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ショッピングモールでのGW《田中Side》

 俺が入学してから一月たった。

 その間、俺の学園生活は普通な感じで順調だった。まあ事件も起こらない以上、普通の学生生活を送るしかないんだけど。

 とはいえ、なにもしなかった訳じゃない。あのあと俺なりに行動して、ゲームに出てきたキャラに数人、出会うことができた。

 あのゲームはキャラの濃さも売りだから、他人の空似とは思えない。

 なかには芸能人として活動してる人物もいるからWikiで探すことも出来たし、間違いない!

 実はウグイスちゃんも小林くんもまだ会ってないので少し不安になってたんだけど、これはもう確定だろ!

 俺はゲームが始まるまで普通に生活してればいい。そうとわかると、心に余裕ができて遊びたくなった。

 と!いうわけで!俺は今、近場のショッピングモールに遊びに来ています!

 おっと、一人じゃねーぜ!少なくともGWを一緒に遊ぶ友達はできました!

 それじゃ一人づつ紹介していきましょう!テンションがおかしい?気にするな!


「おーっす!待った?」


 まず最初に紹介するのはぁ、俺と同じ陸上部に所属する鶴来弾!仲良くなったきっかけは同じ部活の同じ一年だから!ぶっちゃけそれだけなら他にもいるんだけど、なんか一緒に雑用を任されるんだよな。


「ぃようっ!待たせたなお前ら!」


 次に紹介するのは、俺と同じクラスに所属する出井門マーク!仲良くなったきっかけはボクシング部の雑用で洗い物を出井門がしているときにちょくちょく顔を会わせてたから!

 うちの学校、運動部が洗えるのは学校が指定した場所でしか出来ないから、自然とそこで他の部員と出会うんだよな。でも、女子とあったことないんだけど、なんでなの?


 ・・・今日のメンバーは以上だ!

 いや、本当はもっといるんだけどさ!みんな部活があるって断りやがった。

 本来なら俺たちも一応あるのよ、部活。

 ただグラウンドを使うのは俺たち以外にもあるから、一日中やるとかできないわけ。今日も朝練が終わったら陸上部の活動は終了となったのよ。

 で、それは陸上部だけじゃなく他の部活もそう。それで暇な時間が重なる奴は一緒に遊ぼうってなったんだけど・・・。


「なんだよ。今日は集まりが悪いな」

「みんな以外と合わないもんだねぇ」

「あれ?美作は?サッカー部は今日休みだって、あいつ言ってなかった?」

「・・・デートだって」

「へー!あいつもすみにおけないねぇ!」

「んだよ、出井門。余裕じゃねーか」


 出井門が爽やかに返してくるが、俺はとてもじゃないがそうではいられない。

 だってあいつ、俺と同じ一年なんだぜ。

 それなのに入学してから一月で女とデートできるとかただもんじゃないぞ。

 あいつ・・・美作優詞は俺たちと同じ運動部の一年でそれなりに仲良くしてる奴だ。

 きっかけは出井門と同じく部活の雑用中によく会うし、同じ一年と言うことで仲良くなったのだ。

 ていうか今気づいたけど、なんで俺陸上部よりも他の部の友達の方が多いんだろ?


「ま、そういう事情じゃしょうがない。俺たちは俺たちで楽しもうじゃないか」

「そうそう。学生生活はまだ始まったばっかなんだしさ。その内彼女とかできるだろ」

「本当だろうな・・・。まあいいけどよ・・・」

「そうそう!それよりも今日はどこからまわる?」

「そうだな・・・、色々とあるけど・・・」

「あ、じゃあさ!おれ飯食いたい!」

「はいはーい!おれも!」

「んじゃ、まずは飯だな」


 と言うわけで、近場のファミレスを探しながらぶらぶらと歩き回ることにした。








 以外と近くにあったファミレス『Mr.BIG』での食事を終え、このあとどうしようか駄弁ってると入り口に見知った顔が見えた。


「あれ?美作じゃね?」

「・・・あ、ほんとだ。以外と近いところでデートしてんだな」

「まあこの辺で遊べそうな所つったらここぐらいだもんな」


 そういいながら、折角だし挨拶ぐらいするかと声をかけようとするといつもと感じが違うことに気づく。

 なんていうか、美作カップルが意外とぎこちないっていうか、想像してのと違うんだけど。もうちょっとこう、キャピキャピしてるって言うか手慣れてそうなのを想像してたんだけど。

 ていうか相手の子、かなりかわいいけどどっかで見た気が・・・。


「なんか思ってたのと違って、初々しいね」

「だな。たしか相手は幼馴染みさんなんだろ?」

「マジで!?あんなカワイイ子がウワサの幼馴染み!?」


 羨ましすぎんだろ!あいつ何!?顔が良くて運動神経良くて頭良くてカワイイ幼馴染みがいるとか、生まれついての勝ち組!?

 そんなことを考えてると、美作たちはちょうど俺の後ろの席に座りやがった。


「おっ!まじか!美作たち、後ろに来たぞ!」

「マジで!なんか話してる!?」

「やめなよ、そういうの・・・。で、どんな感じ?」

「ちょっと待ってろ・・・」


 計画なんて建てない俺たちは暇だった。暇なのでつい知り合いのデートを盗み聞きしてしまうのはしょうがないのだ。

 そんな感じで誰にも言わない言い訳を心のなかで言いながら俺は隣の席に聞き耳をたてる。だが・・・。


『『・・・・・・・・・・・・』』


「・・・あれ?」

「どうした?」

「いや、あいつら全然話し声が聞こえないんだけど」

「あん?どう言うことだよ?」


 どう言うことも何も、そのままだよ。あいつら座ってから全然話してねぇ。


「どうしたんだろうね?」

「あいつ顔はいいし、そういうのなれてると思ってたんだけど・・・」

「なんか思い当たるもんある?って、ねーか!そんなもん!」


 想像してたのと違う状況に、つい会議が勃発してしまう。

 大体、今年からの仲の同級生の恋愛事情に思い当たるもんなんて・・・。


「・・・あ」

「お!なんだなんだ、その反応は!?」

「オラとっととゲロっちまえよ!」


 そんなこと言われても、本当にアレが関係あるとは思えないし。







 時間は巻き戻ってGW直前の夜、俺は夕飯を食ったあと美作と腹が落ち着くまで駄弁ろうとしていた。


『美作ぁ、おまえ明日暇だろ?朝練終わったら・・・』

『わりぃ!明日どうしても用事があってさ!』

『ああ?何、デート?』

『どぅ、どぅえ!?な、なんでそれを・・・』

『ハア!?マジで!?おまえ、彼女いんの!?』

『しまっ・・・!?・・・はあ、もういいや』


 それで詳しいことを聞いてみると、相手は幼馴染みでこいつは否定してるけど多分その幼馴染みが好きだということ。

 相手には今年から知らない土地だから一緒にここら辺を回ってみようていう口実でデートに誘ったということがわかった。

 あまり俺では今後の参考に出来そうにないとわかったが、それでもあいつの話は続いた。


『まあ、その、それでさ。ミカにはこの前の事でなんか困らせちゃったらしくてさ。折角だからそこで・・・』

『・・・このまえ?』

『ああ、実は前にうちの・・・サッカー部のマネージャーをやってくれないかって頼んだんだけど、さ』

『・・・ほう』


 こいつ自分の好きな女を自分の部のマネージャーにしようとしてたのか。


『だけどその、実際は今年から募集してないって聞いて、なんかミカがショックを受けてるって聞いてさ・・・』

『・・・誰から聞いたの、それ?』

『ああ、ミカの友達の館川って娘から聞いたんだよ。それで・・・』

『それとさ、もう一つ聞いていい?』

『・・・・・・なに?』


 悪いね、ちょくちょく話を切って。ただ気になったことがあるんだよ。

 それにこっちもおまえの長話に付き合ってんだから、おあいこってことでいいだろ。


『なんでその娘はさぁ、マネージャーになれなくてショック受けてんの?』

『・・・いや、知らねーけど』


 なんかこう、気になんだよな。

 俺のカンが訴えてくるんだよ。前世のミステリーで鍛えたカンが。


『いやだってさぁ、普通マネージャとかしたくなくね?第一おまえ、その娘にマネージャー頼んだつってたけど、その娘他にやりたいこととか無かったわけ?』

『・・・それは、俺ももちろん考えたよ。だからミカにはやりたい部活とか無かったらどうだ、ていう感じで頼んだんだし』

『で、おまえの部のマネージャーになろうとした、と』

『・・・何が言いたいんだよ』

『いやぁ・・・、これは俺の勘違いかもしれないんだけど・・・』


 でも一応、これなら筋が通ると俺のカンがささやいている。そう、ミステリーで鍛えたあのカンだ。

 えー、でもなぁ、なぁんかこの事をこいつに言うのはなんかシャクなんだけど・・・。

 ・・・まぁいいや。別に言ったて大したことないだろうし。


『・・・その娘、おまえの事が好きなんじゃね?』

『・・・・・・・・・・・・へ?』


 なんか間抜けな声が聞こえたけど、気にせず続ける。


『だってさぁ、別におまえの部のマネージャーになったて良いことなんて別にないだろ?なのに、おまえの部のマネージャーになろうとして、入れなくてショックを受けてる。それってなんでだろう、て思うだろ?』

『・・・そ、それと、ミカが俺を好きってのと、どう繋がるんだよ』

『いや、逆だよ。ミカちゃんがおまえの事が好きなら筋は通るだろ?』


 実際今年から女子マネージャーがやってたことをやってる身としては、この仕事を進んでやる奴なんてまずいないんじゃないかな。

 あんな仕事を自分から勝手出るなんて、それこそ理由があると思うんだけど。


『で、俺はその理由がおまえが好きだからだと思ったわけ。ほら、よくあんだろ?好きな人と同じ部活に入りたい的な』

『だ、だからって俺とは限らないだろ!』

『それ自分で言って悲しくならねぇ?まぁそんなもん俺のカンだから根拠もなにもないけどもよ・・・』


 でもな・・・。順当に考えるとやっぱおまえだと思うんだけど。

 だってイケメンだし運動神経いいしのこいつを無視して他の男に目が行く、ってことないだろ。

 だからとっとと告っちまえよ。

 ていう感じであいつと話してたら、あいつがこの話を打ち切ったわけよ。








「・・・ていう事があったんだよ、昨日」

「「・・・・・・・・・・・・」」


 一通り話終えると、出井門と鶴来がこっちを見たまま黙りやがった。


「・・・んだよ?」

「いや、心当たりっていうか・・・」

「どう考えても、それだろ」


 ええ~、マジで?そんな関係ないと思うんだけど・・・。


「おそらく、田中の話を聞いた美作は自分が片想いじゃないかもしれないって事に気づいて普段通りに振る舞えなくなっちまったんじゃねーかな?」

「そしてミカさん?の方も脈ありに見えるから、余計動揺して気まずくなってんだろうね」


 マジかよ。俺の話を聞いただけでそこまでわかるとか、こいつらもしかして探偵の素質があるのかも知れねー。こんなところに未来のライバル候補が!

 なぁんて考えてる間に、美作の方に動きがあった。


『・・・な、なぁミカ。最近、どう?』

『・・・う、うん。・・・特には、大丈夫、かな?』


 こいつら本当に幼馴染み?それとも俺が知らないだけで幼馴染みってこんな感じなの?


『・・・あー、その、この前のアレなんだけど』

『あ、あれ?・・・あ、マネージャーの事?』

『そ、そうそれ。いや、なんかやろうとしてくれた、んだろ?それなのに、あんなことになって、その・・・』

『い、いいのいいの!べ、べつにユウ君のためっていう訳じゃなくって、その、私がやりたくってやろうとしただけだから!』


 やべえ。幼馴染みのほうはツンデレかもしれない。

 おれがアホなこと考えていても二人の話どんどん進んでいく。


『て、ていうかなんで今さらそんなことを・・・』

『いや、その・・・、う、噂なんだけど、さ。ミカがその件でなんかショックを受けてるって聞いたから、もしそうだとしたら俺が原因なのかな、て』

『そ、そんなことないよ!そりゃ、驚いたけど、ユウ君はなにも悪くないって!』

『でも・・・、そのせいか、あの、み、ミカが俺のことがす、好きなんて噂がたってるらしいし』


 え?この流れで訊くの?ていうかそれ、噂じゃなくて俺の推理だからね。


『え、あ、その・・・、それはその・・・、あれで・・・。べつに、噂じゃない、ていうか、その・・・』

『え!?そ、それってどういう・・・』


 え!もしかしてこれ、そういう流れ!?最初っからクライマックス!?

 大丈夫!?ここ、普通のファミレスだよ!?


『あ!へ、変な意味じゃなくって、その、と・・・』


 と?いや、この時点で嫌な予感がしてんだけど、俺の勘違いかもしんないし!外れろ、俺のカン!


『と・・・、友達と、して、その、好きだから・・・』

『・・・ともだち?』


 あああああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 まさかこんなところでテンプレな展開!お友達でいましょう的なアレ!

 いやでもきっと大丈夫だ!美作ならきっとここからでもなんとか・・・。


『も、もう、なんだよ~!俺、スゲー緊張したんだけど!』

『声大きすぎだよ~。ていうか、私だってそうだよ~』


 流されやがったー!てめえ美作この野郎!


「・・・美作たちはどうなった、田中」

「・・・お友達でいましょう、みたいな感じ」

「「・・・あ~ぁ」」


 その後二人の会話を聞いてみるけどそれ以上の進展らしきものはなく、それでも最初の時よりも楽しげな感じで会話がされていた。


「・・・なんでこうなったんだろうな?」

「・・・そんなの俺たちに訊いてもしょうがないだろ」

「そうだけどさぁ・・・」

「・・・よくあるやつだと、今の関係を壊したくないとかそんなのじゃねーの?」

「もしくは単純に恋人としては見れないとか?」


 自然と溢れた俺の疑問に二人が答えてくれるが、それでも俺の心は晴れなかった。

 ・・・結局この話は適当なところで切り上げて、俺たちは店を後にした。

 今日は帰りに美作が好きそうなお菓子買って帰ろうと思った。


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