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58話 道中のレベリング

 ラバン王国への出発当日、俺はハイゼット家の屋敷に移動する。

 荷物は全てアイテムボックスに入っているので、準備は必要ない。

 忘れたとしても空間転移を使えばすぐに帰れるから問題ないだろう。


「涼太よ、お前さんは馬車の手綱を握った事はあるのか?」

「ある訳ないですよ」

「むう、これは誤算だったな。ミセル一人に馬を任せる訳にもいくまい」


 グリムさんは頭を抱えて、やってしまったという雰囲気を醸し出す。

 そうか、馬車で行くもんね。

 馬車を引く人物も必要だよな。


 うーん、馬か。

 馬……。

 そうだ!

 俺が創造した馬なら俺の言う事も分かってくれるし、手綱をわざわざ握らなくても進んでくれる。

 久々に生物を創造するか。

 でも、創造よりは召喚の方が周りも納得するよな。


「グリムさん、俺の召喚獣で行くのはダメですか?」

「何だ? お前さん、召喚魔法も使えるのか。つくづく愉快な奴だな。馬車が引ければ問題ない」

「それでは、外に出ましょうか」


 俺たちは庭に出る。

 騎士団の人たちも見学する様だ。


 さて、やるか。

 馬、馬だ。

 来い! 馬よ。


 俺の目の前に大きな魔法陣が浮かび上がる。

 あれ?

 馬一頭にしては大き過ぎないか?


 ヒヒィィィン


「むう、これは……」

「大きいですな」


 そして、一頭の馬が姿を現わす。

 漆黒の毛並みに六本の足。

 馬というよりは象に近い大きさの馬。


「バカな! スレイプニルだと!?」


 グリムさんは驚きを隠せていない状態だ。


「凄いんですか?」

「神獣だぞ。各地で崇められている存在だ」

「へぇ、お前って凄いんだな」


 ヒィィン


 馬は俺の目の前に首を出してきて、顔を擦りつける。

 おお、可愛い奴じゃないか。

 ちょっ、顔を舐めるな。

 大きいぶん、ヨダレの量も半端ねぇ。


「懐いているのか」

「可愛いじゃないですか」

「むぅ、だが神獣だぞ」

「でも馬としては上出来ですよね」

「確かにそうだ。だが、大きすぎるな。馬車のサイズに合わん」


 確かにその通りだ。

 大きさからして、馬車をすぐにでも踏み潰せそうだな。


「なぁ、お前は小さくなれるのか?」


 ヒィィン


 するとスレイプニルはみるみるうちに普通の馬のサイズになった。


「おお、凄いじゃないか」


 ヒィィン


「何? 何が言いたいんだ?」


 俺の頭をひたすら小突いてくる。

 確か、神界のスキル一覧に『念話』があったな。

 よし、完了。


「すまないがもう一度言ってくれるか?」

(おお! 主様の声が聞こえますぞ!)

「うん、スキルを創ったからね」

(流石は私を創造された神。天晴れに御座います)

「神は止めろ。それで、何が言いたかったんだ」

(そうでした、私に名を頂けませんか?)

「お前って性別どっち?」

(何を仰います! この美しいたてがみを見れば女だと分かるでしょう)


 いや、声が中性的過ぎて分からんかった。

 そんな首をブンブン振り回すなよ。

 周りの人が驚いているだろう。


「お前の名はレイニーだ」


 スレイプニルから適当に取った。


(誠にありがとうございます。これより私は御身に仕える存在。よろしくお願い致します)

「あ、うん。よろしくね」


 こうして、俺は最強の馬を手に入れた。


「涼太さん、準備が出来ました! うわ、大きなお馬さんですね」


 クリスも出てきた。


「クリスよ、手荷物はどうした?」

「涼太さんがくれたアイテムボックスに全部入ってます」

「お前さんがアイテムボックスをか…すまないな」

「俺は気にしていませんよ」

「それでは出発とするか」


 クリスはグリムさんとラミアさんと抱擁を交わす。


「ではミセルよ、クリスを頼んだぞ」

「お任せください、グリム様」


 こうして、俺たちはラバン王国に向けて旅立つ事になったのだ。





 ガタゴト


 俺はある場所に向かう。


「涼太さん、どこへ向かっているのですか? ラバン王国と方向が違いますよ」

「うん、訓練だよ」

「あの……涼太様。この方角ってもしかして」

「樹海だよ」

「一体なぜ?」

「そんなの決まってるだろ。パワーレベリングをするんだよ」


 戸惑うクリスとミセルに向けて笑顔で告げる。




 レイニーには樹海の外で待ってもらう事にした。

 結界でも張っておこうかと尋ねたら、「この周辺の雑魚など私の一蹴りで片付きます」と言っていたので放置してきた。



 グワァァァァ


 目の前には魔物、Bランク程度かな?


「クリス、倒してみろ」

「え、無理ですよ」

「そうです! 涼太様、何を言っているのですか! 私にお任せ下さい」


 ミセルは剣を抜き、魔物に対峙する。


「ダメだ。俺はグリムさんに実戦慣れをさせてくれと頼まれた。ならば、クリスは自分で魔物を倒さないといけないだろう」

「だからと言っても、いきなりこのレベルは許容範囲外ですよ!」

「そうだな、クリス。お前はミセルを援護する形で魔法を打て。お前の実力なら、良い勝負が出来るはずだ」

「分かりました、やってみます」


 よし、がんばれ。

 とは言っても、たかがBランクの魔物だけどな。

 この程度で恐れてはダメだろ。

 俺なんかレベル1で最初の敵がレベル620だぞ?

 ゲームを始めたら目の前に裏ボスがいたんだ。

 この程度、どうという事はない!

 それにレベルの高い魔物は攻撃するだけで経験値が入ってくる。

 戦うだけでも意味がある。


「お嬢様、私に続いてください」

「分かったわ、ミセル」


 ミセルが魔物に斬りかかる。

 その間にクリスは魔法を展開して撃ち放つという形だ。

 魔法の発動速度も上がっているな。

 それに的確に相手にも狙えている。

 魔法を放っては、次の魔法にシフトする。


「ミセル、下がって!」


 クリスの合図にミセルは迅速は反応を見せる。

 さて、どうする?


「はあっ!」


 魔物の体に輪っかの様な物が現れる。

 前に俺が教えたやつだな。

 その後にクリスは空中に魔法を展開し、天から魔物に降り注ぐ。

 最後にミセルがとどめを刺した。


「やったー!」

「やりましたね、お嬢様」

「ミセルのおかげよ」


 二人でキャッキャはしゃぐ。

 クリスは初めての魔物討伐を、ミセルはクリスの成長をだ。


「どうですか! 褒めて下さい」

「初めてでこれは凄いんじゃないか?」

「えへへ、ありがとうございます」



 しかし、束の間。新たな魔物が俺たちの目の前に現れる。

【六手熊LV.240】

 SSランクだっけ?

 それが十数体か。

 二人には荷が重いな。

 よし、やろう。


「涼太さん、逃げましょう! 無理ですよ」

「まぁ、見てろ。すぐに終わる」


 パンチ、チック、パンチ、発勁!


「一撃ですか……」

「流石は涼太様ですね」

「ほら、パスだ」

「わっ! キャァァァァァァ」


 瀕死になった熊をクリスに放り投げる。

 突然の事に驚くクリス。

 最大火力で放たれた魔法は瀕死の熊にトドメを刺す。


「ちょっと! 何をするんですか!」

「悪い悪い、ちょっとした遊び心だよ」

「涼太様、危険です」

「ごめんって、終わり良ければ全て良しって言うだろ?」



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