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75話 学園の生徒の訓練


 何やら乗せられた気もするが……まあ別にいい。

 問題が一つある。


「というか勝手に決めないで下さい!」


 そう、この女性教員の方だ。

 結論から言うと真面目ちゃんなのだ。

 しかし真面目ちゃんというのもめんどくさい。

 規則だ規則だやかましいわボケぇと言いたくなってきた。


「あなた歳はいくつですか?」

「はぁ……17ですが……」

「ほら! 学生じゃないですか! ダメですよ、ちゃんと制服を着ないと!」


 女性教員の方はプリプリと怒りながら俺に説教するかの様に言いつける。


「これをどうぞ」

「はい……学生しょ……え……本当に先生なんですか?」

「こいつも先生って言ってたでしょうに」


 俺はジャッファルの頭をポンポンと叩く。

 女性教員の方は驚いた表情で俺と教員カードを見比べる。


「あ……確かにそうでしたね」

「分かってくれた様で何よりです」


 良かった、ようやくスタート地点に立てた気がする。


「……で、ジャッファル君」

「なんだよ先生」

「そもそも君の意見はこの先生が納得しないと無理だと思うんだよ」

「なんだ、そんな事か。どうせ同じチームなんだからいいんじゃねぇの? 一緒にやろうぜ」


 ……は?

 何で一緒なんて分かんの?

 運命か宿命かというやつですか?


「もしかして……2ーAの方ですか?」

「おう、あんたらは2ーJだよな。なら一緒じゃねぇか」

「どういう事だ?」

「つまりなーー」



 俺は簡潔に分かりやすくどういう事か教えて貰った。


 その魔法聖祭ではA〜Jまでのクラスが平等になる様に組み分けされる。

 それが高等部から初等部まで五つのグループに分けられる様だ。

 体育祭だね。

 そうなると必然と強いクラスは弱いクラスと同じグループになる。

 例年であれば僅差がないために、ごちゃ混ぜになるが、うちのクラスは学年3強が揃ってる。言い方は悪いが学年成績の悪いところと組み合わせる事になるのだ。


 中等部まではクラスに成績の差はないはずだが、上手い具合に優秀な生徒がいないクラスになった様なのだ。

 ランダムなクラス分けかは分からないが、やっぱりそういうのって出てくるんだなぁ。

 やっぱり環境って大事だ。


 となるとビュッフェのクラスは結構凄いクラスと推測出来る。


「だけどよ……ジャッファル君」

「なんだよ」

「後ろを見たまえ。もう少しオブラートに包んだ方が良かっただろうに」


 後ろでは明らかに萎縮している生徒たちがいる。

 女性教員も半泣きになっている。


「劣等がなんだって言うんですか! 私たちだって努力してるんですよ! ……ぐすっ」

「だぁからぁ! うちの先生が鍛えればさっきの自称エリートなんてコテンパンなのよ。ね! 先生」

「俺に振らないで欲しいなぁ」


 とびっきりの笑顔に期待を寄せて問いかけてくるジャッファルに他の三人も同意見を示す。


「本当にあなたなら出来るんですか?」

「知らんよ」

「お願いします! この子たちにも希望を持たせてあげたいんです!」

「……クラスたちにも頼むが、お前らも困ってたら助けてやれるか」

「おうよ! 困ってる人がいれば助けろって父ちゃんにも言われてるからな!」


 自分の拳を胸に当てて自信を表明する。

 なら良いか。


「それじゃあ始めようか」

「あん? こんな狭いところで始めんのか?」

「そんな訳ないだろう。図書館に迷惑だろ」

「ならどうすんだよ」

「こうする」


 俺は図書館の裏の壁に手をかざす。

 すると目の前に一つの扉が現れる。


「ほら、入んぞ」


 俺は扉を開けて中に入る。

 するとそこは四つの景色に区切られた光景が映し出される。

 東は地平線まで続く草原。

 西は生い茂った木々が生えているジャングル。

 北は灼熱の砂漠。

 南はビーチだ。

 ちょうど中央には100坪程度の休憩部屋を設けた。

 我ながらやり過ぎたぜよ☆

 いやぁ、創造魔法を使うの久しぶりだったからなぁ。


「「「「「「「「………………」」」」」」」」


 おやぁ?

 みんなどうしたんだい。絶句じゃないか。


「……先生……これって夢かなのか?」

「魔法で創りました」

「魔法って何でも出来るんだなぁ」

「んじゃあ付いてきてくれ……おっと、その前に」


 パチンッ


 指を鳴らすと同時に一つの門が現れる。



「お久しぶりです。ご主人様」

「やぁ、ガブリエル。急に呼び出して済まない」

「何を仰います! 主人にご奉仕する事こそ我らの至福。存分にお使い下さい」

「あー、うん。そうだね」


相変わらずの言い様だ。

というか……女性教員の方を含めて生徒たちも絶句している。


「ガブリエルには悪いが、ここの設備を女性教員の方と女学生に教えて欲しい。構造はうちの地下の娯楽ルームを抜いたのと、地上は連結した形にした」

「承りました」

「あと『青龍の間』という部屋に運動着があるから着替えさせておいてくれ」

「はい、承知しました」


 俺は男子どもを引き連れて他の部屋に向かおうとする。


「あ……あの!」

「はい?」

「私にはレナと言う名前があります! 女性教員の方はやめて下さい!」

「分かりました、レナさん。俺の事は涼太と呼んで下さい」


 そう言えば名前も知らなかったな。

 レナさんね、覚えました。


 それは置いとき俺たちも移動しないとな。


「先生」

「何だよ」

「何あの超絶美人」

「うちのメイド」

「マジで羨まし過ぎるだろ! チクショウ!」


 バンバンと俺の背中を叩き悔し涙を流す。

 もの凄くフランクだけど、俺って一応先生何だよね。まぁいいか。


「そう言えば、その魔法大会までどれくらいの時間があるんだ?」

「なんだ、知らねぇのか」

「俺は今日来たばかりだ」

「そうだった! 今日から一ヶ月後だぜ」


 一ヶ月後か……。

 ならギリギリいけるか?

 流石に実戦とまではいかないが、それ相応の実力は付けられるな。



 ♢♦♢




「ガブリエルは何かして欲しい事はないか?」

「して欲しい事ですか」

「ガブリエルにはいつも世話になってるから、俺からお礼がしたいんだよ」

「いえ……そんな……恐れ多いです」


 ガブリエルは今までにない様な表情で視線を逸らす。

 おや、こんな表情は初めてだな。

 これはこれで新鮮味がある。


「言ってしまえばご褒美だよ。遠慮はいらないよ」

「そ……それなら頭を撫でて欲しいです……」


 えらく可愛いお願いじゃないか。

 それくらいなら、いつでも言ってくれればいいのに。


「いつもありがとう」


 俺は後ろから優しく抱擁して頭を撫でながら感謝の言葉をかける。


「は……はひゅう……」


 いつも冷静沈着なガブリエルが顔を真っ赤にしている。

 うん、こう言う姿もいいな。

 あれだな……娘を褒めてるみたいだ。


「あ……ありがとうごさいました」

「いいよ、それよりもそろそろ時間だろう」

「そうですね。飲み物は私が持ちます」

「よろしく頼むよ」


 俺とガブリエルは外に出て行き、草原の方まで歩いていく。

 すると何やらドスンドスンと大きな物が揺れ動く足音が聞こえる。


「ご苦労様です、ファーブニル。また呼びます」

(はい、いつでもお呼び下さい)


 ファーブニルはその合図と共に消えていく。

 そして残されたのは息を荒げてその場に倒れている生徒+レナさん。


「ゼェゼェ……マジで死ぬ」

「お疲れさん、ほら飲み物だ」


 俺はガブリエルの持っている箱の中からドリンクの入っている水筒をジャッファルに投げる。

 ジャッファルはそれを受け取りゴクゴクと豪快に飲む。

 他の生徒たちも命の恵みを求めて群がる。


「な…なぜ私までやる必要が……」


 生徒たちと同じ様に汗だくで倒れているレナさん。


「先生は漢字の通りに、先を生きるという意味がありますよ。生徒よりも劣っていたら示しがつかないでしょう」

「な……なるほど」


 レナさんは納得した表情でコクコクと頷く。

 生徒たちだけでやるよりも先生も一緒にやれば好感も持たれるだろ。


「いや……ゼェ……ドラゴンに追いかけられるのはおかしいだろ」

「人間、死ぬ気になれば何でも出来るんだよ。一ヶ月の実戦なしならこれが一番早い」

「続かねぇよ」

「ちゃんと終わったらご褒美もあるさ」

「褒美?」

「まぁ楽しみにしとけ」


 俺はニヤニヤとしながら生徒たちを見る。

 生徒たちは聞き入れる余裕がなく、絶望した表情でその場に座り込んでいる。

 そんなにキツかったか…もともとクリスはおてんば娘ってのもあり、体力はあったからなぁ。

 ミセルは言うまでもないが、残りの2人も朝はクリスたちの朝練に付き合ってるから知らんな。


「体力トレーニングはこのくらいにしてお待ちかねの魔力付与型体術を始めようか」

「おっしゃ!」


 ようやく終わった地獄から解放されたの全員喜びをその場で分かち合う。

 レナさんも生徒たちとハグして喜んでる。





 さて始まるとは言っても、やる事は今日の一時間目にやっていた事だ。

 俺は一時間目の事をリピートして教えていく。



「これだよ! 俺がやりたかったのはこれだよ!」


 ジャッファルと男子たちは無駄にテンションが高い。

 やっぱり一瞬で相手の懐に入る技とかって憧れるんだね。

 確かにカッコいい。


「それじゃあ適当に頑張れ」

「「「「「「うぃーす!」」」」」」

「「「「「「はい!」」」」」」



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