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68話 四人と訓練部屋



「涼太さん、帰りました」

「お帰り、シャーベットあるけど食べる?」

「食べます!」

「あら、その子たちは誰ですか?」


 俺の隣にいるメイドたちにシャルとロゼッタが疑問に思う。

 そうか、クリスたちは知っているけどシャルロットたちは初めてだな。


「うちのメイドたちだよ」

「涼太さんは、メイドを雇ってらっしゃたのですか?」

「行き場のない子たちを預かって、メイドにしたんだよ。仲良くしてやってくれ」

「もちろんですわ、よろしくお願いしますね」


 比較的友好的に接するシャルとロゼッタ。

 良かった、仲良くやれそうだ。


「それで、シャーベットとは何ですか?」

「冷たいデザートだよ。今回は果実を凍らしてそのまま削ってみた」

「どこですか!」


 俺の家では、果実=ジュエルシリーズなのでクリスは血走った目であたりを見渡す。


「まずは手を洗ってから、服を着替えてこい」

「「「「はーい」」」」


 すぐにクリスたちは部屋着に着替えてきた。


「ほい、どうぞ」


 俺はテーブルにシャーベットを出す。


「凄く冷たいですわね。氷みたいですわ」

「全然違いますよ! 食べてみて下さい」


 クリスの誘いに、シャルとロゼッタは恐る恐る口に運ぶ。


「ん〜〜! クリスちゃん、凄く美味しいよ!」

「でしょ! 暑い時には更に美味しく感じれるんですよ」

「本当ですわ、私は涼太さんの家に来て本当に良かったと思いますわ」

「美味しいですね、流石は涼太様です」

「それじゃあ、食べ終わった後に魔法についてやろうか」



 その後に、クリスたちは全員ジャージに着替えて来た。


「さあ、やりますわ!」

「いや、まだ特訓はしないぞ」


 実践的な練習をすると思っていたのだろうか。

 まずは知識だろ。


「根底から考え方を正す必要があるんだ。まずはどういう事か講義からだよ」


 俺たちは大きな黒板がある。

 そして、30ほど用意した席。

 日本の教室をそのままコピーしました。

 クリスたちは最前列に座る。

 クリスたちは俺が用意したシャーペンやボールペンにルーズリーフを机に出し、シャルとロゼッタは羽ペンと羊皮紙を用意する。

 ここで時代の差が生まれた。

 凄い絵面だな、数百年は差がある光景だ。


「ごめん、このペンを使ってくれるかな」


 俺はルーズリーフとシャーペンを二人に渡す。


「これは何なんですの? インクがありませんが」

「凄いサラサラの紙だよ!」

「そのボールペンはいちいちペンにインクを付けなくてもインクが出てくるんです。シャーペンは芯が入っていて、消しゴムという物で消すと消えるんですよ!」


 クリスの自慢げな説明を二人は聞いて、目の前にあるルーズリーフに試し書きをする。


「何なんですの! こんなにもサラサラ書けますの!? 凄いですわ!」

「本当だ! 字が消えていくよ! こんなにも書きやすいんだ」


 二人は最先端技術にしばらく感動しながらペンに夢中になる。


「あの、講義を始めたいんだが」


 己を忘れていた二人は現実に戻ってくる。


「では講義を始めるよ。まずは今まで学園で習った事は忘れて下さい」

「魔法の詠唱も必要ないですの?」

「原理さえ分かれば詠唱なんて必要ないよ」

「しかし、学園で習ったことには覚えなければ出来ないと書いてますわ」


 ロゼッタは学園で支給されたであろうクソ分厚い教科書をおれに見せる。


「ロゼッタ君、それは157ページ目の太字で書かれていることかな?」

「何で分かるんですの」


 教科書の内容は夏季休暇にクリスから見せて貰って、頭の中に一字一句全て入っている。

 実に無駄な内容だった。

 以前に神界で読んだ『ミノタウロスといっしょ!』の方が面白かったよ。


「まずは、水と火についてだ。クリスとミセルはすでにやったから二人をフォローしてくれ」

「分かりました」「承知しました」


 俺は以前にクリスとミセルに説明した様に水と火の原理について黒板に書いてく。

 四人は黒板に書かれた内容の説明を聞きながら、板書をしていく。


「ーーという事だ。急にこんな事を言われても分からないだろう。次は実際に黒板に書いた事を実践するよ」


 以前にクリスとやったアルコールランプと水と容器を用意する。

 俺は水を入れた容器にアルコールランプをかざす。

 しばらくすると水は全て蒸発し、空中に霧散していく。


「なぜ水は無くなったかの説明は出来るかな?」

「はい! 蒸発して空気に溶け込んだからです!」


 クリスは元気よく答えを言う。


「うん、正解だけどちょっと黙っていようか」

「どういうことですの?」


 俺は黒板に書いたことを併用して、再び実験して説明する。

 二人は真剣にその話を理解するまで何度も聞く。


「なるほどですわね。確かに説明がつきますわ」

「面白いね、こんな風になっていたんだ。学園の勉強とは全然違うよ!」


 ロゼッタは関心を持ち、シャルは原理を分かった事に喜んでいる。

 シャルって、覚える事が嫌いなんだな。

 だから魔法の詠唱もうまくいかなかったんだ。

 理解をしたら凄い成長を見れそうだ。


「それじゃあ、実践しようか」


 俺たちは訓練部屋の草原へ移動する。

 家の中に草原がある事に頭を抱えるロゼッタともうすでに慣れてしまったシャルである。


「それじゃあ、空気中に溶け込んだ水を集めるイメージをしてみてくれ」


 二人は集中して、手のひらに水を集めるイメージをする。

 すると、結果はすぐに現れた。

 小さいが、二人の手には水の球体が。


「本当に出たよ! 凄い!」

「こんなにも簡単に出来たしまうのですわね」


 二人は感心しながら自分の出した水の塊を見つめる。


「二人とも、気がついてないんですか?」

「何がですの?」

「どうしたの?」

「今二人は無詠唱で魔法を発動したって事だよ」


 クリスの言葉に二人は衝撃を受ける。


「本当ですわ、いつのまに……」

「ボ、ボクが無詠唱を?」

「これが、先ほど涼太様が魔法は詠唱が必要ないって言ってた事です」

「なるほど、確かに必要ないですわね」

「学園とは違うってこういう事なんだ」


 分かってくれた様で何よりだな。


「クリス、ミセル」

「何ですか?」

「どうされましたか?」

「俺と模擬戦をするぞ」


 俺の言葉に二人は固まる。


「いやいや、無理ですよ」

「そうです! 私たちが涼太様に勝てるはずありません!」

「大丈夫だ、手加減はするよ。二人に目安としてクリスとミセルの実力を見せたいんだよ。それに、ロゼッタの屋敷の時は手加減していただろう?」

「まあ、そうですが」

「え、あれで手加減ですの?」

「二人は見ていてくれ。一ヶ月でこのレベルには近づけるようになる」


 俺は結界を二人の周りに張る。

 二人も準備をする。

 クリスは後衛に、ミセルは剣を出して構える。


「ミセル、剣を使うのはダメなんじゃないのかな?」

「涼太様なら受け止めてくれるでしょう」

「う、うーん。分かったよ」

「それじゃあ、涼太さんを一歩でも動かせたなら新しい魔法を教えて下さいね!」

「分かったよ、全力でこい」


 その合図に二人は、戦闘モードに切り替わる。


「ミセル、最初から吹っ飛ばすわよ!」

「はい!【全能強化オールマイティ】【雷電・纏】」


 ミセルのオーラが跳ね上がり、剣に雷が纏う。

 おいおい、マジで全力出してきてんじゃねぇか。


 ガキィン!


 俺はとっさに剣を創造する。


「なぜ、痺れないのですか?」

「まさか剣に雷を纏わせるとは驚きだよ。でも残念、俺は雷に耐性を持ってるんでね」

「くっ、これだから!」


 ミセルは常人には見えないスピードで剣を振るうが俺には当たらない。

 すると、突然ミセルは下がる。


「【氷河世界ブリージングワールド】【コキュートス】【絶氷世界アブソリュートゼロ】」


 クリスから昼間に見せた上級魔法が放たれる。

 俺の教えた上級魔法を全てつぎ込んできやがったか。

 俺じゃなかったら死んでるぞ。


「【炎獄】」


 氷で閉ざされた世界が一瞬にして灼熱の大地に変わる。


「そ……そんな」


 二人は急激に上昇した空間に耐えきれず倒れる。

 俺はすかさず魔法の発動をやめる。


「終わりだな」

「本当にどうすれば勝てるのでしょう」

「涼太さんは強すぎます!」

「俺も驚いたぞ、手を抜いていたらヤられてたかもな」


 シャルとロゼッタは呆然としていた。


「本当にこれだけの実力を身につける事ができますの?」

「私にも出来るのかなぁ」

「そこは二人の努力次第だと思うぞ。時間はあるんだし頑張れ」



 ♢♦♢



「学園長、クリスさんたちの情報が集まりました」

「ほうほう、流石は仕事が早いのぉ」


 学園長は待ちわびたかの様な態度を取る。


「で、どうじゃったかな?」

「まず、クリスさんについてですがラバン王国に来るまでに護衛はミセルさんともう一人だけとの情報がありました」

「ほう、ハイゼット家の護衛が二人だけか」

「それと、クリスさん、ミセルさん、シャルロットさんの三名が寮を出て行ったとの情報が入りましたので、学園長室を出て行った後に追跡をしました」

「どうじゃったかな?」


 興味深そうに学園長室は秘書へ尋ねる。


「先ほどいた四名はその後に、とある家へ入っていきました」

「どこの家じゃ?」

「あそこです」


 秘書は学園長室の窓から学園の目の前にある家を指差す。


「目の前ではないか」

「私もこんなにも近くだとは思いませんでした」

「クリスくんたちが買ったのかい?」

「商業ギルドからの情報ですと、とある冒険者が買ったとの情報です。その際に、学生も同伴していたとの事です」

「その冒険者についての情報は?」

「先日ついたばかりの様なので、詳しい情報はありませんね。冒険者ギルドにも顔を出していない様です」


秘書は淡々と持ってきた情報を口にする。


「ではその家に行くとするかのぉ」

「今からですか?」

「いや、今クリス君たちが帰ったのだろう? なぜか私は避けられている様だ。明日のクリス君たちが登校した後にしようか」

「分かりました」


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