84話 《死線の目覚め》
一ヶ月ほど忙しくなりそうなので、サイトを見る機会が減りそうです。
感想などは返信できないかもしれません。
投稿に関しては平常運転なのでご安心を。
気がつくとそこは見慣れた空間だった。
いつも俺が目覚めている場所。
あれ……こって神界か。
地上の方じゃないな。
創った俺が言うのもなんだが分かりづらい。
「おっ……お! 目が覚めたっすか!」
「テミスか……おはよう」
「おはようっす! みんなを呼んできますね」
テミスは可愛げのあるスリッパをパタパタと鳴らしながら、俺の部屋小走りで俺の部屋から出て行く。
俺は目覚めた仰向けの状態で腕を直角に上がる。
手を握るが違和感はない。
あれから……どれくらい経ったのだろうか。
憑依に加えてブーストにブーストを掛けまくったからなぁ。
生きてたって事は勝ったことは間違いないだろう。
「涼太ぁ……ゴフッ」
「りょう君!」
ドタバタと廊下を走る大きな音が聞こえ、アディが入って来たと思えばアテナがそれを踏みつけてこちら側へやって来る。
その後からパラスやパンドラもやって来た。
「よがっだぁ……ごのまましぬがとおもっだぁ……」
「涼太さんが死ぬ訳ないと何度も言ってるでしょ」
「うん……ありがと、パラス」
泣きじゃくっている親友のアテナをパラスは優しく介抱する。
「そんな大げさな事か」
「あなたぁ……10日も目覚めなかったのよぉ?」
アディがとんでもない事を口走った。
はぁ!?
10日も俺って寝てたの?
全くそんな自覚はなかったんだけど。
「心配かけたな」
「全くそうっすよ! あの後、りょうっちが倒れるわ、神界ではヘファイストスが倒れるわで大変だったんっすよ!」
ヘファイストスも倒れたのか。
あの状態の俺はあらゆる意味で異常だったからな。
少なからず影響もあったのか。
「ヘファイストスは大丈夫か?」
「……だいじょうぶ」
「あのバカは1日で目覚めましたよ。荒業に行って来ると男神たちを引き連れて早速鍛えに行きました」
パンドラがコクコクと頷き、パラスが呆れた表情でそう言う。
「そんな事よりもぉ! りょう君は大丈夫なのですか」
「ん……ああ。問題ないかな?」
俺はベットから起き上がり、腰掛ける姿勢を取る。
うん、倦怠感もないし力も入る。
腕を回すと何日も寝ていたせいか、関節が音を上げる。
「悪いが俺が倒れた後の事を教えてくれないか?」
「では私が説明します」
「頼む、パラス」
10日も開けてしまったんだ、色々と変わっている事もあるだろう。
まずはガブリエルの事だ。それにクリスを放りっぱなしだしなぁ。
週一勤務もサボった事になるから性悪のガウスさんなら何を要求するか分からない。
あぁ……別の意味で頭が痛い。
「まずガブリエルですが、呪いは解けてセラフィエルの回復魔法で傷を完治したので問題ありませんね」
「良かった」
本当に良かった。
俺は心の中で安堵する。
「ふふっ……あなたが心配する事はないわよぉ。久しぶりだわぁ、あなたの温もり……」
アディは俺を押し倒し、馬乗りになる。
「わ、ちょっ……」
「心配させた責任を取りな……キュッ!」
パラスが棚にあった辞書の角でアディを叩く。
アディは変な声を上げて、打たれた場所を摩る。
「ちょっと、何すんのよ!」
「アホですか、病みあがりを襲うなんて本当にアホですか。この万年発情期」
「はぁ!? 私がどこの誰とも知らない奴に尻尾を振ると思ってんの?」
「違うんですか」
「違いますぅ! きちんと見極めてますぅ!」
いつものコントが目の前で行われる。
やっぱり、こういうほのぼの系の方が良いよね。落ち着くわ。
「あー! もう止めるっすよ!」
「……ん! ケンカはメッ!」
そうだ、やめなさい。
パンドラのメッ! 頂きました。
指でバッテンを作って言うなんて反則じゃないですか。
世の男子は瞬時に和解の握手をするぞ。
「そうですね、失礼しました」
「ごめんなさい」
「続きを頼む」
「はい、実は涼太さんの看病はガブリエルが付きっ切りでしたね。今は……恐らく地上で涼太さんの代わりをしていると思いますよ」
「ん? どう言う事だ」
「涼太さんが行っていた訓練の代わりをしているんですよ」
そっか、俺の代わりに頑張ってくれてるんだ。
ジャッファルには訓練すると言ったもののアレから一度も行っていないから申し訳ない。
「そこまでして貰うのは申し訳ないな」
「そうでもないですよ? りょう君のいない間は熾天使たち全員で鍛えてるらしいですから」
「え……まじで?」
ありがたいけど面倒な事になる気がして心が落ち着かないんだけど。
絶対にクリスから追求があるよなぁ。
「早く地上に行くべきだな……」
「えー! 折角だしのんびりしましょうよ!」
「りょうっち、休暇も大事だと思うんっすよ」
俺が立ち上がろうとすると、女神たちはなんの合図もなく再び座らせる。
アディはベットの上で俺の後ろをガッチリとホールドし、アテナとテミスがそれぞれ俺の腕に捕まり、パンドラは俺の膝の上に座る。
極め付けにパラスは持っていた辞書を俺のこめかみに突きつける。
なんか変なオーラが出てるんですけど。
辞書は武器じゃありません!
やめてください、怖いです。
なんでこんな時だけ息ぴったりなんだよ。
はぁ、諦めるしかないか。
女神だけあって融通なんて聞かないし。
三章終