70話 ラバン王国の冒険者ギルド
年末ですね。
よいお年を。
以前に投稿した話を少しずつ修正していくつもりです。
1話を修正しました。
ガウスさんが帰った後に、荒れた草原を元どおりにする。
「ご主人様、凄かったです!」
「大迫力でした!」
メイドたちは賞賛の声を上げる。
「ありがとう、この後に冒険者ギルドに顔を出すからクリスたちが帰ってきたら冒険者ギルドに行ったと言っていてくれ」
「分かりました」
俺は昼食を取ってから、冒険者ギルドへ向かった。
中は騒がしい、やっぱり冒険者ギルドはどこでも同じだな。
「おい、涼太! ようやく来やがったか」
あれ?
カインじゃん。
何してんの。
「何で、お前がラバン王国にいるんだ?」
「俺も護衛でラバン王国まで来たんだよ。学生の護衛で大抵のやつは来るぞ」
なるほど、確かに学園は数多の国々から集められてるって言ってるから確かに道理だな。よく見ると、知り合いもちらほらいる。
「貴族の護衛……じゃないよな?」
「そりゃ、貴族は普通は自分とこの騎士団を護衛に付けるだろ。冒険者は普通のやつらの護衛だ」
「へー、というか、仕事はいいのか?」
今日は空も晴れて、かつ日中なので絶好の依頼日和だ。俺って呑んだくれているところしか見た事がないんだけど、大丈夫なのか?
「おぅ! 昨日に他のパーティと組んで、デカいヤツを仕留めたんだよ。だから今日はいいんだよ」
何とも気ままなやつだ。いや、それこそ冒険者の資質でもあるんだがな。
「ちなみに何?」
「聞いて驚け! なんとドラゴンだぜ!」
「え……レッサーコモドドラゴン?」
ちなみにレッサーコモドドラゴンはEランクの魔物で、見た目はドラゴンっぽい。しかし、大きさはウルフ程度で弱い。一応はドラゴンと付いているのでそれなりの値で取引される。
それなら出会えば嬉しいんじゃないかなぁ?
俺も滅多に出会わないし。
「んな雑魚じゃねぇよ、レッドドラゴンだ。それも亜種だぜ」
「まじか!?」
俺は驚きに目を見開く。
予想していたであろう反応が嬉しいのか、カインやその周りにいた連中も頬を緩ましてニタリと気色の悪い微笑みを向ける。
「というか、何で知らねぇんだよ。結構な大事だったぞ?」
「いや、ちょっとな……こっちはこっちで忙しかったんだよ」
俺はいつも通り、近くにある椅子に腰掛ける。飲み物はギルドの役員のひとが持ってきてくれた。
「へぇ、何してたんだ?」
「ハイゼット家の当主から娘を強くしてくれって頼まれたんだよ」
「随分信用されてるじゃねぇか。それでどこで戦ったんだ? やっぱ、道中のついでにいたゴブリンとかか?」
「いや、樹海で……」
ガタッと大きな音が聞こえた。
よく見ると、迎えに並べられていた食器類が崩れている。
ザックたちはドン引きした表情で俺を見る。
何だよ、その「うわぁ、バカだろ」って顔は。
「お前……それって、死の樹海だよな?」
「おぅ」
「鬼畜過ぎんだろ……その子は倒せたのか?」
「まぁ、ミセルもいたからな」
「ああ……戦姫か。そりゃ、任せるわな」
恐らくザックの脳内では怖がるクラスをミセルが助ける形で戦っている情景を浮かべているのだろう。そりゃ、そうだわな……ミセルは例外として、クラスは貴族のお嬢様だ。普通は戦わんよな。
「クリスもミセルと一緒に戦ってたぞ? 割と率先して魔物も倒してたし……」
「おいおい、どんなバケモンだよ」
「まぁ……天才ってやつだな。教えてて凄いと思ったよ」
「カッー、羨ましい限りだぜ! 俺も魔法を使えてりゃ、宮廷魔導師にでもなってらぁ。金も結構貰えたんだろうな」
カインは文句を垂れながら、やけ酒を飲むが如くジョッキをお代わりしては飲み干す。
「カイン、飲み過ぎだぞ」
「気にすんなや、それよか頼みてぇ事があるんだが」
「ん? 何だよ」
「そのドラゴンでメシを作ってくれねぇか?」
ドラゴンのメシねぇ、肉だよな。
俺がめんどくさそうにしていると周りにいた奴らもお願いしてきた。いや、ドラゴンは調理した事ないけど大丈夫かな?
「お前らじゃ、出来んのかよ?」
「料理スキルなんざ、あるわけないだろ。冒険者なめんな!」
いや、キレんでもいいだろう。
「それで俺だと……」
「料理スキルを取ってるもの好きな冒険者なんざ、俺の知る限りでもお前しかいねぇよ」
もの好きは余計だ。仕方ないだろう! 神様に料理振舞ったり、迷宮のクソ堅い皮膚を剥がしり、毒物を特殊調理してたら自然とレベル上がったんだから。
朝にクリスたちの朝食を作っては、おそそわけする為のお菓子を作る。更には、アテナたちの分も作って転送したりするんだよ?
何ライフですか? 異世界チート生活じゃなくて、異世界料理生活ですか?
認めん! 断じて認めません。
「ギルドの料理人は?」
「頼んだが、レベルが足りないと断られた」
「貴族とかの料理人なら大丈夫だと思うぞ?」
「アホか、ゴッソリと搾取されて終わりだろ」
うーん、ジグルさん辺りなら心配はないだろうけどな。爵位が低いならそれだけ欲求にまみれたやつも多いから無理。かと言っても、公爵なんざに頼む度胸は無しってところか。
「どれくらいスキルは必要なんだ?」
「料理スキルはLV50は必要だ。王宮料理人でもそうそういねぇな」
「それで冒険者の俺に頼むのはおかしいと思うんだがなぁ」
「でもお前なら足りてるだろ?」
「まぁな……」
俺は自分のスキルを確認する。
色々増えたスキルの中から探す手間は非常にめんどくさい。スキルの融合でもしてみるか?
お、あったな。料理ね……えーっと…料理LV.94か。だいぶ上がったなぁ。
「ドラゴンの肉ってどれくらいある?」
「軽く60トン近くはあると思うぞ」
結構あるな、それなら1パーセントくらいは貰おうかな?
「それなら、俺にも肉くれ。具体的には50キログラム程度」
「一口だろ」
「おいおい、料理してやんねぇぞ?」
「てか、何でそんなにいるんだよ」
「孤児院の子供たちに食わすために決まってんだろ。喜ぶだろ」
「お前……本当に冒険者なのか主婦なのか時々わからんわ」
「返答は?」
「ガキどもの為ならしゃあねぇか? 他の奴らにも聞いてくれ」
確かにそうだな、ドラゴン自体はカインだけじゃなくて大勢で狩ったからそれが道理だ。
「食えるんならいいんじゃね?」
「牙とかじゃないし良いぞ」
「子供たちにならね」
「まぁ、カインの知り合いならな」
「いいぜぇ、涼太の頼みだからな」
良かった、以外に快く了承してくれたな。
良い奴らじゃんか。
「ちょっと待てや」
1人の男が俺とカインの間に入ってきた。
俺の方を向くと下から覗き込むようにしてガンを飛ばす。
分かります、典型的なやつですね。
「こんな見るからにひ弱そうなモヤシが何偉そうに喋ってんだコラ? ドラゴンは俺たちが狩ってきたんだぞ、俺たちだけで食うのが道理だろ」
「おい、マジル。やめねぇか」
「大体こんなモヤシに頼むこと自体おかしいんだよ。おら、とっとと作ってこい」
命令形ですか。それがものを頼む態度かコラ?
調子乗ってると……あれだよ? うちの馬のエサにしちゃうよ?
「モヤシ、ランクはなんだ?」
「成り立てのDだが?」
「くははっは、雑魚じゃねぇか。俺はCになって2年の猛者なんだよ。頭が高いぞ?」
「カインは?」
「俺は前の大侵攻でBランクになった」
へぇ、確かCまでが中級者だったよな。
という事はBは上級者の部類に入る。カインも上級者の仲間ってことか凄いな。
「おめでとう」
「お前ならすぐに上がってこられるだろ。社交的な言い方ではなくマジで」
「好き勝手させて貰ってるからな」
「マジで頼むぜ、お前と狩に行くの楽しみにしてんだから」
「分かったよ。けど難しいと思うぞ、俺、学園の臨時講師として雇われたから」
「スゲェな」
カインは目を見開き驚く。
そんなに凄いことか? うーん、やっぱり凄いことか。世界最大の学園の臨時講師だけど講師って言うくらいだからね。
「冒険者辞めんのか?」
「違うからな、冒険者の依頼として臨時講師をするって事だから」
「おいおい、それって一定にポイントが入ってくるって事か。ウマウマじゃんか」
「まぁ、そんなに多くはないだろうよ」
「羨ましいな。まぁ、頼むぜ」
「おう」
俺とカインは互いに力強い握手をする。
「無視してんじゃねぇよ!」
あ、ごめんなさい。
すっかり忘れてました。
居ましたね。
「で、俺はどうしたら良いんだ?」
「俺と勝負しろや。勝ったらお前を認めてやんよ!」
「内容はどうすんだよ」
「今流行りの腕相撲だ。言っておくが俺は同じランクの中では無敗の男だぜ」
無敗をアピールしてるけど、つまり上の冒険者たちには勝てませんってことね。
カインに視線を向けると、頷く。
そう言うことですか、でも同ランクって事は結構やる方ではあるのね。
「んじゃあ、手っ取り早くやろうか」
「おう、お前ら。審判は任せた」
俺とマジルは机の上に肘を乗せてお互いに向き合う。
「ねぇ、カイン。あの子危ないわよ」
「んぁ、そうだな。危ないよな、 」
「ちょっと、何呑気な事言ってんのよ」
「涼太を心配してんなら大丈夫だ」
セリア王国にいた知り合いは結果が見えているのか、ニヤニヤと笑いを堪える。他の冒険者たちは心配そうに俺を見る。
「よし始めんぞ。レディー、ゴー!」
ドゴォン!
何かがめり込むような音が聞こえた。
よく見るとマジルの拳の方に小さなクレーターが出来上がっている。
当人はあまりの出来事に気絶し、その場に倒れ込む。
「はい、涼太の勝ち。肉は任せた、厨房に置いてある」
「分かった」
俺は厨房に行き、ギルドの料理担当の方に挨拶をしてから調理を始める。
取り敢えず、唐揚げ用のタレが入ってるボールにぶち込んで味をなじませておくか。後はハンバーグやらステーキでいいだろう。付け合わせにマッシュしたジャガイモでも入れておこう。宣伝にもなる。
時間は進めて調理をするとは言え、かなりの量になるから時間自体はかかるだろうな。
そう言えば、Tボーンステーキって骨があるから邪魔と思ってたけど、骨の周りが一番美味しいからなんだよな。中落ちもそれと同じだよな。
「おーい、まだかー!」
「まだ数分しかたってねぇだろ! そんな短時間で作れるか!」
「なんか欲しい」
なんか欲しいって何だよ。
仕方ないな。
俺は数個のレモンをカットする。
「おら、軟骨の唐揚げだ。これでも食ってろ」
俺はアイテムボックスの中に入れておいたものを机の上に出す。するとすぐに貪るかの様に冒険者たちが群がってくる。
その間に俺はテキパキと揚げては焼いてを繰り返して、出来上がったものを大皿に積んでいく。
「出来たぞー」
「おっしゃァァァッ! よこせよこせ」
俺も皿を全て運び終わったところで席について実食する。
おお! うまい。普通に美味いぞ。
「やっぱっ、狩った甲斐があったぜ」
他の冒険者たちも感動し、ゆっくりと食べていく。皿にあった肉たちはみるみるうちに胃袋の中へ消えていく。
「ふぅ、美味かった」
「おぅ、美味かったな。また頼むぜ」
「分かった。腹も膨れたしウチに帰るわ」
「じゃあな」
ドラゴンねぇ、どこに住んでんだろ。
迷宮にいるかなぁ? 居たら狩ろう。