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66話 住居確保パート2

 一通りの手続きが終わったので、家は正式に俺の物となった。

 二日しか泊まっていないが、黄金の猫亭はチェックアウトする事にしようか。



「少しの間ですが、お世話になりました」

「こちらこそ、月宮様の様なお客様に泊まって頂き光栄の極みです。またのご来店をお待ちしております」


 俺はオーナーさんに挨拶をする。

 その時に泊まるはずだった残金を渡されたが、自分が泊まる時に言ったこともあるのでチップとして取ってもらう事にした。


(主様、おかえりなさいませ。どうされましたかな)

「家を買ったから、移動するぞ」

(承知しました)


 俺はレイニーにハイゼット家の馬車を取り付けて、家まで運んで貰った。



(おお、ここが主様の家で御座いますか。少し小さいですな)

「また呼ぶわ。じゃあな」

(へ?)


 俺はレイニーを神界送りにする。

 面倒はメタトロンあたりが見てくれるだろう。

 馬車は亜空間に入れておく事にした。


「涼太様、お戻りになられましたか」

「うん、みんなの様子はどうだい?」

「お嬢様は早く涼太さんに来て欲しいと、ひたすら喚いてます」

「何かあったの?」

「いえ、恐らくは涼太様の力で部屋を改装するのが待ちきれないんだと思われます」


 ああ、そういう事ね。

 それじゃあ、向かおうか。



「涼太さん、やはりここで練習するには少し狭い気がしますわ」

「だから、ロゼッタ。先程から言っているでしょう、涼太さんに任せて下さい」

「はぁ」

「よーし、それじゃあ始めるから少し下がっていてくれ」


 俺の合図に全員が下がる。

 クリスは今か今かと待っている状態だ。

 ロゼッタとシャルは何をするのか分からないといった表情だ。


 よし、完了だな。

 区別するために模様替えでもしとくか。


「入っていいぞ」

「お邪魔します!」


 クリスは真っ先に家の中に入っていく。


「はぁぁぁぁぁ!?」

「どうなってるんですか?」

「二人共、土足は厳禁ですよ」


 すでに靴を脱いでアイテムボックスに入れているクリスとミセルを見て更に驚く。


「はぁ!? 何でアイテムボックスなんか持っているんですの。おかしいですわ!」

「いいなぁ、初めて見たよ」


 ああ、そうか。

 靴をわざわざ玄関まで取りに行くのも面倒だな。


「ほい、二人共どうぞ」


 俺はアイテムボックスから前に作ったやつを渡す。


「何ですかこれは?」

「アイテムボックスだけど?」

「「なっ!」」

「良かったですね」

「いや、あり得ませんわよ。なぜそんなにポンポンとアイテムボックスが出てくるんですの。おかしいですわ!」

「まあ、深い事は気にしないでくれ。それとも必要ないか?」

「貰えるんですの?」

「わざわざ見せびらかすために出すわけないだろう」


 渡された二人は、宝物の様に大事に腰へ下げた。



「それじゃあ、涼太さん」

「何だよ、クリス」

「ここに住まわせて下さい!」


 クリスは渾身のお願いの如く、俺に向かって土下座をする。

 とてもその姿は公爵家令嬢とは程遠い姿だ。

 ミセルなんかは、ひたいに手を当ててやれやれといった表情だ。


「理由を聞こうか」

「ここなら学園の目の前にだし、クーラーも部屋にあるし、美味しいご飯だって出ます! 大っきなお風呂だって毎日使えます。蒸し暑い生活は嫌なんです! それにお父様もここには居ませんから口出しもされません!」


 清々しいほどのクズ発言を躊躇なく発言するクリス。

 本当に出会った時と比べて変わったな。

 誰のせいだ?

 俺のせいか。


「寮の方はどうするんだ」

「もうありません!」

「どういう事だ?」

「お嬢様は私が居ない隙を見て、寮を出て行くと契約書にサインをしてしまったのです。本当に申し訳ありません」

「つまり、今日からクリスとミセルは泊まるところがないと?」

「「はい」」


 馬鹿だろ。

 本当に何してんの?

 俺の家は中毒性でもあるのか?

 当たり前の様に言っているけど、飯を作るのって俺なんだよ?


「部屋は好きに使えばいいさ、だけど俺は冒険者だ。家にいない時な自分たちで家事はやれよ?」

「「分かりました」」


 まあ、ミセルも居るんだし大丈夫だろ。

 メイドたちにも定期的に来るようにお願いしよう。


「ちょっと! 私たちを除け者にしないで欲しいですわ!」

「そうだ! シャルも一緒に住まない?」

「で、でも。迷惑だよ」

「一人や二人が増えただとかで変わらないから、俺は別にいいよ」


 シャルはしっかりしてそうだし、クリスが暴走した時の抑止力にもなりそうだ。


「よろしくお願いします」

「それなら、私もここに住まわせて頂きますわ!」

「ロゼッタは屋敷がすぐ近くにあるじゃないの」

「私一人だけは嫌ですわ!」

「いや、家の人も急に居なくなったら心配するだろう」

「お父様は私が説得しますわ!」





 はぁ、来ました。

 またロゼッタの屋敷に戻って来ました。

 クリスたちは自分たちの寮にある物を持って来ると、一時的に学園の寮へ戻った。


 そして、俺は危機的状況に今ある。

 あれだな。

 結婚相手の実家へ挨拶に行くってこんな感じなのかな。

 雰囲気が正にそれなんですけど。


「お父様、私を涼太さんの家に住まわせて頂く許可を下さい!」

「ならぬわ! 涼太、貴様ぁ。娘をたぶらかしたな!」

「何でそうなるんですか。それから泊まるのは俺とではなく、クリスたち(・・・・・)とです」

「それでも貴様が居ることに変わりは無いだろう!」

「いや。まあ、それはそうですけど……」


 俺の家なんだから、俺が居るのは当たり前だろ。

 どうしろと?


「何かあってからでは遅いのだ!」

「涼太さんは紳士的な方ですわ!」

「出会って、数日の奴の何が分かる!」


 ごもっともです。

 ジグルさんとは、今日出会ったばかりだもんね。


「では、様子見という事でどうですか? ジグルさん自らが抜き打ちで定期的に俺の家に来るんです。何もなければそれで良し、何かあれば俺を煮るなり焼くなり好きにして構いません」

「それですわ!」

「ふむ、一理あるな。分かった、定期的に私がお前の家に行くという事で手を打とう」


 なんとかジグルさんを納得させる事は出来た。


「それじゃあ、俺は先に帰っているからな。荷物はアイテムボックスに入れて来てくれ」

「分かりましたわ」




 疲れたわ。

 あと数刻で日が沈みそうだ。

 夕食の準備をしないとな。

 何にしよう。

 学生がみんなで集まるとなると…鍋?

 しゃぶしゃぶ出来る鍋にしよう。

 具材は豆腐、ネギ、きのこ、白菜やらを適当に入れとく。

 しゃぶしゃぶの肉は迷宮で取れたやつでいいか。


 俺は大鍋に火をかけてダシをしっかり取ってから具材を入れていく。

 あとは待つだけだ。


「涼太さん、帰りました!」

「私も戻りましたわ」

「よし、部屋の案内は後にして飯だ」

「ご飯は何ですか?」

「鍋」

「お肉はありますよね?」

「しゃぶしゃぶのやつがあるぞ」


 俺はテーブルにみんなを座らせて、鍋を中央に置く。


「これは、どうするんですの?」

「渡した小皿に自分で入れて食べてくれ」

「自分で取ったりするのは初めてですわね」

「いい匂いだね」

「一つの鍋をみんなで突き合うと親睦も深まるってどこかで聞いた事があるからな」

「私たちにぴったりですわね」

「それじゃあ、食べましょう!」


 俺たちは湯気が立ち上る鍋を食べ始める。

 クリスとミセルは箸で、シャルとロゼッタはフォークで刺して食べる。


「新鮮ですわね、こういうマッタリとした雰囲気は嫌いではありませんわ」

「ハフハフ、おいひいでふ」

「お嬢様、冷ましてから口の中に入れて下さい」

「お肉美味しいね」


 やっぱり、鍋にして正解だ。

 それにしても、不思議だよな。

 俺は昔、豆腐が嫌いだった。

 全く味がないのが好かなかったのだと思う。

 でも、今では豆腐は真っ先に食べる様になった。

 これが、子供の頃は嫌いだったけど大人になったら好きになってました現象か。




「さて、食べ終わった事だし自分たちの部屋を決めてから風呂にしようか」


 俺はクリスたちを空き部屋の階に案内する。


「本当にどうなってますの? これも魔法ですわよね」

「魔法だけどこれは例外だよ」

「凄いですわね」

「それで、どうする?」


 俺は再び尋ねる。


「洋室がいいです」

「私はお嬢様の隣部屋を」

「私もクリスちゃんたちの近くがいいです」

「では私もですわね」

「分かった、何か必要なものがあれば言ってくれ。クリス、部屋の説明やら風呂の事は分かるよな? あとは任せたぞ」

「了解です!」




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