第1話 『2nd,Life Online(セカンドライフオンライン)』
はじめまして。処女作を読んでくださっていた方達にはお久しぶりです。
第2作としてゲームモノを書いてみました。
PSVR買ってないですけどきっと近いうちにこんなゲームが出るんだろうなという気持ちで書いています。
今後とも楽しみにしていただけたらと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
「ようやく手に入った。念願のVRMMO『2nd,Life Online』」
ヘッドギア型のVRマシンが世に出てしばらく経つ。初期型はテレビ画面をヘッドギアの視界に連動させて臨場感を煽ったり、頭部の可動に合わせて視界をトレースするなどの趣向でゲームに入り込む要素を強めていった。
時代は変わり、医療用に開発されていた四肢欠損患者用の義手足連動プログラムからの派生。VRを利用してのリハビリ治療からヒントを得て世界最大のゲーム会社が開発した世界初のフルダイブ型マシンインタフェースが世に出たのはつい最近の事だ。
形状こそ従来のヘッドギア型マシンだが、こちらは脳波を読み取り疑似睡眠状態を利用して意識をネット内にダイブさせる先進技術を利用している。
開発途上であった被験者問題などは内閣監視の元、国家プロジェクトとして主導されることでクリアし、被験者には同意書にサインされた人たちが選ばれ研究されたようだ。
幾多の障害を乗り越えて世界に発売されたこの新型ヘッドギア型インターフェース。その名を『ガイア』
地球を意味するこのハード名にはもう一つの地球を再現したいという思いが込められているとかいないとか。
なぜ俺がそんな最新のハード市場に詳しいかと言うと、俺の勤めている会社もそのハード対応のソフト開発会社であるからだ。
大々的に世のゲーム会社に資料を提供し、ハードの価格が車並みにも拘らず、欲しいというヲタ共の注文のせいでネットがパンクしたりとしたが、それも過去の話だ。
価格を落としたハードも発売されたが、それらはフルダイブ型ではなくVRタイプ。感触などの再現はできない代わりに映像技術でそれをカバーする仕様らしい。
まさにネットの大航海時代の到来だ。
会社同士で連携しあってのソフトウェアの共同開発が主流になり始めると、両社のいいとこどりのオンラインゲームがラインナップを飾り、その中でもトップを独走するのがこの第2の人生を過ごせると評判のゲーム『2nd,Life Online』だ。
お約束の剣あり魔法ありの世界なのだが、とにかく現実に近い世界観でプレイできると評判で、しかもプレイするのに条件があるのだ。
なにせ現実の身分証のコピーと必要な書類を記入したうえ会社へ送り、書類審査を無事通り抜けた者にしか手に入らないゲーム。
なんでも現実とのギャップに戸惑いゲームから抜け出せなくなる人がいたらしく、それの予防のために人間性を調査して購入者を限定しているそうだ。
そこまでおもしろいのかと気になるところだが、第二の人生をテーマにしているのならリアルに絶望している人がやったら帰ってこないだろうな。
書類審査は意外と簡単で、ようはストレスや性格、心理テストをやっている感覚だった。
ようやく手に入ったゲームだが、なんでもキャラクリエイトのうち、髪型や眼の色、耳の形などはいじれるみたいだが、顔そのものには手を加えられないみたいだ。
リアルに顔バレするのではと思ったが、書類審査を通った人は全員会社に書類があるそうで、通報があれば即座に警察に身柄を拘束される程の即応能力を持っているそうだ。
もちろんこのゲームは書類審査さえクリアできれば子供でもプレイできる。
俗に言うHな方向のR指定行為はできないようになっているが、書類審査の段階で年齢認証の項目があり、グロ描写の有無など、年齢制限にかかわる項目を選択できるようになっている。
あとから変更も可能だが、最低でも18歳以上かつ親の同意書がないと未成年は出血などのエフェクトは光表現でごまかされるようだ。
こちらとしては成人もしているし、どれだけ現実に近い環境を構築できているのか開発者視点で参考にできればいいので、項目にあった禁則事項な内容は全てチェック項目から外してみた。
俗に言うアイテムドロップすらリアル指向になるとナイフで剥ぎ取りとかになってくる。
それ用の解体所に倒した個体を持ち込めばいいらしいし、倒した敵は特殊な空間に収納できるようだ。重量制限があるらしいが…。
ゲーム的な内容を含みつつ現実の世界を尊重している危ういバランスのゲームが売り文句だというのだから、売り上げがトップなのも頷ける。
さっそくソフトをゲーム機本体のヘッドギア(こちらは会社から仕事に必要だという理由でモニター用に支給されている。もちろんフルダイブ型だ!)にセットしインストール作業を始める。
この間は暇になるので取り説を読みつつトイレなどの小用を済ませておく。途中でトイレ行きたくなったら困るので水分は少なめに。
ご飯も食べたしフルダイブ中は基本無防備になるので戸締りやガスの元栓も閉めて置く。
本体にはインターホンや電話の着信音などの音声を予め登録しておけばゲーム中でもその音に反応して警告を出してくれる仕様らしい。電話に至っては規格ごとにコネクタが常備されていて、スマホや据え置き機の電話でも登録しておけばゲーム中でも通話可能とのことだ。
インストール中でもできるようで、電話の着信音やインターホン等の設定を済ませて再び取り説の説明文に目を通す。
「なるほど。異世界をモチーフにしてるだけあって時代は中世ヨーロッパ風の街並みを原案に微妙に近代風なデザインを取り入れてると。
種族は人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、インプ族、ノーム族、龍人族、魔族等って、これ以外にもいろんな種族がいるんだな。
だけどドワーフとかノームって小さいイメージがあるから現実の体に合わせると違和感が出ると思うんだけどな?」
さらに読み進めていって、ある程度の初期スキルの説明やキャラエディットのやり方を読み終えた辺りでインストール作業の終了を知らせるアラームが鳴り響いた。
「やっと終わったか。ゲーム開始時はリラックスした状態でプレイすることが望ましいとあるからベッドで寝ながらやる事にするか」
ヘッドギアを取りつけてケーブルを壁の電源に差し込みパワーオン!
「やぁってやるぜ!」
スーパー系の主人公の様な声を出して眼をつぶる。
疑似睡眠波が出されているせいなのかすぐに意識が闇に呑まれる。
そうして俺の第2の人生が始まった。
最初なので3話分まとめて掲載します。
先に連載している分も近々更新しますのでもうしばらくお待ちください。




