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それぞれの思惑

本日二話目投稿します

ー斉藤Side

「・・・まさか本当にここに通うことになるとは、ね」


 私、斉藤舞は今日から通う学校の正門で思わず呟いてしまう。

 正直、こんなところに来るとは思わなかった。少なくともあのときの私にそんな考えはなかった。

 ・・・ほんとなんで私はここにいるんだろう。


「まさかもなにも、舞ならこの学校ぐらい余裕でしょ」

「・・・たしかに思いの外、入試試験は余裕があったけど」


 ・・・今さらかもしれないが私は一人でこの『王盛学園』に来たわけじゃない。

 かれこれ十年来の幼馴染みの鳳凰院美琴と一緒の学校に受験して見事合格して今日、一緒に登校してるのだ。


「そうじゃなくて、今思えば美琴ちゃんと仲良くならなかったらこの学校受けなかったのかなぁって」

「・・・今さらだけど、その美琴ちゃんって呼び方どうにかしなさいよ。なんだか子供扱いされてる気分だわ」

「もう、いいじゃない。私の方がお姉さんなんだし」

「お姉さんって言っても一週間も違わないじゃない・・・。ま、もういいわ、さっさと行きましょう」


 まるでこの話を打ち切るかのように美琴ちゃんはいつもよりも早く歩きながら正面玄関に向かっていく。私もその背中を追いかけるように少しだけ歩みを早めながら、さっきの会話に心のなかだけで訂正しておく。


(・・・美琴ちゃんは一週間っていったけど、実際は前世も含めると18才ぐらい離れてるのよねぇ)


 ・・・遅ればせながら自己紹介を。

 私の名前は斉藤舞。子供の頃前世の記憶を思い出した転生者です。

  それとこの世界は前世の私が嵌まってた乙女ゲー『春色シンフォニー』の世界で、美琴ちゃんはそのゲームに出てくるライバルキャラである。

 まぁだからなに?てかんじだけど。

 今の美琴ちゃんはゲーム本編とは違い攻略対象の婚約者はいないフリーだし、きっと大丈夫でしょ。

 勝手に変えて良いのかって?そんなのどうだっていいわ。


(乙女ゲーとか関係ないわ。そんなことよりも平和が一番よ)


 前世とは違い今世の私は事件の起こらない日常系が好きなのだ。

 ゲームのイベントなんか興味がないし、美琴ちゃんにも関わってほしくない。

 私は自分と美琴ちゃんの未来を思いながら校舎に向かった。









ー田中Side

「・・・とうとう来たぜ王盛学園」


 俺、田中大紀は今日から通うことになる自分の教室でつい独り言を呟いてしまう。

 この学園に通うことは俺の学力ではスポーツ推薦をとっても難しかったので、感慨もひとしおだ。

 ・・・改めて俺がいる学園について考える。

 この学園が一年の教室がS・A・B…と続き、Fまでクラスが存在する。そしてそれは入試の時の点数で決まってる・・・のだろう。

 じゃなきゃ俺がFクラスなのに納得できねぇ。・・・本当はSクラスに入りたかったんだよな。

 だって・・・。


(・・・ウグイスちゃんは天才だからSクラスは当然だろうしなぁ)


 ウグイスちゃんとはこの学園に今年の六月頃転入する予定の天才美少女探偵だ。身長は女子の平均よりも低くてその事を気にしてて、子供扱いされると怒るんだけどお菓子が好きで怒ったときにあげるとかわいい笑顔と共に「もう、しょうがないですね~」何て言いながら許してくれて・・・。

 ・・・あったこともない人間についてなんで知ってるかって?ていうかなんで未来のことを知ってるかって?


(・・・だってゲームじゃそういう流れだからだよ、小林くん!)


 ・・・そういえば自己紹介をしてなかったな。

 俺の名前は田中大紀。中学の夏休み、前世の記憶を思い出した転生者だ!

 そしてこの世界は前世の俺が嵌まってたミステリーゲーム『学園探偵・鴬谷アリスの迷推理』の世界なのだ!・・・はずだ。

 ちなみにさっき俺が言った小林くんはゲームでプレイヤーが操作するキャラの名前だ。

 この記憶が戻ったとき俺は歓喜した!その頃は平凡が嫌いで、自分がそうなることが心底嫌だった。

 だがゲーム通りなら平凡な学園生活なんて送るはずがない。

 さらに俺はシリーズ全作やったからどんな事件が起ころうと知識チートで解決できる!

 それ以来、心機一転して俺は真面目に勉強をし、幽霊だった部活にも顔を出すようにした。

 まわりには変な目で見られたがその時には気にしなかったし、両親や先生は俺を応援してくれた。

  そして見事合格!陸上でスポーツ推薦取れました!

 

(・・・これで平凡な日常とはおさらばだ!)


 前世のようなつまらない人生は歩まない!これからは俺の時代だ!

 俺は自分の未来を思い描きながら入学式の会場に向かった。








ー遠藤Side

「・・・あともうそろそろ、か」


 私、遠藤志帆は今までの人生であまり経験のないところにいた。といっても場所は珍しくもないところだが。

 私がいるのは今月から勤めることとなった学校の大きい講堂。

 そこで私は教師が座る側にいた。

 そう、とうとう私は正真正銘の教師として働くこととなるのだ。

 そして今は入学式と就任式をしており、私と他の新人の教師は挨拶するため待ってる最中だ。


「・・・それでは今学期から就任していただく先生方に挨拶していただきましょう」


 おっと、とうとうこのときが来たか。今回は五十音順ということで私がトップバッターだ。

 私は緊張を隠しながら壇上に上がる。


「・・・はじめまして皆さん。ここで英語を担当することとなった遠藤です。今日から・・・」


 ・・・その後は大きい失敗もドラマもないので割愛。次の先生のため壇上を降りる。

 次の先生はかなりのイケメンだからか壇上に立った瞬間ざわめきが起こるが正直どうでもいい。

 それよりも私が気になるのはこの学園が私の思ってるような所かということだ。

 ・・・実は私のとある記憶とこの学園はいくつか共通点があったりする。

 それは学園の名前だったり、校舎のシルエットだったり、古い校舎の裏にある桜の木だったりとほんのちょっとだけ、気のせいと言ってもいいレベルのものだ。

 だが・・・。


(・・・これが偶然じゃなかったら。もしかしたら私、ゲームの世界に来たことになるぞ)


 ・・・あらためて、自己紹介を。

 私の名前は遠藤志帆。先月行われた大学の卒業式の夜、前世の記憶を思い出した転生者・・・かもしれないものです。

 そしてもしその通りなら、この世界は前世の私が嵌まったホラーゲーム『おうじょうがくえんの夜』の世界かもしれない。・・・できれば違っていてくれ。

 正直私にとって前世の記憶なんて大したものはない。

 前世の私は中学生で死んだせいか知識チートなんてものにならないし、むしろ知りたくない知識・・・ホラーゲームとこの学園の共通点なんてものを知ってしまった。


(・・・退屈は嫌いだが、危険よりましだな)


 前世の私・・・何てものがあるか知らないが、この知識が間違ってるのを祈るしかないな。

 私は自分の未来を思いながら入学式が終わるのを待った。








ーSide鈴木

「・・・あったまイテー」


 俺、鈴木圭介は入学式の途中で頭痛になった。

 ・・・ていうか、いくらなんでも唐突すぎるだろ。今までの人生で前兆もくそもなかったぞ。

 今は入学式が終わり、教室に戻る途中だ。周りにいた俺と同じ新入生の木下くんが心配してくれるが適当に返事をする。それでも木下くんは心配そうな顔をしてるがこればかりはどうしようもない。


(・・・いきなりすぎて、ついていけないぞ)


 ・・・まずは、軽く状況を確認しよう。

 この王盛学園は俺の学力で行ける範囲で一番いい学園だったので受験して見事合格、今日がその入学式だ。ことの始まりはこの学園の入学式の新入生代表を見たときに起きた。

 なぜか彼女を見た瞬間、俺は頭痛に襲われてグロッキー気味となった。

 その最中に思い出したのだ。やったこともない、ゲームのスチルを。


(・・・ぶっちゃけ、ありえないと思うんだけど。これって小説であったアレみたいだな)


 ・・・とりあえず自己紹介。

 俺の名前は、鈴木圭介。さっきの入学式の途中で前世の記憶を思い出した転生者・・・なのかなぁ?

 そして本当にその通りなら、この世界は前世の俺が嵌まってたギャルゲー『桜色に染まる道で』の世界かもしれない。いや、さっき目覚めたばっかだからよくわからないんだよね。

 とりあえず、攻略キャラの『黒桐静香』は見たんだけど。

 ・・・ま、大したことないか。このゲームは普通・・・よりも個性豊かなキャラは出るが危険なことは起きないし、俺は名前も出てこないモブキャラっぽいし、ていうか主人公の木下くんも目の前にいる以上多少楽しくはなりそうだがそれだけだな。


(・・・とりあえず、面白そうだけどめんどくさそうなのは木下くんに任せて、俺はそれを楽しみながら普通に暮らそう、と)


 俺が攻略とかしないのかって?いや前世の俺は嵌まってたけど今の俺は別に・・・て感じだし。

 俺は自分の思い描く未来のために色々と考え始めた。





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