第19話 PTプレイ?
ハーレムヒャッホイな訳はありません。
通常運転ですとも
久方振りの編集レベルの表記ミスに気づき修正
さて、やってきました最初の草原。つい先日俺もこの草原で死闘※(餌を吊るして食べにきたモンスターを狩る簡単な?お仕事のこと)を繰り広げたりモフモフを手に入れたりしたなぁ。
「そういえば3人とも今のレベルは?俺はLv:17になったところだ」
アリアドネの森で、昆虫素材の他に多量の経験値も得ることができた。
昆虫系は経験値が低いのが大抵のゲームで決まっているが、状態異常系の攻撃を多用するだけあってわりかし中級者向けのエリアだったと言える。
実際、サキトのレベルよりも僅かに高く数も多かったため、得られた経験値は破格であった。
草原でレベルを上げようとすれば最低でも2日は周回が必要であっただろう美味しさである。
「私達2人はLv:11です」
「ふふん。私はLv:9です!」
2人は固定でPt組んでいるみたいだからレベルは均等か。
「リンナは解体所で解体しかしていないからか?ジョブ関連の行動でレベルって上がらないのか?」
レベル9位なら街中のチュートリアルとか進めていればすぐになりそうな気がするんだが。
「ふぇ?解体師としてのジョブレベルは14ですけど、キャラとしてのレベルは9なんですぅ。」
なん…だと?
「キャラクターの種族レベルの下に職業ってないですか?職業レベルはサキトさんの持ってきたモンスターの解体ですごい上がったんですけど、種族レベルはチュートリアルかクエスト、もしくは戦闘をこなさないと上がらないんですぅ。」
ちょっと待って!なにそれ聞いてないんだけど?
「ちょっまっ!落ち着けステイ、そうだ落ち着いて素数を数えるんだ」
大丈夫俺はクールだ。答えだってはっきりしてるだろう?彼女たちには合って俺にはないもの。
「そうだな。俺『無職』だもんな…。」
小さく呟いたつもりだったが、3人の耳には届いたようで
アキ:「えっと?それってリアル?ゲームの話よね?」
シノ:「アハハ、まぁ転職すれば良いだけですから」
リンナ:「ふぇ、それであの数狩ってるんですか?」
三者三様の驚き方だが、リンナの言う通り、『無職』でもPSがあれば何とかできてしまうのがこのゲームである。
ただのゲーム会社員ではないのだよ!とサキトは心の中で笑ってみる。
「まぁ、いいか。リンナのレベル上げを当面の目標に行くで良いのか?」
サキトの言葉に2人は頷き、リンナは「お願いしますぅ」と頭を下げる。
であるならば、こないだと同じ吊るして隠れてタコなグールで行こうかな?もしかするとあの狼いるかも知れないし。
装備している銀狼の契約指輪を見て指輪を入手した先にいた小さな仔狼が隠れていた木の場所まで行こうと提案してみる。
「前に狩していた時にちょうどいい場所見つけたからそこにしよう。」
クエストの内容は伝えず、狩場所のみ提案して移動を開始する。
見晴らしのいい草原だけあってどこに敵がいるのか割りかしわかりやすい。と言うよりも草原の中においてアクティブ系のモンスターはゴブリンと狼くらいなのでこちらに走ってくるモンスターは軒並み敵と考えていい。
「次は狼が二体、一体は遊んどくからもう一体は任せた。」
ナニあれ?ホントあり得ないんだけど…
目の前の男性は、赤い竹槍を片手に担ぎながら空いてる方の手で小石を投げて一体の注意を惹きつける。
「よーしよし、おいでおいで〜」
牙を剥き出しで飛びかかってくるのを槍で傷つけないように上手くいなして弄ぶ。
アキは狼と戯れているサキトを横目にもう一体の狼に攻撃を浴びせる。
実は今回、サキト自身はソロで行動している。レベル差による制限が厳しいこのゲームは経験値取得に大きく制限が発生するため、泣く泣く1人行動をせざるをえないのだ。
無論、最初はPTを組んでゴブリンを狩ったのだが、ダメージ総量的にサキトが経験値のほとんどを奪ってしまい、攻撃すら許されなくなった。
なので現在では石突を上手く使って狼をダメージを与えずにいなし続ける仕事をする羽目になっている。
草原のモンスターなら各個に相手取れるレベル帯ではあるものの、リンナは戦闘が壊滅的なため、慣れさせる意味も込めて一体ずつ戦うようにしている。
アキは狼に矢を放ち牽制する。
彼女の職業は狩人。種族はハーフエルフである。アリアンデルの被害者ではない。
タイミングを同じくして今度はシノが避けるであろう方向に向かって魔法を放つ。
「ツリーバインド!」
可愛らしい声色とともに発動した魔法はその声と真逆にのたうつ触手のように草枝を束ねて狼を縛り付ける。
「何度見ても同人ね。エのつく方の」
好きでこんな魔法を買ったんじゃないのに。とシノは不貞腐れるが、効果は確かで、完全に狼の挙動を封じ込めている。
「トドメは私が!どりゃーデスぅ!」
リンナが解体用のナイフを狼の首に差し込むと、その挙動がビクリと震えて大人しくなる。
これも解体師の職業の一端である。罠にかかったモンスターに対して、致命箇所(クリティカル部位)への一撃を解体用のナイフで行うことで高確率での即死効果及び、素材の解体にボーナスが入ると言うものだ。
無論、リンナ自身戦闘ができない(壊滅的に下手と言う意味で)以上PTプレイ必須の上、解体に関しての制限項目を解除している必要があるが、その恩恵は計り知れない。
リンナが狼を倒し終えたのを確認して、サキトは追加とばかりに飛びかかる狼の前足を掴み上げると「剛腕」、「投擲」のスキルを使って3人へと投げつける。
「釣りはいらねぇ。とっときな!」
憐れ、3人娘は勢いよく跳ねながら飛んできた狼に驚き、狼もまた投げられ叩きつけられたダメージで死亡。調子に乗っていたサキトはアキから怒られる羽目になった。
「まさか、あの程度で死ぬとはさすが序盤のエリア」
見晴らしの良い草原エリアで正座して怒られた後、先頭を進むサキト、プリプリとしながらその後ろを歩く3人娘。
さすがにあれから出現したゴブリンをヌンチャクのように振り回したりなどといった奇行は控えて大人しく経験値稼ぎに付き合っている。
そうしていると、サキトが「銀狼の契約指輪」を入手した付近にたどり着いた。
「着いた。ここで一体適当に狩った後その死体を木に吊るして血抜きをする。その血の匂いに釣られて寄って来たモンスターを狩るだけの簡単な仕事よ。」
サキトはインベントリから取り出した草原狼をリンナに渡しながら自分自身もモンスターを木に吊るして皮を剥ぎ始める。リンナも遅れまじと、解体ナイフをモンスターにナイフを突き立て解体作業を開始する。
制限項目を外していないアキとシノの2人には辺り一面モザイクの描写に切り替わっていることが、逆に2人の行っている行動のリアルさを感じさせる要因になっていた。
匂いや感触、いずれも現実よりも抑えられているはずだが、目の前の光景がまるで五感を敏感にさせているかのように血生臭く、凄惨な現場に立っているような感覚を2人に錯覚させる。
「何だか同じゲームなのに全然別のゲームやっている様な感覚あるよね?」
2人で同じ光景を見ながら最初に口を開いたのはシノであった。
「制限項目って一度外したら再設定できないんしょ?下手に外してトラウマ貰ったらこのゲームできなくなるし?せっかく高い金払ってシノと遊べる環境手に入れたのにさ。っと!」
血の匂いに敵が釣られて来たのか草むらが小さく揺れている。それに気づいて2人は即座に武器を構えて草むらを注視する。
「このゲームってホントに何なんだろうね?第2の人生って言うキャッチフレーズはこのクオリティ見ればわかるけど、こんなにリアルな描写いる?」
草木の揺れる葉音に自分たちの出す衣擦れの音、風に乗せられて届く獣の荒い息遣い。
「世間では向こう数十年先のゲームを取って来たって言うレベルらしいよ?ゲームの各種物理演算に第5世代ウルコン(ウルトラコンピューター)を使用してるらしいし」
リンナ1体解体し終える間に襲って来たのはゴブリン2体に草原狼が3体。バラバラに襲って来たおかげで常に2人で対処することができたのが幸運だった。
「なぜか解体師の私よりもサキトさんの方が解体早いのは腑に落ちませんが…」
見ればサキトの傍には解体が終わった草原狼が2体分置かれている。
「んー、まぁ慣れじゃねぇの?血ぃや臓物見ていちいち喚いてないしな?」
解体の終わった草原狼の皮をインベントリに格納、切り分けた肉は入れずに出したまま、抜き出した内臓はいつの間にか掘られていた穴に埋めていく。
あまりにも自然能動さすぎて3人娘もどこから突っ込めば良いのか掴めずにいた。
「もしかして狩猟業の方ですか?」
シノからの問いかけに「いや別に?」と埋めた土を鳴らすように足で踏みながらサキトはのんびりと返す。
「別に『ヤ』のつく自由業でもねえぞサキ?」
サキは先んじて言われたセリフに言葉を詰めるが、じゃあ一体何なんだよと口を尖らせる。
「どっからどう見てもプログラマーだろうが?インテリっぽいだろ俺?」
「「「それだけは違う!!」」」
なぜだ?解せん…
日付は開きましたがメリクリデス。
あけおめに投稿できたら嬉しいな(白▲白)ノシ