第2話 キャラクリエイト
初回なので3話連続投稿
2話目です
「ようこそ!この世界はあなたにとっての第2の人生となる世界です!」
暗かった視界が徐々に明るくなり、ゲームのロゴと共に一人の女性が現れる。
ゲームのキャラ作成の時にだけ会う事ができるナビゲーションAIだ。
「はじめに、あなたのお名前を確認させていただきます。お名前は結城 咲兎様ご本人でよろしかったでしょうか?」
顔写真付きで表示される名前の情報は書類審査を通った人に送られてくるゲームにあらかじめインストールされている個人情報の確認となる。そもそも違う内容の人の場合はゲーム開始時に目の前のナビゲーションAIが判別して弾く仕様らしい。
問題ないので「まちがいない」と答えて先へと進む。
「本人の確認のため今から3つの質問をさせてもらいます。」
整形で成りすましの可能性もあるのでここでクリアできてもこのように書類作成時に記入した質問事項で再度確認がある。これも個人情報保護法の為だ。
覚えている内容を答えて次へと進む。
「最後に脳波を測定します。健康に障害のあると判断された場合はいったん使用を中止し、医師の診察を受けるようにお願いします。」
最後に脳波測定でゲーム用に個人データとして脳波の情報も登録しておくことにより、次回再開時は脳波を読み取り自動ログインが可能になる。
これなら脳みそでも取り換えない限り脳波の波形パターンが似ている人間などいないだろうしある意味安心のセキュリティともいえる。
個人の脳波登録も終わり、ようやくキャラ作成に移行できる。
「ここでは『2LO』の世界で生活するためのキャラクターデータの作成に入ります。個人のデータから復元されたあなたの絵姿を表示しますので、変更したい個所を選択してください。」
書類作成時に計測した本人のデータを基に作成された俺と寸分たがわないキャラデータが眼前に現れ、手元には変更可能箇所と変更できる内容が細かく表示されている。
基本的な肉体構造はいじれないので、最初の項目である種族の欄を選択。
一覧にズラッと種類の一覧が表示される。
知っているのから知らないのまで多種多様に存在している。
残念ながら翼人種や蛇人種など、人体構造に無理のある種族はないようだ。
同じ意味合いで天使とか悪魔などの背中に羽の生えている種族も同様に存在しない。
最初は素早さに補正のかかると聞いていたエルフにしようかと思ったが、一覧内のある種族をみて気持ちが変わった。
『魂人種』
全体的なステータスは低いがゲーム内におけるスキル取得及びスキルの経験値に補正値がつく。
また種族固有のスキルもあり、クセは強いが慣れれば強い。
ゲーム内での生活が現実と同じつくりになっているならこのスキル補正はありがたい。
そもそもいろんな事をやってみてこれからのゲームの参考にするのだ。この種族ならそこまで困ることなどないだろう。
種族が決定するとその種族に沿った容姿に変化するみたいなのだが、見た限り肉体に変化は見られない。
魂とか言ってるくらいだからベースとなる肉体は人間なのかな?
種族が決まるとランダムに選ばれたスキルがセットされた。
説明によるとスキルスロットは全部で十個までセットできるようで、初期で選ばれるスキルは3つ。それがランダムに選ばれ自動でスキルスロットにセットされる仕組みらしい。
それらのスキルはパッシブとアクティブ、つまり常時発動型と任意発動型の2種類があり、それぞれに熟練度が設定されていて使用するごとにレベルが上がりスキルの効果も高くなる。戦闘系と魔法系のスキルも同じ枠らしいがそれらにはまた別に装備武器ごとのスキルツリーというものがあるらしい。
「えっとセットされたスキルは『スキル補正EX』と『鑑定』ってあれ?2つしかないぞ?」
スキルに説明文があったので確認してみる。
『スキル補正EX』
ごく稀に魂人種のみが宿すスキル。スキルスロットを2つ使用する代わりに補正値の上昇率が通常よりも高くなる。これは装備者の技量により変動する。」
『鑑定』LV:1
調べたいモノに視点を合わせる事でそのモノの詳細が鑑定できるようになる。すでに鑑定済みのアイテムを鑑定してもレベルは上がらない。所持者の技量により鑑定結果に補正がかかる。
なるほど。スキル補正EXのスキルがスロット枠を一つ多めに消費していたのか。
よくよく見れば、このスキルは魂人種の固有スキルの中でもレアスキルではなかろうか?
それにゲームでは必須となる鑑定スキル。これで異世界に転生されてもやっていけるな!
まぁこのゲーム自体が異世界モノなのだが。
キャラ作成も無事に終わり、俺の容姿やゲーム内でのキャラデータはこんな感じだ。
―――――――――ステータス―――――――――
名前:サキト 性別:男
種族:魂人種 Lv:1
HP(体力):15 MP(魔力):20
STR(力)(攻撃力):5(+2)
MND(精神力):15(+0)
DEF(防御力):5(+2)
AGL(敏捷):5(+0)
HIT(集中力):5(+0)
LUK(運):10(+0)
スキル
『スキル補正EX』『鑑定LV1』『空き』『空き』
『空き』『空き』『空き』『空き』『空き』
―――――――――――――――――――――――
これが俺のステータス。
キャラクターの容姿としては元々の容姿はそのままに髪の毛を少し伸ばして白髪に、眼の色を赤くしてみた。名前にウサギが入っているからという安直な考えだが別にゲームを楽しめればいいので容姿自体は問題ない。
服装を真っ黒にして牙でも生やせば吸血鬼みたいだがコスプレ趣味もないしな。
魂人種は初期のステータスが低いと説明があったが、確かにこれは酷いステータスだな。
魂だけあってMPとMNDは高いが他は恐らく他の種族よりも下であろう。
LUKが10なのはスキル補正EXを取ったリアルのLUKが反映されているからだろうか?
ともかく、これで自分のキャラクターも作成終わったしゲームを始められるだろう。
「最後に開発者スタッフよりメッセージが送られています」
?なんぞそれ?
ナビゲーションAIの差し出した手からこちらへ向けてモニターが浮かび上がり動画が再生される。
画面に映っているのはこのゲームの開発責任者である『三雲 薫』の姿だ。以前ゲームショーの発表会場で見た事がある。
「はじめまして。そしてこのゲームをプレイしてくれてありがとう。これはゲームプレイヤー全員に送らせてもらっている感謝のメッセージの様なものだと理解してほしい。さて、その中でも結城君。君の様な職種の人達は割と多くこの世界に入りプレイをしている。しかしそれは開発者からの視点で見たプレイであり、この世界の本質をプレイしていないと言わせてもらう。
私は全てのプレイヤーに平等にこの世界を楽しんでもらいたい。
つまりは君も他の開発者達と同じ目線ではなく一人の2LOプレイヤーとして世界を満喫してほしいということだ。
とはいってもそもそもそういう考えを持たずにプレイするつもりだったのならこの話は藪蛇だったかもしれない。だが覚えてほしい。
この世界は遊びではあるがもう一つの人生なのだ。
君のセカンドライフがより良い人生になる事を祈っているよ。
この世界に幸福を、そして君と言う新たなプレイヤーに祝福を」
動画はそれで終わり、ナビゲーションAIは手を戻すとこちらへと向き合う。
「以上でメッセージは終了します。ではこれより始まりの町への転送を開始します。開始後はチュートリアルが開始されますのでナビの通りに行動されますとよろしいでしょう。チュートリアルが不要の方は飛ばしていただいても結構ですが、初めての方はこの世界を知るためにもぜひお受け下さい」
ナビゲーションAIは両手を広げ、告げる。
「転送魔方陣起動。始まりの町へ転送開始します。あなたの第2の人生に幸多からん事を」
周囲が白く光りそして治まった時、俺は噴水広場の前に立っていた。
もう一話投稿します。
ようやくゲーム内です!