64話 クリスの友達 パート2
あー、暇だから作り過ぎた。
ポテチとか何袋分あるか分からん。
孤児院に持って行こうかな。
パクっ
あー、美味い。
塩の効いた懐かしの味だ。
何でこんなに美味しいんだろうな。
それにしても手慣れたもんだわ。
最速の料理人になれるんじゃないのか?
普通は料理の過程で魔法は使わないしな。
コンコン
「月宮様、お客様をお連れ致しました」
「どうぞー」
その合図にクリスたちが部屋の中に入ってくる。
「涼太さん! 遊びに来ました!」
「おう、待ってたぞ」
クリスはいつもの様に元気よく飛び込んでくる。
「あら、あなたは昨日クリスと一緒にいた殿方ではありませんか」
「おや、縦ロールちゃんか」
「私にはロゼッタと言う名前があります!」
「ごめんごめん。それじゃあ、ロゼッタさんで良いかな?」
「クリスを呼び捨てにしているから、私もさん付けは必要ありません」
「わかったよ」
「あ、あの。ボクはシャルロットって言います。シャルでいいです」
「うん、よろしくね。俺は月宮涼太。涼太でいいよ」
シャルとロゼッタは涼太の姿を見た途端に思っていた人相と違い安心する。
「良かったです。凄く強い人って聞いたので怖い人かと思いました」
「全くですわ、緊張したこっちの身にもなってほしいですわ」
「まあ、こんなんだけどよろしくね」
シャルとロゼッタはベットに腰を下ろして座る。
「ここがスイートルームですか。ベットもフカフカです」
ベットに倒れ込み、満喫するシャル。
そんなに暴れると下着が見えるが、ミセルの視線が怖いのでやめておきます。
「涼太さん、食べていいですか?」
クリスはすでに目の前に並べられた数々のお菓子に目を奪われている。
「そうだな、折角作ったんだし食べるか」
俺はポテチをパリパリと食べるのをやめて、一人一皿を用意する。
「これはなんですの?」
「凄く美味しいんですよ! いただきます!」
クリスは慣れた手つきで、皿にケーキを移して口に入れる。
その瞬間に頬がほころび、緩んだ幸せそうな顔になる。
見た事のない幸せそうなクリスの表情を見た二人は、恐る恐る同じ様に皿に移して口に入れる。
「「ッッ!」」
食べた瞬間に二人は脳髄に衝撃が走った様な表情になる。
「どうですか? 美味しいでしょう」
「ふわぁぁ、美味しいです」
「あり得ませんわ、なんなんですの。なぜこんなにも美味しいんですの」
「二人はいつもこんなの食べてたの?」
シャルは嫉妬する様な眼差しで二人を見る。
「えへへ、そうなのよ」
「私は騎士団の訓練などがあるので、終わった後に」
「ずるいですわ、セリア王国から取り寄せるしかないですわ」
「無理ですよ」
「何故ですの?」
「これは全て涼太さんが考案したものなのですよ」
クリスは我が事の様に主張する。
いや、俺が考案したんじゃないんだけどね。
確かにこの世界で、現状は俺しか作れないけどさ。
もう飽きたけど、そんな表情を向けないでくれ。
「そう言えば、お嬢様。例の事は言わなくてもいいのですか?」
なんだ?
「そうでした。涼太さん、思いっきり上級魔法を使っちゃいました」
「涼太様、それには理由があるのです」
「何だ?」
「ケイオス学園の学園長が同席して、お嬢様が手を抜いていたのを見抜いたのです。次に手を抜けば、試験を落とすとまで言われたので致し方なくお嬢様は上級魔法を使われました」
へぇ、見抜ける人材がいるのか。
なかなかやるな。
「まあ、仕方ないな。俺が言いたかったのは、殺傷性があるから敵が現れた時以外は極力放つなって事だしいいんじゃないの?」
「それで、問題なのが明日に私とお嬢様が学園長室に呼ばれたという事です」
「それがどうかしたんだ?」
「正直に言うと、夏季休暇中のお嬢様の成長具合が異常なので、何をしたんだと追及があるはずです」
そうなるだろうね。
「私たちは涼太様の存在を上手く誤魔化す事が出来ない気がするのです。あの学園長は勘だけは異常に凄いので、私たちが嘘を言っても見抜いてくると思います」
あー、やだやだ。
俺が目をつけられるって事?
正に面倒ごとかよ。
「あの……先程からの話を聞いていると、クリスちゃんの成長が涼太さんと関係してるという風に聞こえるんですけど」
シャルは恐る恐る、疑問に思ったことを口に出す。
「そうよ、涼太さんのおかげで私はここまで成長したと言っても過言ではないわよ」
すると、シャルとロゼッタは目を見開いて俺の方を向く。
無表情が怖いです。
「クリス、一応聞きますわね。学園の授業と涼太さんに教わるのとでは相当違いますの?」
「学園の授業なんてゴミです。時間の無駄ですよ。教師はなぜあんな腐敗した固定観念を持っているのでしょうか」
ついに学園の事をゴミ発言しちゃったよ。
「な、なるほど。分かりましたわ」
ロゼッタはクリスのあまりの変容にすこし引きながらも納得する。
この後の展開が分かるんだけど……。
「涼太さん、私にも魔法について教えて欲しいですわ!」
やっぱりか。
まあ、そうなるわな。
「すまないな、俺って冒険者だから忙しいんだよ」
「涼太様、嘘はいけません。ラバン王国に来る際に、適当に暇しながら過ごすとおっしゃっていたではありませんか」
言うなよ!
忘れてくれよ!
過去の自分を殴りたい。
何でそんな発言をしたんだよ、くそっ。
「涼太さん、どうせ放課後は私の練習に付き合うのですから良いのでは?」
サラリと当たり前の様に発言するクリス。
え?
すでに決定事項になってるの?
グリムさんとの契約では、夏の間だけのはずなんだけど。
「あの……ボクって落ちこぼれなんですが大丈夫ですか?」
「ほら、涼太さん。子犬があなたに助けを求めています。涼太さんなら見捨てませんよね?」
確実に一つ一つ退路を絶ってくるクリス。
俺に断れない現場を易々と作り上げる。
「分かったよ、ただし家を買ってからだ。流石にこの宿の庭で毎日の練習は迷惑になる」
「それでしたら、紹介状が必要ですわね! 私は公爵家の娘。お父様にお願いしますわ!」
「いや、流石にさっき会ったばかりでそれは悪いよ」
「いいえ、これは私のためでもあります。訓練なら、必然と大きな庭が必要です」
うーん、確かにそうなんだけど。
俺の場合は創ればいいだけだしね。
どう説明しよう。
「ロゼッタ、その心配はないわ。でもそうね、学園が近いくて大きい土地の方が良いわね」
ちょっと。
俺の家についてなんですけど。
何で君たちがどうするかと言う話になってるんですか。
俺に合わせるべきだと思います。
「では行きましょう」
「え、今から?」
「善は急げ。涼太さんがいつも言っている言葉ではないですか」