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88話 文房具の商談/文房具値段


 クリスたちが出て行き、部屋には俺とギルマスであるゼノスさんのみになった。

 ゼノスさんは空になったカップに再び紅茶を注ぐ。


「では始めましょうか、出来れば早く終わらせましょう」

「お急ぎですか?」

「少々面倒ごとに巻き込まれて時間を空けたツケが回りましてね」

「それは御愁傷様です」


 本当に過労死でもさせる気かよ。

 俺のモットーは自由気ままに過ごしたいだ。

 現状で真逆なんですけど。


 願いは声に出せば叶うと聞いた事がある。

 俺って何度もダラダラしたいって嘆いてるんですけど。


 そろそろ俺の願いを叶えても良いんじゃないでしょうか。ねぇ! 運命様! 聞いてますか、神様じゃなくて運命様に聞いているんですよ。

 俺を神にしたいとか考えてんじゃねぇだろうな。


 はぁ、こんな事を言っても悲しくなるだけだ。

 やめよう。


「本当にお疲れなのですね」


 はい、一応は先日に10日ほど寝込んでいた病み上がりですからね。


「ギルド長という役割も大変でしょう。お互い頑張りましょう」

「はい、頑張りましょう。早速で悪いのですがこちらの書類に目を通して頂きたい」


 ゼノスさんは何枚かの紙を俺の目の前に置く。

 俺はそれを持ち、目を通していく。

 ……ってこれマジか。


「冗談ですか?」

「本当です」


 俺の手にした書類の内容を簡単に言うと、元締めとして商会を作って欲しいと言うものだ。

 特許として登録された商品はギルドが元締めとし、それを商会が買い取る形で商売が成り立っている。


 だが俺の文房具は特許ではなく元締めと言う形になっている。

 つまり俺からギルドが買い取り、更にギルドが商会に売るという物だ。

 なぜ二度手間な行為をする?


 地球では普通に行われていたが、こっちの世界ではそんな事は滅多にない。

 基本的には直売方式だからだ。


「特許はダメなのですか?」

「最大の問題点は技術不足です」

「あー、なるほど」


 だよな、それしか考えられない。

 俺のペンは材質がプラスチック。

 消しゴムもプラスチック消しゴムだ。

 この世界にはまだ誕生していない技術。

 実現する事が不可能、それが理由か。


「では最大ではない理由は何ですか?」

「それは圧倒的な需要に御座います。すでに文房具の噂は国中に広がっております。ほぼ全ての商会から店の商品として販売したいとの声が出ております」


 俺はその言葉に少なからずゾッとする。


「なるほど、助かりました」


 恐らくセリア王国の商業ギルドからの情報で分かったのだろうが、俺の存在を隠してくれたんだ。

 バレれば矛先が俺に向く。

 それを防ぐために黙っていてくれたんだ。


「分かりました。どの程度用意すればよろしいですか?」

「今の価格ですと、一先ず100万人分を、紙に関してはその倍は欲しいです」

「えらく多いですね」

「品質に対して価格が安過ぎるのです。圧倒的な需要はそこからです」


 さいですか、分かりました。


「それで形だけでも商会を作ってみてはいかがですか?」

「これに関しては仕方ないですね」


 俺は出された書類にサインをしていく。

 仕方ないよな、乗りかかった船どころか大船を自分で造ったんだから。


「はい、これで完了しました」


 最後にギルドカードに内容を読み込み終わる。

 あれ、よく見るとギルドカードがFからEに変わってる。

 いつ上がったんだ? まぁいいか。


「では明日の早朝に用意します」

「そう言えば、月宮さんは一体どこで手に入れ……いえ、詮索はご法度ですね」

「聞かないで貰えると助かります」


 創造で生み出したなんて信憑性ゼロだから言いたくないしな。

 それに変に使って目出つのも嫌だ。




 ♢♦︎♢



 俺はギルドから出て、のんびりとした足取りで離れた距離からでも見える学園へ向かう。


 夏だけあって日が沈むのが速い。

 あと2時間もすれば辺りは暗くなるだろう。


 街中の活気溢れた様子を伺いながら歩いている内に図書館裏へ着いた。

 いつもの調子で扉を開けると目の前では学生たちが訓練に励んでいる。

 草原には不自然に垂直に伸びた石柱が立っている。

 その丸みを帯びた石柱を垂直に駆け上がる影。

 クリスだ。


「わっ、ちょっ……」


 十数メートルを駆け上がり、後数メートルと言うところでクリスは足を踏み外し落下する。

 落下すれば怪我は免れない。


 俺は急いで助けようと行動を移そうとしたが止める。

 クリスはその石柱を蹴り、猫の様に回転しながら両手両足で着地する。


「もうちょっとだったのに……」

「惜しかったですよ、お嬢様」

「うわっ、勝者の余裕? どうせ私はミセルより遅いですよーだ!」

「私は元々これに似た芸当を戦場で行なっていたから早く身についたに過ぎません」

「でも出来てるでしょ」


 クリスが何やらミセルといがみ合ってる様に見える。


「涼太さん!」


 こちらに気がついたクリスが近づいて来る。

 俺はサラリとそれを躱す。


「何で避けるんですか」

「いや、なんとなく」

「先生、来たか。準備運動は終わってんぜ!」


 ジャッファルが親指を立ててグッドサインを出す。


「以前に教えた歩法は出来る様になったか?」

「おう、全員出来る様になったぜ。ジグザグも朝飯前だ」


 周りを見るとドヤ顔の生徒たちも少なくない。

 それから今ががついたがレナさんもちゃっかり生徒たちの中に混ざり込んでいる。


「それじゃあ、悪いんだけど魔法聖祭の競技について教えてくれないか?」


 俺の言葉に目の前に居た全員が固まる。

 おい、君ら。

 もしかして夢中になり過ぎて魔法聖祭がある事を忘れてたんじゃないだろうな。

 元々この訓練も魔法聖祭のためのものだぞ。


「やっべっ! どうすんだよ!」

「どうしましょう」

「あー、落ち着け。魔法聖祭まで残り二週間もある。十分に間に合う」

「涼太さん、しかしすでに他クラスの生徒たちは訓練に励んでいます。間に合いますか?」

「いや……内容知らんのにどうしろと……」

「そうでした、説明します」


 レナさんは何か嬉しそうな表情で俺へ説明する。

 それを俺は黙って聞く。


 種目は主に5つ。


 クイックシュートという次々に出てくる的へ自身の魔法を放ち点数が多かった者が勝利する競技だ。

 魔法の正確さと次の魔法に移る速射が必須だ。


 次にテイルラバー、魔法による身体能力を測る競技。尻尾取りである。実に子供らしくて結構だが、歳を取るにつれて不人気種目になっている。


 そして障害物競走、魔法により生成された障害物を己の魔法と併用して攻略していくものだ。

 魔法を使えないものには不利だ。


 この3つはあくまで前菜に過ぎない。

 メインは各国の重鎮が来る中でのバトルトーナメントだ。

 特別な魔道具を使用し、その中で戦う者は外傷を己の精神的ダメージに変換して戦う。

 続行不能もしくはギブアップにより勝敗が決まる。

 初等部の部、中等部の部、高等部の部、総合の部があり、各クラス一名が代表として出場する。


 交流という面もあり、国王自ら来る事も多々あるそうだ。

 特にセリア王国とラバン王国は親和的である為に陛下自ら毎年来るらしい。

 トーナメントの中で好成績を残せれば、卒業と同時に国から声がかかる事もあるそうだ。



 そして最後を締めくくるのに相応しい演舞を生徒が自ら行うのだ。


 こう見ると、バトルトーナメントがメインでそれでは物足りないから付け足したって感じだな。


「以上です、本当に大丈夫ですか?」

「はい、問題ないでしょ。それで誰がその代表になるか決まってるのか?」


 俺は疑問に思い質問を投げる。


「それはギリギリで良いと思うんです」

「良いのか? クリス」

「はい、クラス全体で決めた事なので」

「まぁ、それで良いんだったら俺は気にしないが」

「それじゃあ、始めましょう!」




販売文房具リスト

・鉛筆HB(統一):一本につき150ペル

・赤鉛筆:一本につき150ペル

・シャーペン:一本につき300ペル

・シャー芯:50本1ケースにつき300ペル

・ボールペン:一本につき400ペル

・消しゴム:1つにつき250ペル

・鉛筆削り:1つにつき300ペル

・ルーズリーフ:100枚セット400ペル

・B5ノート:30枚組にて一冊150ペル

・ファイル:一枚につき300ペル

・下敷き:一枚につき500ペル

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