。
「さすがおっさん、ゲームの醍醐味をわかってるな。情報を与えて歩かせてこそゲームだよな。謎解きとスリルと冒険と。せっかくの第2の人生なんだからできない事をやらなくちゃな!」
二人でひとしきり笑いあい、おっさんが選別にくれた串焼きを鑑定してみる。
『クックロビンの串焼き』
始まりの町周辺に生息する野鳥クックロビンの肉を調理した串焼き。
食べる事で満腹感を得る事ができる。HPの回復効果がありタレが利いていてとてもおいしい。調理工程が複雑なほど難易度が上がるが、味が繊細かつ美味になる。
基礎値:HP回復量40 10分間敏捷値+3
うわぁ、支援効果付きだ。始まりの町で売るものではないのでは?
「これ支援効果付いてますけどおっさん明らかに高レベルの生産者か冒険者でしょう?」
サキトの言葉におっさんは首をかしげる。
「生産職は確かに少ないが冒険者は職業じゃないぞ?」
おっさんは冒険者と職業の違いを教えてくれた。
「冒険者は役職というよりもそういう設定だな。本でもよくあるだろ?なんとかギルドでチーム組んでシーフとかタンクとかアタッカーとか役割あるだろ?そのシーフとかの役割をこのゲームじゃジョブと呼ぶ。よくある戦士や弓兵、魔法使いに騎士とかいろいろある。まだチュートリアルの最初の方だろうから冒険者ギルドで装備を整えるか戦闘をやってみろとかそこらへんか?」
的確にクエストの内容を当てられた。
「最初のクエストは皆同じだからな。めんどくさがって町の外へ出る前でよかったと思うべきだな」
なんでもこのゲーム内でも痛いという感覚は存在するようで、斬られたり刺されたりしたら針で刺されたくらい、打撃でも拳骨程度のダメージらしい。もっとも痛覚設定をオフにしていた場合は下手したらガチの痛みを味わうことになるかもしれないと言われた。
(やべーな。痛覚設定も確かオフってたな?)
背中に流れる冷や汗が割とリアルだ。現実でも流れてるのではないだろうか?
「まぁあれだ。初期の職業はこの噴水広場の反対。冒険者ギルドのちょうど反対側にある教会で受ける事ができる。まずは職業を決めてからもう一度ここまで来るといい。色々と情報をくれてやる。これが俺のフレンドカードだ。」
そういっておっさんは手元から一枚の名刺を出現させるとこちらへとよこしてきた。
「これがフレンドカード。交換することでフレンド登録が完了する。メニューにある自分のギルドカードを選択してみな。そこにフレンドカードの項目があるだろ?」
言われるがままに選択してフレンドカードを出現させる。
それをおっさんに渡すとまたもやクエスト達成になったので¥2000とレベルが一つ上がった。
今回はMNDとDEFに割り振られたので手動でAGLに割り振る。
―――――――――ステータス―――――――――
名前:サキト 性別:男
種族:魂人種 Lv:3 スキルポイント:5→10
HP(体力):17→18 MP(魔力):21→23
STR(力):6(+2)
MND(精神力):15→16(+0)
DEF(防御力):5→6(+2)
AGL(敏捷):6→7(+0)
HIT(集中力):6(+0)
LUK(運):10(+0)
スキル
『スキル補正EX』『鑑定』『空き』『空き』
『空き』『空き』『空き』『空き』『空き』
所持金¥6000
―――――――――――――――――――――――
おっさん(フレンドカードにはクラン名:剛腕キング クランマスター:キングス・アームと書いてある)はどうやら剛腕キングという名のクランのマスターらしい。
こちらのレベルアップに気付いたのかステ振りが終わるまで待っていてくれたようで、フレンドカードの突っ込みを期待していたようだ。
「おっさんってどっちの名前で呼べばいいの?キング?アーム?」
おそらくクランの事についての質問を期待していたのか少しがっかりしていたようだが「キングでもおっさんでも好きに呼べ。呼び名にこだわりがあるわけじゃないからな」と言ってくれた。
「わかってるよ。クランについて聞いてほしかったんだろ?職業先に決めてくるからそれから教えてくれよ?」
「わかった。サキトでいいかな?今日は生産の日だからずっとここにいる。終わったら来い」
おっさんに手を振り職業を決める為に教会があるという場所へ走り出す。
確かに外から見た外見は教会。結婚式とかしてそうな作りのおごそかな佇まいを感じさせる作りをしていたが。
「ハロワじゃねぇか!」
思わず口をついて出てしまうほど中身は期待を裏切る構造をしていた。
「どちらかというと冒険者ギルドの方がそういう造りのがしっくりくると思うのだが?」
なにか世界観が違うと受付の人から渡された番号札を持ちながら独り言をつぶやく。
やがて番号が呼ばれて個室へとはいっていくと、そこにはスーツを着た職員ではなく教会らしくシスター姿の猫耳獣人がいた。
「ようこそいらっしゃいました。今日はどのような御予定で?」
対応してくれたシスターは猫耳をピクピクさせながらにこやかに話しかけてくる。
「職業をここで決められると聞いてきたんですけど?」
「はい、可能ですよ」とシスターは頷き、一冊の本を取り出した。
「こちらが魂人種であるあなたの現在就く事ができる職業になります。レベル、スキル、その他の要因により今後転職する事があれば選択肢が増える事もありますのでこの中の職業はあなたの可能性の一端としてお考えください」
渡された本を開くとメニュー画面が立ち上がり、本の内容が表示される。
「なになに?MNDとMPに補正値があるだけあって魔法系技能の職業が多いな。スキル補正EXのおかげか生産職も多い。鑑定もあるし商人系の職業もあると。近接戦闘系の職業はさすがに厳しいか。LUKのおかげかギャンブラーとか職業じゃないだろ?」
しばらく職業一覧を吟味していたが、正直言ってあまり面白そうな職業は存在しなかった。
シスターもメニューを閉じた俺の顔色から察したらしく。
「あまり気に入った職業がなかったようですね?最初に表記される職業の中に適性がある冒険者さんの方が珍しいんですけど」
と慰めにもならないフォローが入る。
でもそういう人は妥協して職業に就くのだろうか?
「わりとそういった方々も多いのですけど、中には主神に願い職業を与えられる方々も多いのです。主神に職業を選んでもらうとその人の適性に関係なくその職業に就くことも可能ですので」
つまりはランダムで職業を選択させる事ができると。
「ご自分で選択されたからと納得していただいてからやられるのであって、何かあっても自己責任でよろしければ」
歯切れの悪い感じがあるが、まぁ楽しめるならこういった博打的要素も確かめるべきではあるか。
「じゃあその神様に選択してもらうことはできますか?」
サキトの言葉にシスターは頷いて一枚の契約書を取り出した。
「先ほども申しましたが気まぐれな神の為、ご自分で選択した事を証明していただきたく書面にて確認作業を行っております。後々言われてもこちらとしてもどうする事も出来ないので」
書面には『私は神に職業の選択を依頼し、その結果に対して不平不満を持たない事を誓います』と書かれている。署名と日付は今日のリアルの日付とリンクしているから名前はキャラ名で。
「できました。ちなみに今まで神に依頼した結果決まった職業とかって解りますか?参考までに」
神様というか高機能AIか運営自身が選んでいる可能性があるが、どんな職業が選ばれるのか知りたくはある。
「神の気まぐれなので余り参考にはならないかもしれませんが。こないだの獣人の方は吟遊詩人。つい最近だとエルフの方が重騎兵という職業に就かれました」
逆じゃねぇのその職業選択!と突っ込みたくなるのを抑えて「なるほどいろんな職業があるのですね?」とだけ答えておく。
シスターに連れられてやってきた部屋は礼拝堂の近くにある一室。普通は懺悔室とか呼ばれている部屋ではなかろうか?
その中で俺は今、一人で真摯に祈りをささげている。
正確には目の前に再びメニューウインドウが現れメッセージが再生されていた。
『やぁ久しぶり。それとも先ほど振りかな?咲兎君。君がこれを見ているという事は神に対し職業選択を依頼したという形になるわけだが、ご存じのとおりこれはゲームだ。数奇的アルゴリズムによる規則性を見出し攻略の糸口として活用しようという研究肌のプレイヤーが多くてね。予め断っておくが高機能AIがこの世界における神だという考えは棄ててもらった方がいい。そして我々もまた神ではない。それを忘れないでほしい。もしもそういった意思を持たずにこの場にいるならば私の話は藪蛇だったのかもしれない。これだけは覚えてほしい。この世界はゲームでもう一つの現実なのだと』
画面の向こうでは椅子に座った三雲 薫が話していた。
出たがりだなこの人。
動画の再生が終わり、次に現れたのは教会に飾ってあったのと同じ複数ある女神像の一体。
「はじめまして。私はこの世界の神の一柱。名をアリアンベルと申します。このたびは私があなたの職業を決めさせていただきます」
おごそかな雰囲気の中に神聖さを兼ね揃えるその姿についつい見入ってしまうが、次の瞬間にはそんな事も忘れて叫んでしまう事になる。
アリアンベルという女神は二つのサイコロを取り出した。
もう片方の手には湯のみがありいつの間にか手に持っていたサイコロが指に挟まれている。
「入ります」
静かにそう告げて湯のみにサイコロを投げ込もうとしたところで慌ててまったをかける。
「ちょっとまて!」
雰囲気に流されて見過ごすところだったがもしかしてそれで俺の職業決めようとか考えてないよな?
「丁半知らないんですか?最近はギャンブル系の神がこれで職業を決めると面白いからといって神々の間で流行っているんですけど?」
あたかも何をいまさらといった感じの博打狂いのアリアンベル。
「よし落ち着こう。神々の間で博打で職業決めるのが流行っているからといって君までそれに染まる事は無いだろう。普段は何で職業を決めていたんだ?」
仮にも女神なのだからもう少しおしとやかな。花占いとかあるだろう!
「私は職業を決める際はその人のステータスで一番高いステータスの逆の適性職をある程度見つくろってランダムで選択してあげています。それがその人にとって新たな世界を開くきっかけになるかと思って。今回のサイコロの内容もその職の中から選ぶ予定でした」
あ~。さっきの獣人とエルフの職業決めたのこの女神だわ。
「よしあんたがどっちを選んでもろくな事にならないのはわかった。せめて俺にどんな職が来る可能性があるのか教えてくれ。ランダムとはいってもあんたの言いようだと俺の就ける職業にも選択肢があって完全なランダムではない事が解った。丁半博打は出さなくていい。あんたの言う逆適正の職業を教えてくれ。そこから自分で選んで決めさせてもらう」
なおもサイコロを転がそうとするのを制止しつつ、しぶしぶと言った感じでアリアンベルは逆適性の職業をメニューで差し出してくる。
「本当なら私に全権委ねられているはずなんですけど…、しかも私女神なんですけど…」
なにやら言いたい事があるようだが俺は俺で逆適性の職業を見るので忙しい。
「完全に近接重量系のガチ勢の職業ばかりじゃねえか…装備条件がシビアすぎて裸族でいけと?無茶すぎる」
これランダムになったとしても、どの職も無理を通り越して自殺もんだ。キャラクター作成しなおさないといけなくなるぞ。
「でもでも。その最後の職業は逆適性でもだれでもなれる職ですよ?」
アリアンベル言われて最後の欄に記載されている職業に目を通す。
『無職』
何でもできる代わりに全てにおいて一番になれない。全てが平均的な能力しかない。どの種族でもなれる代わりになぜか周囲からの目は冷たい。
まぁそうだよな。ある意味このゲームをやる上で好きでこの職選ぶ奴はいないよな。
「じゃぁこの無職で頼む」
少なくとも俺は選ぶがね。
「うわ!ホントに選ぶのこれで良いんですか?もう少し筋肉に自重を置けば最低でもその上にあるマッスルビルダーとかなれますよ?」
嫌だわそんな職!?あのおっさんのクランに入れとでも言うのかよ!?
「断固拒否する!でこの無職って何か特別な事ができるのか?」
「始めてですよ。第2の人生で無職とか選ぶ人。マジ引くわ」
「おいこの博打狂い。素が出てるぞ。女神としての威厳を保て」
アリアンベルに無職の職(職業かこれ?)特性を教えてもらうと、全ての装備や魔法に制限がない代わりに専門の職業しか覚えられない上級のスキルや技が覚えられない。職業に特化したステータスに補正がかかるがそれもない。全てにおいて平凡で応用が利くが頭打ちが見えている職業。それがアリアンベルの評価する無職の特徴だ。
「この職も神々の間では不評で今度の神様会議で廃止が決定している職業なんです。ちなみに神様会議は今日これからなんですけど(笑)」
うわ~この神様俺を口実に会議さぼってるんじゃないのか?
「ちがいます~。神様にとってこの世界で暮らす人々を優先することが義務付けられているからこれは正しいんです!」
しかしこの無職。魂人種である俺にしたらとても有利に働く職業だ。
スキル補正EXがあればどんな職業のスキルも魔法もある程度のレベルまでならすぐに上がる。
仮に頭打ちになったらそこから次の職業を探せばいいし、何よりこの世界で色々やるのに特化型は問題があると思って魂人種を選択したのだ。
「今回は逆にこの職を見つけられて幸運だった。しかも俺で最後なんだろこの職業?」
「はいそうですよ。今回の議題が廃止する職業と不人気職の待遇改善でしたから。ちなみに戦闘職でない職業の人は軒並み不人気職のレッテル貼られてますね。加工系の職業からは大きな不満はまだありませんが、生産系の職業からはあまり良い話は届きません。草花が一日で育つわけでもなし、命の営みが一朝一夕でなりえるわけでもないのは人の身で解りえているはずなのに、嘆かわしい事です」
アリアンベルの言葉は俺達プレイヤー側からしたらどうにかしてほしいと思う内容でもある。
しかし、最初にこう言われていた。
『この世界は第2の人生である』
神々やこの世界に元々いた人たちにとっては俺達外から来たプレイヤーは生き急いでいるようにも感じられるのだろう。
「まぁ、どちらにせよ新しい人生だってわかって過ごしているんだ。アリアンベル、いや女神さま。俺はこの職でやれるとこまでやってくよ。のんびりとな」
サキトの言葉にアリアンベルは小さくほほ笑むとそのまま姿が消えていく。
「がんばってください。何にもなれず、何にでもなれる無限の可能性をあなたは得たのです。この先の人生に幸多からん事を……」
最後のかっこいいセリフを吐いてアリアンベルという名の女神は懺悔室から消えていった。
前作からここまで読んでくれた方はありがとうございます。
そうでない方もありがとうございます。
ゲームのチュートリアルって一々やるのめんどくさくないですか?
前作プレイしてるから変更された点だけ教えてもらえればとか考えちゃう自分はきっと後悔する人種なのでしょうね…。
だって大抵チュートリアル終わらせるとアイテムもらえるんだもの。
がんばって更新がんばりますの応援よろしくお願いします。
今日は前作も更新してます。そちらもぜひお読みください。
誤字脱字ありましたら発見次第修正入れていきます。




