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第13話 初めての鍛冶(せいれん編)

お久しぶりです。


ようやく鍛冶ギルドへ入る事ができたサキトはおっさんに鍛冶ギルドを案内される。

 初めて足を踏み入れた鍛冶場の中は熱気と金属音に満ちていた。


 鉄火場ではドワーフ族のNPCが二人がかりで真っ赤に焼けた鉄をハンマーで叩き、作業台の上では何やら武器の図面を引いているのかプレイヤーとおぼしき男性が何人かで議論を出し合っている。


「他のプレイヤーも使用している人はいるんだな」


 思わず出た言葉に「それが普通なんだ」とおっさんは俺より前を歩きながら視線だけ向けて言ってきた。


「お前さん達流浪の者達がどんな場所から来たのか知らんが、この建物内や携帯鍛冶場には特殊な技術が使われていて炉から出る熱を炉の内にだけ閉じ込め、炉内の熱を常に高温に保てるようになっている。これは周辺に影響を出さない為の工夫や、より品質の高いモノを作るために合理的に考えられた技術の結晶だ。もしも携帯鍛冶場など特殊な効力を持つ鍛冶場を用いずに炉を剥き出しで使用すればどうなると思う?」


 おっさんの質問に歩きながら軽く考え


「めっちゃ熱くなる?」という回答を出した。


「わかっとるではないか?」


 これで正解なんだ。


 ていうか鍛冶場の能力は知らなかったが、炉が剥き出しの状態で周りが熱くないわけないだろうと常識的に思うんだが?


「鍛冶場のない状態だと周囲に熱が霧散して周りが高温になる。持ち運びできる携帯炉は出来て短剣、ショートソードレベルの作成か耐久度の回復にしか使用できないが、炉の熱は他の炉と同じレベルの温度を再現できる。だからその熱が周囲に撒き散らされれば街の住民にとても迷惑な話になる。故に先ほどの広場で鍛冶場を用いず鍛冶を行っている者を問題視したのだ」


 近所迷惑はリアルもゲームも変わらない問題なんだな。


 こないだの迷惑行為をしていたプレイヤー達もいるし擦れたプレイヤー多くないか?


「まぁその話は今後話し合いの場を設けるからお前さんは気にしないでよい。それよりもここが今のお前さんの実力に見合う鉄火場だ。炉は先ほども言ったが初級の炉でも他の炉と出せる熱量は変わらん。まずは併設されている精錬場でクズ鉄をインゴットに変えるがいい」


 おっさんの向けた視線の先、テレビで見た事があるような溶鉱炉が小さいながらも置かれていた。


 そして新規にクエストが発生した。


『精錬をやってみよう』

 クズ鉄を溶かしてインゴットを作成してみよう。

報酬:鉄のインゴット×1 クズ鉄×1


『鋳造をしてみよう』

 インゴットを溶かして鋳造を行いアイテムを作成してみよう。

 報酬:スキルポイント+1


『鍛造をしてみよう』

 インゴットを用いて鍛造を行いアイテムを作成してみよう。

報酬:スキルポイント+1


 なんか報酬がしょぼいと感じてしまったが、+1でも初期で手に入るスキルポイントは貴重なはずだ。


 とにかくまずはクズ鉄をインゴットに変える作業だな。


 溶鉱炉の前まで来ると、自動的にウインドウが現れた。


 どうやら入れるクズ鉄の量を指定できるようだ。


 試しに五個だけ入れようとするが、なぜか決定ボタンが黒反転していて選択できない。


 仕方がないのでボタンが押せるようになるまで一つずつ個数を上げていくと、10個目で黒反転が消えて選択できるようになった。


 どうやらチュートリアルなので決められた個数を予め教えてくれるらしい。


 指定したクズ鉄が溶鉱炉内に消えた後、下の穴から溶けた鉄が流れ出てきた。


 それは土でできた枠に流れてゆき、インゴットの形になって冷えて固まってゆく。そして出なくなった辺りで土枠を破壊して取り出すように指示が出たので言われたとおりに『黒金の小槌』で土枠を壊していく。


 本来ならまだ熱くて触れないはずなのだが、クエストにクリアが表示されたのでどうやら完成したようだ。


 鑑定で確認すれば確かに鉄のインゴットと表示される。


『鉄のインゴット』

 クズ鉄から取り出した鉄をインゴットにしたもの。それを熱して加工する事により様々な用途に用いる事ができる。元はクズ鉄のため品質はあまり良くない。


 そして報酬で手に入ったインゴットがこれだ。


『鉄のインゴット』

良質な鉄鉱石を製錬して不純物を取り除いたインゴット。それを熱して加工する事により様々な用途に用いる事ができる。さらに他の金属と混ぜ合わせる事で合金のインゴットが作成可能。


 同じアイテムでも説明で差があるな。鑑定スキルのレベルを上げれば項目が増えるのかな?


 報酬でさらにクズ鉄が一つ手に入り、端数の9がキリの良い数字なった。


 どうやら最初に貰えるアイテムの補正のようだな。


 同じ要領で手持ちのクズ鉄を全て鉄のインゴットに変えてしまう。


 インゴット用の土枠は大量に積み重ねて置いてあるので好きに使っていい様だ。


 そして三回目のクズ鉄の精錬終了時にクエストがクリアになった。


 見て見れば『鍛冶をしてみよう』にクリアが付いている。


『鍛冶をしてみよう』 クリア!

 始まりの町にある鍛冶場で鍛冶をしてみよう。鉄は熱いうちに打て!3/3

※鍛冶の成功、失敗にかかわらず規定回数をこなせば成功

報酬:鍛冶スキル、鍛冶鎚、鉄鉱石


 どうやら精錬も鍛冶の一つに入るようだな。


 手に入った鍛冶スキルを装備し、鍛冶鎚を黒金の小槌と入れ替える。


 そして手に入った鉄鉱石だが、インベントリから出すと割と大きな岩石が出てきた。重くて腰が抜けるかと思ったぞ。


「おお。鉄鉱石か!かなり良質なモノじゃないか。早速製錬して金属を取り出すと良い」


 おっさんの言葉通りに重い石を溶鉱炉へ運ぼうとしたらそこじゃないと言われてしまった。


 どうやら製錬違いのようだ。


 おっさんに鉄鉱石を持ってもらい、別の部屋へと案内されると、巨大なアリ塚みたいな窯の前までやって来た。


 何台か並んで置いてある窯の上では、組んだ足場の上から一人のNPCが同じような鉄鉱石を窯に空いてある穴の上に置いているのが見えた。


「ここは魔術製錬場といって魔力によって高められた熱で鉄鉱石に含まれる鉄のみを窯で練り上げた熱で溶かしてインゴット化する設備だ。もちろん他の金属を含む鉱石にも対応しているからもしも持ってきたら誰かに頼むか自分で溶かせばいい。俺らに頼めば有料だが確実にインゴット化出来る。自分でやる場合はそれなりに鍛冶スキルを上げた状態でないとインゴット化に失敗する事もあるからな。それに持ってきた鉱石によって俺らに頼む依頼料も自分でやる時の成功率も変わるから気をつけろ。今回は特別にタダでやり方を見せてやるよ」


 そう告げるとおっさんは俺から鉄鉱石を取り上げると誰もいない窯の上に上ると先ほどのNPCと同じように鉄鉱石を置いて降りてくる。


「あとは窯の熱が鉱石の融解温度まで高まれば自動的に鉱石が解けだして窯の中で濾過され鉄だけが出てくるというわけだ」


 言っているそばから窯の上に置かれた鉄鉱石が溶けるように消えていき、先ほどと同じ土枠が設置された穴から真っ赤に熱せられた鉄が流れ出る。


 冷えて固まった鉄のインゴットを鑑定すれば


『鉄のインゴット』

良質な鉄鉱石を製錬して不純物を取り除いたインゴット。それを熱して加工する事により様々な用途に用いる事ができる。さらに他の金属と混ぜ合わせる事で合金のインゴットが作成可能。


 先ほど手に入れたインゴットの報酬と同じ記述だ。


 つまり良質なインゴットを手に入れるには鉱石を採掘する必要があるわけだな。


 手元につるはしもあるから暇があれば採掘してみよう。


 幸い今回はタクから貰った鉱石があるのでそれを溶かしてインゴットにするところから始めてみるか。


「おっ、なんだ他にも鉱石を持っているのか?どうする?俺らに依頼するか?それとも自分でやってみるかい?」


 おっさんの言葉に少し考える。


 今手持ちにあるのが鉄鉱石が四つに銅鉱石が二つ。金鉱石が一つとクロム鉱石が二つ。


 元より鉱石系はそんなに持っていないし溶かすなら合金とやらも試してみたいな。


「ちなみに鉄鉱石と銅鉱石とじゃどっちが製錬しやすいんだ?」


「鍛冶スキルで見るなら銅鉱石の方が難易度は低いな。それにお前さん金鉱石とクロム鉱石を持っているなら合金が作れるだろう。お前さんが身につけている黒金のインゴットはクロム2に対し金1の割合で作れる物だからな」


 なるほど。なら銅鉱石で鍛冶スキルを上げて鉄鉱石はインゴット依頼、クロムと金は合金化するか。


「なら銅鉱石は俺はスキル上げで使わしてもらおう。鉄鉱石とクロムと金の合金化をお願いしたい」


「おう鉄鉱石のインゴット化は一つにつき千円。合金化は5千かかるがそれでもやるかい?」


合計九千円か。少し痛い出費だが確実にインゴット化できればそれでアイテム作成もできるし我慢するか。


「じゃぁ代金だ。ここは頼んだぞ」


 任された、とおっさんは胸を張って渡された(正確には地面に無造作に置かれた)鉱石類を同僚に運ばせていく。


 さて、俺も銅鉱石をインゴットにするとしますか。


 どの鉱石も大きさはどこまで変わらず、重さも同じくらいだ。


 金属の比重の関係で本来ならありえない事なのだろうが、そこはゲームなのだと思う事にする。


 銅鉱石を窯の上に設置した所、新たにウインドウが表示された。


『銅鉱石を設置しました。これより製錬作業に入ります。

成功率90% 合金化:レベルが足りない為出来ません

実行しますか?』


「YES」 「NO」  

 

これでYESを押せば製錬開始か。今の俺のレベルだと合金化は出来ないみたいだからもしもするならおっさんたちNPCに依頼するしかないみたいだな。


「YES」を押して製錬を始める。


 窯の温度が上がり、下に設置した土枠に溶けた銅が流れ出てくる。


 しばらくして窯の熱が下がり銅のインゴットが完成した。


『銅のインゴット』

良質な銅鉱石を製錬して不純物を取り除いたインゴット。それを熱して加工する事により様々な用途に用いる事ができる。さらに他の金属と混ぜ合わせる事で合金のインゴットが作成可能。


 内容は鉄が銅に変わっただけだ。


 残りの銅鉱石も同じ要領で溶かしてインゴット化を行う。


 鑑定や他のスキルに言えることだがやはり簡単にはレベルが上がる事はないみたいだな。


 全ての鉱石をインゴットに変えた辺りでおっさんが手に依頼で渡していたインゴットを持ってやって来た。


「ほら。頼まれていたインゴットだ。合金の加工は今のお前さんじゃまだ出来ないからレベルを上げてからやると良い」


 ご丁寧に黒金のインゴットが俺にはまだ扱えない事まで教えてくれた。


 インベントリの中にもまだ似たようなインゴットが眠っているのでそれらも加工は出来ないと考えた方が良いだろう。


「ありがとう。それじゃあ早速インゴットを使って何か作るか」


 ようやく初めての鍛冶に移る事ができそうだ。







お久です。


始めて読んでくれた方はお初です。


不定期更新で今回は少し短いですが、今後ともよろしくお願いします。


ちなみにタイトルのせいれんが平仮名なのはわざとです。


誤字脱字は発見次第順次訂正を入れさせてもらいます。

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