6話 《ウチの城にて》
至福。
それは何事にも代えがたい幸福の瞬間である。
私たちは今まさに至福の時を味わっている。
「ねぇ、アテナ。今までこんなのを毎日味わっていたのぉ? ずるいじゃない。羨ましいわぁ」
「むふふっ、幸せっす。ここは天国かないかっすか」
「……」パクパク
ええ、まさにその通り。
今まで貢ぎ物で満足していた自分が馬鹿らしい。
これに比べたらあんなの犬の餌か何かじゃないの。
濃厚でまるで心を溶かすかのようなチョコケーキ。
滑らかな舌触りのプリン。
フワフワの生地にフワフワのホイップクリームを乗せて食べるシフォンケーキ。
噛めば中から甘味が溢れるように出てるシュークリーム。
サクッと香ばしいクッキー。
どれもこれも私たちが味わったことのない美味しさである。
「ねぇ、涼太さん。アテナはいつもこんな幸せを味わっているの?」
私は口休めに紅茶を喉に通す。
この紅茶というのは素晴らしい。
飲み物と言ったら供物として送られてくるのは水か酒だ。他の飲み物なんてまず来ない。なので私たちはフルーツを絞りジュースとして飲むか水に入れて果実水を作るかしかないのだ。
「いえ、今日は女神様方が来ることが分かっておりましたので歓迎を込めて沢山用意させて頂きました」
まぁ、なんてこと。私たちの為にこんな素晴らしい歓迎の準備をして下さったなんて。とても紳士的だわ。
「ちょ、りょう君。これ全部私の為に作ってくれたんじゃないんですか? さっき言ってたことと違うじゃないですか! というか何でこの子たちが来るの知ってて教えてくれなかったのですか!」
「うるさいですよ。今まで隠していたくせにどの口がいうのですか? それに来ること言ったら隠すために何かしようとするでしょう? いい機会ですから全てさらけ出しなさい」
やはり隠していたのですか。
それから暫くして……
「ふぃー、もう食えないっす。満腹っす」
「お茶会でも出ているものを最近一口も口をつけないと思ったらこれが理由なのねぇ。確かにこれを食べたらもうあんなの進んで食べようとおもわないわぁ」
「……しふく」にやにや
この至福のパレードを終え私は今回ここに来たための話を切り出す。
「さて、アテナ。私が今から貴方に何を言うか想像できる?」
「うぅぅぅ、すいません。今まで隠してました。でも仕方なかったのです。私とりょう君の甘い一時を誰にも邪魔されたくなかったのです」
反省しているのかしていないのかどっちか分からない言い様だ。
「アテナ。これは普通に考えるならば許されざる事です。理解できますね?」
「はい」
「そこで私は提案をします。この条件を飲めば許してあげてもいいです」
「提案ですか?」
アテナは希望の光を見つけたかのような形相になる。
「私たちをここに住まわせなさい。拒否は認めません」
「……はい」
こうして私たちは新たな住まいを得た。
♢♦♢
どうやら話は纏まったようだ。
「では女神様方。この後はどうされる予定でしょうか?」
予定は大事だ。何をするにあたっても予定が無くては決められない。
「特にないですよ。あと私の事はパラスとお呼び下さい」
「私のことは、アディと呼んでぇ。親しい人にはそう呼ばれてるのよぉ」
「うちはテミスでいいっすよ」
「……パンドラ」
「分かりました。ではまず、各自の寝室をご用意致します。ついて来て下さい」
城の客室へ案内する。
この城だが外見は古風だが中身は亜空間と化しており八階建て地下は3階まである。
全てタッチパネル式で鍵も指紋認証だ。
地球で一度泊まった事があるんだがエレベーターのボタンですらタッチパネルのホテルがあった。
その時は時代に取り残されたかと思った。
1階は玄関と階段、エレベーター。そして温泉や露天風呂を設置。
2階は厨房、洗濯スペース。
3階は俺の自室。個人的なキッチンとアテナの部屋があるがアテナは俺といつも寝ているのでアテナの部屋は実質空き部屋状態である。
4階は洋式の部屋が15部屋。
5階は和式の部屋が15部屋。
何故洋式と和式で階を変えているかと言うと廊下の造りなどを部屋に合わせると別々にした方が都合がいいからである。
6階はだだっ広い空間である。
7階は実験室。多くの扉しかなくそれぞれ俺の創った亜空間や惑星に繋がっている。スキルが暴走しても何時でも切り離せるようにするためである。
8階は一面ガラス張りのバーを設置した。
B1はプールを設置した。此処が一番広いかもしれない。何故なら所謂地球で有名なプールランドをそのまま再現したからだ。擬似太陽を設置したので眩しい。
B2はそれと対局にスキー場を創った。
B3は娯楽施設だ。ボーリング、カラオケ、ゲームセンター、スポーツのコートなどを創った。
地下は許可書があれば誰でも入る事が出来るので休みの日などに天使たちがやってくる。
まずは洋室に案内する。
「うわっ、何ですか。フカフカですよ! ベットがフカフカです」
「すごいわぁ、気持ちいい。この布もとっても滑らかな肌触り。気持ちいいわねぇ」
次に和室だ。
「落ち着いた感じがいいっすね。この畳っていうの気持ちいいっすね」
「……」こくこく
部屋割りの結果パラス、アディは洋室。テミスとパンドラは和室という結果になった。
「では、夕食時にお呼び致しますので、ごゆっくりと」
俺は建物の説明をしてその場を去り厨房で今晩の献立を考える。
さて何にしようか。
大人数なので今日のメインは唐揚げにしよう。
俺はメイド達とせっせと唐揚げを揚げていく。
二度揚げは基本だ。
一度目は低温で揚げ、二度目で高温で揚げる。
すると中はジュワッと外はカリッとした食感になる。
揚げ終わった唐揚げを俺は保温冷蔵庫に入れる。
この保温冷蔵庫だが中に時間停止の魔法を組み込み、出した時に入れた時と全く変わらない状態の物にした。
これぞまさに究極の新鮮さを保つ冷蔵庫である。
因みにフライドポテトもこれと同じ様にすれば作れる。
俺はジャガイモを一口サイズに切り唐揚げと同じく、低温で中まで熱を通してから冷まし一気に高温で揚げる。
後はスープか。朝届いたカブがあったな。
じっくりコトコト圧力鍋でトロトロに溶かしていく。
♢♦♢
「ねえ、みんなこれからどうする?ここの探検をしてみたいわ。こんなに広いんだもん」
「いいっすねー! 楽しそうっす」
「いいわねぇ。何か良いものはないかいらぁ?」
「……」こくこく
どうやら皆んなも興味津々の様だ。
「じゃあ、アテナを誘って一緒に行きましょう。案内役は欲しいわ」
「上から下へ降りていく感じでいきますねー。付いて来て下さい」
暫く説明されながら探求をしていると…
「みなさん、夕食の準備ができましたのでお集まり下さい」
丁度3階に降りようとしたところで涼太さんから声がかかった。
私たちは涼太さんの自室に移動した。
すると今にも涎が出そうな匂いが漂ってくる。口の中で唾液が絶え間なく生成されていくのが分かる。
「ではいただきましょう。サラダはドレッシングがありますので好きなものをかけて食べて下さい。あとこれが唐揚げです。味は付けてありますのでそのままでも構いませんしお好みでレモン汁を垂らして食べて下さい。それにフライドポテトとカブのスープ。デザートはパフェになりますので後ほど用意します」
こうして私たちの晩餐が始まった。
カリッ、ジュワァァ。
「!!!!」
中から肉汁が溢れ出てくる。
これが肉。今まで食べたことのない美味しさだ。
「すごい美味しいわぁ、ドレッシングをかけるだけでこんなにも変わるのねぇ」
アフロディーテはサラダを食べながら感動していた。
「このフライドポテトっていうのも美味しいっすね。パクパクいけるっすよ」
「……」パクッ、パクッ
アルテミスはポテトを食べており、パンドラはスープが気に入ったのかスプーンですくっては食べの繰り返しをしている。
「どーですか! 美味しいでしょ! うちのりょう君は凄いんですからねー!」
楽しい食事である。こんなに楽しいのは初めてかもしれない。
♢♦♢
「美味しかったです」
「ふぃー、満腹っすね」
「堪能したわぁ」
「……お腹いっぱい」
「やー、食べましたね! 満腹です」
どうやら皆さん満足した様だ。
「お腹がいっぱいでしたらデザートはまたの機会でもよろしいでしょうか?」
「「「「それは別腹!」」」」「……」こくこく
どうやら女神にも別腹は存在する様だ。
「では皆様、お風呂へご案内致します」
そう言い俺は女神様方を浴場へ案内する。
「こちらには天然温泉、ジェットバス、炭酸風呂、薔薇の湯など数揃えております。サウナはもちろんここのではマッサージ、岩盤浴もありますので近くの天使にお声掛け下さい。では私はこれで失礼します」
「ちょっ、待ってくださいりょう君。何処へ行くんですか?いつもみたいに一緒にはいりましょうよ!」
うちの女神様が突然そう言っていた。
俺もそうしたいが流石に他の女神様方と一緒は色々まずいと思うのだが……
「えぇ、いいわよぉ。一緒にはいりましょう?」
「私もいいですよ。アテナも一緒ですし」
「しゃーないっすね。今日のお礼に一肌脱ぐとするっすか!」
「……」こくこく
これは嬉しい誤算だ。
「ではそうしましょう」キリッ
パサッ、シュルル
なんとも艶かしい音だ。聞いているだけでドキドキする。
目の前には5人の女性の裸体。
「みなさん、お美しいですよ」
俺は溢れ出る欲望を抑え紳士的な対応をとる。
まさに男の願望を体現したかの様なアディ
出るとこは出てスリムなパラス
スリムで無駄な肉が付いていないテミス
小っちゃいが美をまとっ……おっといけない犯罪気がつけば犯罪一歩手前ではないか、危ない危ない。
そしてうちのアテナ。
5人の女性の麗しい姿が目の前に……。
眼福である。
♢♦♢
風呂から上がり俺は自室に戻った。
女神様方はまだおしゃべりをしている。
ガールズトークを邪魔するのも悪いだろう。俺は早々とベッドに潜り眠りに落ちた。
「ねぇ、起きてるんでしょう? ふふっ、待たせたわねぇ」
ふと目を開けるとそこには俺に跨り着崩れしているアディがいた。
「あ、あの、何を……」
「ふふっ、分からない? 私が何をしに来たのか」
「……よばい?」
「正解よぉ。わかってるんじゃないのぉ。私貴方の事が欲しくなっちゃったわぁ。アテナにだけなんてズルいじゃない。大丈夫よ。すべて私に任せてくれれば」
この女神様とんでもない事を言いだしやがった。いや男としてこの上なく嬉しい状況だ。それもこんな美人。断る理由がない。
「……ァァ」
俺とアディがお互いに重なろうとした瞬間。
「させるかぁーーーッ!」
突如として、扉を開く音が聞こえたかと思えば、上から獣じみた唸り声とともに聞こえる。
「ぐごっ」
「キャッ」
突然現れた影。
見上げると鬼の様な形相であるウチの女神様が立っていた。
「アフロディーテ! 私のりょう君に手を出そうとはいい度胸じゃないの!」
「アフロディ、帰ってくるのが遅いと思ったらやはりこれを狙っていましたか」
「抜け駆けはダメっすよ。アディ」
「……ズルはだめ」
どうやら他の女神様方も集結したようだ。
「もう、何するのよぉ。後もう少しだったのに」
「離れなさい! その隣は私の定位置です。貴方は自分の部屋へ帰りなさい!」
「いやよ。貴方だけなんてズルいじゃないの。私もここで寝るわぁ。そうだわぁ! どうせなら皆んなも一緒に寝ましょうよ」
なっ! マジでなんという事を口走るのだこの女神様。そんなの、そんなの、くっ、素敵じゃないか!
「それはいい提案ね。面白そうね」
「うちはいいっすよ。」
「……」こくこく
「ちょっ、認めません! 私は認めませんよぉーーーッ!」
【言語完全翻訳】
【完全記憶】
【創造魔法LV.21】
【料理スキルLV.51】
【時空魔法LV.34】
【次元魔法LV33】
【回復魔法LV.12】
【元素魔法LV.35】
【召喚魔法LV.32】
【結界魔法LV.43】
【崩壊魔法LV.42】
【痛覚遮断LV.56】
【超再生.LV38】
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