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56話 オークション


 オークション当日、外はいつも以上騒がしい。

 ここは貴族街だ。

 ほとんどの貴族がオークションのために準備しているのだ。

 ただいまの時間は午前8時。

 オークション開始は10時からなのでまだ時間はある。

 ハイゼット家の様子でも見に行くか。


「涼太よ、その格好で行くのか?」


 グリムさんは式典に着ていくような服装だ。

 変わって俺の格好は普段着。


「ダメでしょうか?」

「ダメだ、今すぐに着替えろ」

「ういっす」


 正装か、持ってないんだよなぁ。

 創るか。

 髪はどうしよう。

 ワックスで整える程度で問題ないか。


「涼太さん、準備は整いましたか?」


 クリスが入ってきた。

 綺麗な服装だ。

 フリフリのリボンがアクセントになっている。


「クリス、似合ってるよ」

「ありがとうございます。涼太さんもお似合いです」

「準備はできた様だな。では行こうか」


 俺たちは馬車に乗ってオークション会場まで移動した。


 へぇ、入り口には大きなチラシみたいなのがあるな。

 それに役員らしきひとも小さなチラシを配っている。

 どんな商品が出るのかという大まかな把握は出来るのか。

 数百部は作らなきゃいけないはずだ、更には手書きである。

 この短い間で作り終えるなんて凄い。


「涼太さん、このシークレットって、何でしょう」


 クリスも気になっている様だ。

 シークレットね、恐らく俺が出品したアイテムボックスだな。


「さあ、何だろうね。クリスは何か欲しい物はあるのかい?」

「私はお父様について来ただけです」

「クリスよ、欲しい物があるなら言いなさい。ある程度なら融通しよう」

「本当ですか!」

「お前は日々魔法の練習に励んでいる。涼太のおかげでもあるが、素晴らしい成長だ。そのご褒美だよ」


 お、いい事を言うじゃないか。

 きちんとお父さんしてますね。


「あら、良かったわね。クリス」

「はい、お母様」

「涼太さんも何か欲しい物があれば言って下さいね」

「いえ、俺は本当に見に来ただけなので」

「でも欲しい物も出てくるかもしれませんよ?」

「その場合は自腹で買います」


 並んでいた列も進み、俺たちの番の様だ。

 既に会場は多くの人で埋まっている。

 おや、バゼトさんだ。


「これはこれはハイゼット公様、ようこそお来し下さいました。涼太様もお待ちしておりました」

「うむ」

「では、お席にご案内致します。どうぞこちらへ」


 俺たちはバゼトに連れられて、二階の会場一面が見渡せる個室に案内された。


「お飲物は何に致しましょう」

「私と妻はワインを頼む、クリスにはオレンジジュースを。涼太はどうする?」

「俺もオレンジジュースでお願いします」

「承知致しました」


 さて、どうしようかな。

 始まるまではもう少し時間がある。

 なんか映画みたいだな。

 ポップコーンでも用意してくるか。


「グリムさん、申し訳ありませんが少し家に戻ります」

「分かった、すぐに戻ってこいよ」




 俺は会場から直接家に戻った。


「あれ、ご主人様。もうお出かけになられたのではないのですか?」

「うん、少し時間が空いたからね。ポップコーンを作ろうかと思ったんだよ」

「何ですか、それは?」

「見ていれば分かるよ」


 すぐさま厨房に移動して、材料や大鍋を創造する。

 味はどうしよう。

 ありきたりで、キャラメルと塩にするか。

 トウモロコシってどこで売っているんだろう、見た事ないよな。

 俺は大鍋に火をかけて待つ。

 すると鍋の中で弾ける音が聞こえる。


「ご主人様、鍋の中で何が起こっているのですか?」

「ちょっと待ってくれ」


 よし、そろそろ良いかな。

 俺は火を消して、用意したカラメルソースと塩をそれぞれの鍋に入れる。

 キャラメルの方は魔法で冷却して完成だ。


「ほら出来たぞ、食べてみろ」


 皿に移したポップコーンを食べる。

 ああ、懐かしいな。

 一度食べたらやめられない。


「美味しいです!」

「パクパク、美味しい」

「美味いニャ」


 メイドたちも気に入ってくれた様だ。


「それじゃあ、行ってくるよ」


 作ったポップコーンを容器に入れて、再び会場へ戻る。


「おにいちゃんです!」

「うおっ」


 びっくりした、目の前には陛下と王妃とソフィーアちゃんだ。


「その手に持っているのは何ですか?」

「ポップコーンだよ、食べてみな」


 クリスはキャラメルポップコーンを口に入れる。


「美味しいですね」


 パク、パク。


 一つ食べては、また一つ食べる。

 やめられない状態に突入した。



 ブーー


「ふむ、そろそろ始まる様だな。ポップコーンとやらは座って食べようか」

「おにいちゃんのおひざのうえです!」


 ソフィーアちゃんは俺の膝の上に陣取る。

 小さいからちょうど収まったな。


「むぅ」

「何だ、クリス?」

「何でもありません!」


 隣に座りプイッとそっぽを向く。

 何だよ、何かしたか?


『ご来場の皆様、長らくお待たせ致しました。只今よりオークションを開催致します。今回のオークションでは、私どもですら驚く出品が数多ございました。皆様にも満足できる事を確信しております。どうぞ最後までお楽しみ下さい』


 パチパチパチパチパチパチ


 会場全体で盛大な拍手が起こる。


『では早速参ります。皆様! この壺をご覧ください。この壺はあの有名なヒトリーによって作られた壺にございます。まさしく一級品。入札価格は金貨一枚からで御座います』


 始めに出された壺は中央に持ってこられて、その壺にライトが当てられる。


 そして、入札が始まる。


『金貨一』

『金貨三と銀貨五〇』

『金貨四と銀貨二〇』

『金貨ーー』


 なるほど、こんな感じでなのか。

 見たところ、徐々に金額は上がってきている。

 いきなり大きな金額を出すのはダメなのか。


『白金貨一と金貨一』

『……他に入札される方はおられません様なので、ヒトリーの壺は53番様の落札に決定致しました』


 この様な感じで次々とオークションは進んでいく。

 俺の用意した宝石と剣はあっさりと高値で売れた。

 それも合わせて、ミスリル金貨十二枚でだ。

 途中から発狂しそうになったよ。

 宝石はご夫婦たちの激戦になったのだ。

 入札価格がどんどん上がっていく事から、途中からその夫であろう人は涙目になっていく。


「あれはお前さんが用意した物だな」

「はいそうです」


『続きまして、オークションでは初となります出品です。ジュエルシリーズの詰め合わせとなります。私もここまで揃ったジュエルシリーズを見た事が御座いません』


 会場にどよめきが起こる。


「おとうさま! たべたいの」

「ふむ、ジュエルシリーズか。なかなか手強そうだな」

「陛下ならすぐに落札出来るのではないですか?」

「その偏見はやめて貰いたいな。確かに私は国王だが、私が使える金には限りがある。国家予算を使うわけにもいかんだろう」


 なるほど、確かにそうだ。

 国王だからって万能じゃないんだな。


『金貨八』

『白金貨一』

『白金貨五』

『白金貨六と金貨四』


 どんどん入札価格が上がっていく。


「ミスリル金貨一だ!」


 陛下が勝負に出た。

 一億かよ。


『ミスリル金貨ーと白金貨五』


 あっさりと釣り上がる。


「くそっ!」


 あー、ダメだったのか。

 残念だね。


「おとうさま、ダメだったの?」

「ソフィーア、すまない」

「うぅ……」


 泣きそうになるソフィーアちゃん。

 これはまずいな。

 仕方ない、俺のを出そうか。


「ソフィーアちゃん、あーんをしてみてくれるかな?」

「あーん」


 俺はカットしてタッパに詰めていたジュエルシリーズをソフィーアちゃんの口の中に入れる。


「おいしい?」

「おいしいの!」


 ソフィーアちゃんは口をモグモグしながら、笑顔になる。

 小さい子の笑顔っていいよね。

 心が癒される。


「あー、ずるいです! 私もあーんして下さい」

「ほれ」


 ソフィーアちゃんにした様にクリスの口の中に放り込む。


「そうだった。お前がいたな」

「これくらいなら、わざわざ落札しなくても俺に言えば出てきますよ」

「私たちにもくれるか?」

「どうぞ」


 俺は全員にカットした果物を渡す。

 高額で入札される最中にその入札品を食べる俺。

 なんと心地よいかな。


『ミスリル金貨七と白金貨八』

『……他におられませんか。ではジュエルシリーズ詰め合わせセットは542番様に落札されました。盛大な拍手を』


 先ほどの開会式よりも大きな拍手が会場に響きわたる。

 ジュエルシリーズってそんなに価値があるの?

 本当に恐ろしい果物だな。


 その後も休憩を挟み、ついに最後の出品だ。

 やはり、俺のアイテムボックスになったか。


『さあ、ついに最後の出品になります。この品を見たときには私は自分の目を疑いました。本当にこの様な物をオークションに出していいのか。間違いなく、過去のオークションにおいても最高額になると確信しております』


 黒い布で覆われた物がステージの中央に出てくる。


『ご覧下さい! オークション最後を締めくくるに相応しい出品、アイテムボックスに御座います。驚くのはこのアイテムボックスの許容量です。四方十メートルはあるであろう許容量。世界でも指で数えるほどしかない国宝級の品です』


 会場はヒートアップする。

 その中でもある人物たちは目の色を変えた。

 今までの出品には、眉一つ動かさずに眺めていた者たちだ。


「ふむ、私も欲しいがこれは諦めるしかないか」

「なぜですか?」

「大商人たちだよ。動き出すぞ、本当の金の亡者たちが」

「そんなに凄いのですか?」

「無論だ、頂点に君臨する大商人たちは国の国家予算にも勝る財力を持っておる。このオークションは年に一度の大行事に加えて、最も金が動く行事だ。必然と世界有数の大商人たちが集まるのだよ」

「そんなにですか……」

「彼奴らからすると、いくら金を積んでも押さえておきたい品だ。くくっ、見ものだな。荒れるぞ」


 アイテムボックスは商人からすれば喉から手が出るほど欲しい物だと商業ギルドでも聞かされた。

 本当にどうなるんだ?


『では入札を開始致します。最初はミスリル金貨一枚からで御座います』


 おいおい、いきなり一億かよ。

 会場もどよめく。


『ミスリル金貨五』

『ミスリル金貨十五』

『ミスリル金貨三〇』

『ミスリル金貨五〇』

『ミスリル金貨ーー』


 会場は静けさに包まれる。

 そのせいで入札する人物たちの声が会場全体に透き通る。

 俺はというと、絶句していた。

 飯の間に数分で作った自作品が50億を超えました。


「涼太さん、凄いですね」

「一応言っておくぞ、クリス。お前に渡したアイテムボックスは今入札されている以上の性能だ」

「ピャッァ!?」

「変な声を出すな」


 こんな話をしている間にも入札額は増え続ける。


『ミスリル金貨一二五』

『ミスリル金貨一五〇』

『ミスリル金貨二五〇』

『ミスリル金貨三〇〇』

『くっ、ミスリル金貨三二〇』

『ミスリル金貨三五〇』


 確か地球で落札された最も高額な絵画が300億くらいだっけ?

 超えちゃったよ。


『……ミスリル金貨三五〇が出ました。他に入札される方はいらっしゃらない様なので落札は98番の方になりました! 盛大な拍手を!』


 今までで一番大きな歓声が鳴り響く。

 俺の想像の右斜めいく結果だった。

 お金って怖い。


『以上をもちましてオークションは閉幕とさせて頂きます』


「さて、私たちは帰るとするか」

「そうですね、帰りましょうか」


 もう頭がついていけてない。

 350億か……何に使おうかな。

 俺はグリムさんの跡をトボトボついて行く。


「涼太様! お待ちを!」


 バゼトさんが大慌てで走ってきた。


「どうしたんですか?」

「落札された品の受け渡し等は出品者とすると書いてあったでしょう」


 あー、契約書に書いてあったな。

 あまりにも大きな出来事で忘れていたわ。


「分かりました」

「ありがとうございます」


 落札者との取引はオークションで紹介された順番に行われた。

 宝石を落札されたご婦人方はホクホク顔でお金を積み上げる。

 しばらくし時間が空き、最後の一人になった。

 初老に入ったばかりであろう、歴戦の猛者の様な風格を持つ方だった。


「この度はアイテムボックスを落札して頂き誠にありがとございます」

「いや、私の方もまさかこの様な品に出会えるとは思わなんだ。良い物を落札させて貰ったよ。それで、そちらがこのアイテムボックスの出品者か。名はなんと言う?」

「涼太といいます」

「職業は?」

「冒険者を、あと商業ギルドにも加入しております」

「今回、お主が出品したのはこのアイテムボックスだけなのか?」

「いえ、この涼太様はこの他にも宝石類やジュエルシリーズを出品しておられます」


 バゼトさんが俺の代わりに話す。

 いいの?

 個人情報だよ。


「ほう、今回のオークション品の質が格段に上がったのはお主のおかげか。気に入った、私はアイアス商会の会長クロスだ。私はラバン王国に店を構えている。ラバン王国に来た際には、是非私の商会に顔を出してくれ。これは紹介状だ」

「ありがとうございます。その時は是非そうさせて貰います」


 クロスさんは、金額を机に置いていきアイテムボックスを貰って去っていった。


「涼太様、それでは金額の方の精算に移りましょう」

「はい」


 まず、宝石類の売り上げのミスリル金貨一二枚。

 ジュエルシリーズの売り上げ、ミスリル七枚と白金貨八枚。

 そして、アイテムボックスのミスリル金貨三五〇枚だ。

 委員会に一パーセントが納入される。

 俺に入る金額は366億。

 ごめんなさい、ケタが多すぎてもう何がなんなのか分かりません。

 取り敢えず、バゼトさんには半分を口座の方に入れておく様に頼んだ。


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