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81話 紫の迷宮 一層

久しぶりにまともな戦闘シーンですね。

書いていて楽しかったです。




 中はホール状になってる空間であった。

 高さは十数メートル。

 幅は半径五十メートルはあるだろうか。



 俺は手に持つ身の丈はあるであろう刀を振るう。


 その一太刀で複数の敵の頭部と胴体が真っ二つに切れ、敵は動かぬ屍となる。


 俺はそのまま横薙ぎに刀を振り切る。



 中に圧縮され入っていた液体が外へ噴射される音とともにまた敵は傾れ落ちる。


 次に行動を移ろうとするが足が重い。

 腕もだ。



 見るとそこには先ほどの斬った敵の腕が俺を離さんとしがみ付いている。


 一瞬の隙だ。


 それだけで俺の胴体にはいくつもの切り傷が生まれる。



「ガァァァァァッ!!」



 俺は雄叫びをあげてその一帯を圧で吹き飛ばす。


 俺の体は瞬時に再生し元の無傷の体へと戻る。

 しかしそれは敵も同じ。

 敵は体勢を立て直し陣を組む。


「クッソ! 塵も積もれば山となるってかぁ! 笑えねぇよ!」

(それにちゃっかり【魔法無効】のスキルまでありますからねぇ。詰みましたか?)


 目の前には数え切れない程の軍勢。



死の騎士デス・ナイト LV.999】



 俺のレベルは8520。

 普通ならば雑兵程度の強さだ。

 しかしそれはあくまで単体である話。


「アテナ! 敵の攻略法は分かったか!」

(あー、コレは倒すしかないと思いますよ。解析しましたが出入り口は次元の狭間に設定されています。出ればジ・エンドです)


 アテナが何やら分からない事を言い出した。


「次元の狭間ってカッコいいなぁ!」


 俺は両手で持ち一振りする。

 衝撃波が生まれ、飛ぶ斬撃と化した攻撃は敵を抹殺していく。


(アレですよ。マジでヤバい魔物がゴロゴロいます)

「神界並みか?」

(ノーコメントで)



 聞きたくなかったよ。


「てかそうじゃなくて! この迷宮の構造だ!」

(あー、それはご安心ください。この迷宮は10階層しかありません。というかメチャクチャ手を加えた痕跡があります)


 つまり、ロキが俺宛にこの惨状をプレゼントしたって事かよ!

 泣きたい。

 10階層というのは少なくてありがたい。


 しかし逆に言えば、これ以上のチートモンスターたちと9回は闘わなくちゃならないって事だろ。

 マジで無理ゲーなんですけど。


 本当に魔法が使いたい。

【超重力】や【消滅魔法】を使えばどれだけ楽になるだろうか。



(りょう君! 私を纏って下さい!)

「ダメだ、初っ端の敵で切り札は使えない!」

(でもボロボロじゃないですか!)

「俺はすぐに再生する」

(私は苦しむ姿を見たくないんです!)



 ッッ!


 うっすらと涙を浮かべるアテナ。

 俺は手を止めて立ち止まる。


 俺の心にズキンッと何かが刺さる感覚が生じる。

 自身の体を見ると【死の騎士デス・ナイト】は押し込む形で俺の体の四方八方を剣で突き刺している。


 いや違う。

 コレは肉体の痛みじゃない。

 心の痛みだ。

 女の子を泣かせた。

 俺の事をこんなにも大事に思ってくれている子を。


 そうだな……。


「悪い……アテナ」

(りょう君……)


 俺はアテナの頼みを断る。



「コレは俺の試練だ。俺がやらなくてはならない。見守っていてくれ。ここで引くのは俺の性分じゃない」

(……まったく、男の子ですね)



 悪いな、甘える訳にはいかないんだよ。




 誰1人動かない空間には静けさだけが漂う。

 俺を貫いた【死の騎士】も動かない。

 息の根を止めたと判断したのだろうか。


 いや、こいつらからは余裕が感じられる。

 という事は遊び?

 俺が動くのを待ち、動けばバラバラにするという事か?

 いずれにしろ舐められたものだ。



 使ってやるよ。

 体がボロボロになろうが、どうせすぐ再生するんだ。




「【刹気】」




 俺の気が爆発的に跳ね上がる。

 ズブリという剣が体から抜ける音とともに、敵は壁まで吹き飛ぶ。

 俺の周りには青いオーラが漂う。



【刹気】


 俺が以前に使った【気昇】がフェイズ1とすると一段階上のスキル。


 一歩踏み込めば、体が悲鳴を上げる。

 やはり使うには早いか……。


 だが……。


 こいつらを片付けるのには問題ない!



「さぁ、始めようか。ここからは俺の蹂躙ターンだ!」


 俺は足を踏み込む。

 それだけで地には大きなひび割れが起こる。


 正面突破。


 俺は敵の大軍へ超速で突っ切り、片っ端から目の前の敵を斬りふせる。

 敵は何も反応出来ずにくず鉄へ変わる。



 バキンッ



 刀が折れた。


 そう言えばこの刀は創造という魔法で創ったが、今まで壊れずに敵を斬り伏せていた。

 魔法無効というが、例外なのだろうか。


 少し荒々しく使い過ぎたか。

 刀には悪い事をした。


 ならば素手だ。

 残りは少ない。



「ウォォォォォォォォッ!!」



 ブチブチと足の筋が千切れる音がした。

 だからどうした!

 負ける訳にはいかない、何よりも俺自身に。


 俺は最後の力を振り絞り敵へ突き進む。




 ♢♦︎♢



「うっ……」


 冷たい。

 俺は地面に倒れているのか。


 うっすらと目を開ける。


 辺りには先ほどの敵が山の様に積み重なっている。

 しかし、動いている奴はいない。

 という事は勝ったのか…。

 途中から記憶がぼんやりしていた。


(おはようございます)

「ああ……おはよう。どうなった?」

(敵は全滅ですよ)


 良かった。

 勝てたのか。


「あれからどの程度時間が経ったんだ?」

(3時間でしょうか)


 3時間か……。

 結構な時間が経っていたんだな。


 俺は起き上がろうとしたが、うまく力が入らない。

 おかしい、体なら再生しているはずなんだが。

 それなら動くよな。


(りょう君、体に力が入らないのは気を異常なまでに乱用したからですよ)

「そうなのか?」

(普通の肉体ならば壊れる事により、限度を抑えられるんですが、りょう君は再生をする事により限定が解除されちゃったんですよ)


 あー、なるほど。

 超再生って便利なスキルだと思っていたが、ある意味のデメリットがあったのか。

 盲点だった。


 まぁ、今回は仕方ないよね。


「ふぅ……」


 自身の体の内側を感じ取る。

 俺は体内で錯乱している気を体全体に循環させる様なイメージを取る。


 すると少しずつだが、俺の意思に従う形で循環し始める。

 ヘファイストスにも瞑想じみた事は教えられたから思っていた以上にスムーズに出来たな。


 数分間、目を閉じ仰向けの状態でその作業を行う。

 気はほぼ違和感のない程度には元に戻る。


 手を握る。

 よし、いける。


 俺はゆっくりとその場から立ち上がり体を動かす。

 多少の違和感はあるが、戦闘では支障はない程度には元に戻ったか?


(うわっ、早いですねぇ。もう回復したんですか)

「早いに越したことはないだろう」

(確かにそうですね)


 さて、どうしようか。

 このまま進むか?

 確か迷宮に入ったのが午後2時だ。


「俺って何時間闘い続けていたっけ?」

(約2時間半でしょうか)


 2時間半も暴れまくっていたのかよ。

 次から次へと巣から現れる蟻のごとく出現するとは思っていたが……。


 よく頑張ったぞ俺の体よ。


 という事は計5時間半か。

 長かったな。


「なぁ、アテナ。これって一回出たら、また一からやり直しって事は……」

(黒の迷宮を基準に考えるとねぇ)


 やっぱりですか。

 一からスタートパターンですか。


「一回出てからもう一回入ろう」

(えっ、ダメですよ! ボロボロになったばかりじゃないですか!)

「大丈夫だ」


 今回は無我夢中に剣を振り回していただけだ。

 戦略など何も考えていなかった。


 敵は魔法が効かないだけでスキルは通じる。

 創造魔法で創造した武器も通じる。

 これだけでも情報としては十分だ。


 それに今の戦いで経験値も入った。



【剣術がレベルMAXになりました。上位スキル、剣王へと変化します。よろしいでしょうかYES or NO】



 無論イエスだ。

 俺は【剣王】のスキル補正を見る。



【剣王:剣及び刀を装備時にダメージ補正200%】



 強いな。

【剣術】は120%だったに対して上々だ。


 更に新しく【補助魔法】を創った。

 よく考えればRPGの基本を忘れていたわ。

 バフって大事だよね。

 俺ってもしかして脳筋なのかな。


「よし、行こうか」

(はぁ、どうなっても知りませんよ)

「問題ない」



 俺は一度入り口から出て、もう一度入る。

 すると先ほどと同じ様に金属同士が擦れ合う音が聞こえる。


 わんさか出て来やがって。

 黒いから本当に蟻に見えてきた。

 それじゃあ、害虫駆除を始めますか。



「【全能豪化】【気昇】【狂化】」



 ギリッ



 俺の歯が軋む音が聞こえる。

 肉体そのものの構造が変わる様な違和感。

 調子に乗り過ぎた。


(ちょっ、いくらなんでもブーストし過ぎですよ!)

「まぁ……大丈夫だろ」


 俺は腕を回す。

 先ほどの違和感はすぐになくなった。

 今感じられるのは、力が奥から溢れ出てくる感覚。


 更に俺の体を風と雷が纏う事によりバチバチと弾けあう。

 腰を低くし新しく創造した長刀の柄を握る。




「【抜刀・斬空】」




 俺は鞘から刀を抜き、水平に一振りする。

 速度は見えない。

 瞬間、一筋の刀で斬ったであろう筋が出来る。




 キィーン



 鳴り響く高音。



 ただそれだけの音がこの広い空間で反響し合う。



 長い長い数秒という時間が流れる。

 俺は抜いた刀を鞘に入れる。

 それと同時に何かがズレ落ちる音が聞こえる。



「ふぅ」



 見える敵はどこにもいない。

 見えるのは優れ落ちたクズ鉄の塊のみ。

 たった一度の抜刀で数百の敵が一度に斬られた。


 佇むのは俺1人のみ。



(ヤ、ヤベェ……)


 ヤベェ…って、男言葉みたいになってんぞ。



(なにこれ凄いんですけど! 漫画であったシーンですよ!)

「そっちかい!」

(使えるなら使って下さいよ!)

「俺もここまでとは知らなかったんだよ」


 本当に凄いわ。

 体の負担も大きいけどコレは使えるな。


 俺は刀を見つめる。


「あ……」


 たった一振り、それだけで刀の刃は使い潰した様にボロボロになっていた。

 俺の創造は神器は別として普通の武器は性能に大差ないからなぁ。


 今度自分で造ろう。


 俺は長刀をアイテムボックスにしまう。



「さぁて、やるか」

(頑張って下さい)





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